学習トップ理由で解く 柔道整復師病理学概論 ▸ §5 循環障害 / QJ31A120

理由で解く 柔道整復師

QJ31A120 病理学概論

出典:第31回柔道整復師国家試験(2023)午前 問120
問題
肺うっ血の原因となるのはどれか。
選択肢
1 肝硬変
2 左心不全
3 下肢静脈瘤
4 心タンポナーデ
解答
正解2(左心不全)
解説

肺うっ血は、左心系が血液を送り出せずに肺静脈側へ血液が滞ることで起こる。原因は左心不全である。

うっ血は「出口が滞って手前に血液が溜まる」現象と考えると理解しやすい。肺静脈は左心房へ還るため、左心室・左心房のポンプ機能や充満が障害されると肺静脈圧・肺毛細血管圧が上昇し、肺うっ血となる。さらに進めば血漿成分が肺胞腔へ漏れ出て肺水腫となり、労作時呼吸困難、起坐呼吸、発作性夜間呼吸困難、湿性ラ音、泡沫状の血性痰といった症状を示す。慢性化すると肺胞内にヘモジデリンを取り込んだマクロファージ(心不全細胞)が出現する。これに対し右心不全では体循環側にうっ血が生じ、頸静脈怒張、肝腫大、下腿浮腫、腹水が主体となる。「どちら側の心臓が働けないと、どちらの循環に血が溜まるか」で振り分けるのが確実である。

✓ 2. 正しい
左心不全
左心室・左心房の機能低下により肺静脈圧が上昇し、肺うっ血をきたす。進行すると肺水腫となり、起坐呼吸や発作性夜間呼吸困難が現れる。
✗ 1. 誤り
肝硬変
肝内の血流が線維化と再生結節で妨げられ、門脈圧が上昇して門脈領域のうっ血をきたす。食道・胃静脈瘤、脾腫、腹水、腹壁静脈の怒張が問題になり、肺うっ血の原因にはならない。
✗ 3. 誤り
下肢静脈瘤
下肢表在静脈の弁不全による局所の静脈うっ滞。下腿の腫脹、だるさ、色素沈着、うっ滞性皮膚炎・潰瘍をきたすが、影響は下肢にとどまり肺うっ血は起こさない。
✗ 4. 誤り
心タンポナーデ
心嚢内に液体が貯留して心臓の拡張が妨げられる状態。心室に血液が入らないため心拍出量が低下し、体循環側の静脈圧上昇による頸静脈怒張、血圧低下、心音減弱が特徴となる。肺へ送り込まれる血液量自体が減るため、肺うっ血が前面に出る病態ではない。
ポイント
  • 肺うっ血=左心不全。肺静脈圧上昇→肺水腫。起坐呼吸・発作性夜間呼吸困難が典型。
  • 慢性の肺うっ血ではヘモジデリンを貪食したマクロファージ(心不全細胞)が肺胞内に出現する。
  • 右心不全=体循環のうっ血。頸静脈怒張、肝腫大、下腿浮腫、腹水。
  • 門脈圧亢進(肝硬変)=食道・胃静脈瘤、脾腫、腹水。肺とは別系統。
  • 心タンポナーデは拡張障害で心拍出量が低下し、静脈圧上昇・血圧低下・心音減弱が主体。
比較表
病態血液が滞る場所主な所見
左心不全肺静脈・肺毛細血管肺うっ血・肺水腫、起坐呼吸、湿性ラ音、心不全細胞
右心不全体循環の静脈系頸静脈怒張、肝腫大(うっ血肝)、下腿浮腫、腹水
肝硬変(門脈圧亢進)門脈領域食道・胃静脈瘤、脾腫、腹水、腹壁静脈怒張
下肢静脈瘤下肢表在静脈下腿腫脹、色素沈着、うっ滞性潰瘍
心タンポナーデ(拡張障害で充満できない)頸静脈怒張、血圧低下、心音減弱、心拍出量低下
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