学習トップ理由で解く 柔道整復師一般臨床医学 ▸ §19 主要な疾患 神経系疾患 / QJ31P042

理由で解く 柔道整復師

QJ31P042 一般臨床医学

出典:第31回柔道整復師国家試験(2023)午後 問42
問題
心房細動と診断されている患者が施術中に突然失語となった。最も考えられるのはどれか。
選択肢
1 アテローム血栓性脳梗塞
2 くも膜下出血
3 ラクナ梗塞
4 脳塞栓
解答
正解4(脳塞栓)
解説

「心房細動がある」「症状が突然完成した」——この2つがそろえば、心原性の脳塞栓です。

心房細動では心房が細かく震えるだけで有効に収縮せず、とくに左心耳に血液がよどんで大きな血栓ができます。これがはがれて流れ、脳の太い動脈(中大脳動脈など)を一気に閉塞するため、症状は発症の瞬間に最も重く完成します(突発完成型)。優位半球(多くは左)の中大脳動脈領域が詰まれば、皮質症状である失語と右片麻痺が出現します。塞栓による梗塞は範囲が大きくなりやすく、血栓が溶けて再開通したときに出血性梗塞を起こしやすいのも特徴です。施術中にこうした症状が現れたら、施術を中止し、最終健常時刻(症状がなかったことを確認できた最後の時刻)を控えたうえで直ちに救急要請します。血栓溶解療法や血栓回収療法は発症からの時間で適応が決まるため、時間の記録がそのまま予後を左右します。

✗ 1. 誤り
アテローム血栓性脳梗塞
頸動脈や頭蓋内主幹動脈の粥状硬化を基盤とし、高血圧・脂質異常症・糖尿病・喫煙が危険因子です。安静時や睡眠中に発症し、症状が階段状・進行性に悪化することが多く、一過性脳虚血発作が先行することもあります。突然に完成する本症例の経過とは異なります。
✗ 2. 誤り
くも膜下出血
多くは脳動脈瘤の破裂によるもので、突然の激しい頭痛(これまでに経験したことのない頭痛)、嘔吐、意識障害、項部硬直が主症状です。失語のような局所症状が単独で前面に出るのは典型的ではありません。
✗ 3. 誤り
ラクナ梗塞
穿通枝の閉塞による直径15mm未満の小梗塞で、高血圧が主因です。片麻痺のみ、感覚障害のみといった限られた症状(ラクナ症候群)を呈し、大脳皮質の機能である失語や失認は原則として生じません。
✓ 4. 正しい
脳塞栓
心房細動により左房内(左心耳)にできた血栓が脳動脈を閉塞する、心原性脳塞栓症です。突発完成型で、皮質症状である失語を伴う本症例に最もよく合致します。
ポイント
  • 心房細動+突然完成する神経症状=心原性脳塞栓症
  • 血栓は左心耳にできる。太い動脈を詰まらせるため梗塞巣が大きい
  • 失語・失行・失認などの皮質症状は、太い動脈の閉塞を示唆する
  • ラクナ梗塞は穿通枝の小梗塞で、皮質症状は原則出ない
  • アテローム血栓性は安静時発症・階段状進行、TIAが先行することがある
  • 症状に気づいたら施術を中止し、最終健常時刻を控えて直ちに救急要請する
比較表
心原性脳塞栓症アテローム血栓性脳梗塞ラクナ梗塞
閉塞する血管脳の主幹動脈頸動脈・頭蓋内主幹動脈穿通枝(細い枝)
塞栓源・原因心房細動などによる心内血栓粥状硬化高血圧による細動脈硬化
発症様式突発完成型(日中活動時に多い)安静時・睡眠中、階段状に進行比較的緩徐、症状は限局
症状重篤、失語など皮質症状を伴うTIAが先行することあり片麻痺のみ・感覚障害のみなど
梗塞巣大きい、出血性梗塞を起こしやすい中等大15mm未満
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