学習トップ理由で解く 柔道整復師運動学 ▸ §3 運動の発現と制御 / QJ31A108

理由で解く 柔道整復師

QJ31A108 運動学

出典:第31回柔道整復師国家試験(2023)午前 問108
問題
伸張反射で正しいのはどれか。
選択肢
1 多シナプス反射である。
2 Ia群線維を通じて刺激が求心的に伝達される。
3 γ運動ニューロンを通じて錘外筋に刺激が伝達される。
4 緊張性頸反射が該当する。
解答
正解2(Ia群線維を通じて刺激が求心的に伝達される。)
解説

伸張反射は、筋が引き伸ばされたときにその筋自身が反射的に収縮する反射で、筋紡錘から出るIa群求心性線維が脊髄前角のα運動ニューロンへ直接つながる単シナプス反射です。したがって正しいのは 2 です。

筋が伸ばされると、筋腹の中にある筋紡錘(錘内筋線維)の一次終末(環螺旋終末)が引き伸ばされて興奮します。この情報は太くて伝導速度の速いIa群線維を通り、後根から脊髄に入って、同じ筋を支配するα運動ニューロンとシナプス1個だけを介して結合します。介在ニューロンを挟まないため潜時がきわめて短く、ヒトの反射のなかで最も速い部類に入ります。α運動ニューロンが興奮すると錘外筋線維が収縮し、伸ばされた分の長さを引き戻すため、伸張反射は「筋の長さを一定に保つフィードバック機構」として働き、立位での抗重力筋の姿勢保持に寄与します。臨床的には膝蓋腱反射やアキレス腱反射(腱反射)として観察でき、亢進なら錐体路障害、減弱・消失なら反射弓のどこか(末梢神経・後根・前角細胞)の障害を疑う、という読み方をします。

✓ 2. 正しい
Ia群線維を通じて刺激が求心的に伝達される。
筋紡錘の一次終末から出るのがIa群線維で、これが伸張反射の求心路です。Ia群線維はAα群に属する太い有髄線維で伝導速度が速く(およそ70〜120 m/秒)、脊髄前角のα運動ニューロンに単シナプス性に興奮を伝えます。さらに同じIa線維は側枝を出し、抑制性介在ニューロンを介して拮抗筋のα運動ニューロンを抑制します(Ia相反抑制)。「引き伸ばされた筋は縮み、その拮抗筋は同時にゆるむ」という組み合わせで覚えると、求心路がIa群線維であることも一緒に思い出せます。
✗ 1. 誤り
多シナプス反射である。
伸張反射はIa群線維とα運動ニューロンの間にシナプスが1つしかない単シナプス反射です。介在ニューロンを経由しないぶん潜時が短く、これが腱をたたいた瞬間に筋が収縮する速さの理由になります。多シナプス反射の代表は屈曲反射(逃避反射)や交叉性伸展反射で、こちらは介在ニューロンを複数介するため潜時が長く、刺激が強いほど反応が広がります。「伸張反射=単シナプス、屈曲反射=多シナプス」を対にして押さえてください。
✗ 3. 誤り
γ運動ニューロンを通じて錘外筋に刺激が伝達される。
支配関係が入れ替わっています。錘外筋線維(実際に関節を動かす張力を出す筋線維)を支配するのはα運動ニューロンで、γ運動ニューロンが支配するのは筋紡錘の中の錘内筋線維です。γ運動ニューロンは錘内筋線維の両端を収縮させて筋紡錘に張りを与え、筋が短縮しても紡錘がたるんで感度を失わないように調節します(α-γ連関)。「γ→錘内(センサーの感度調整)」「α→錘外(力を出す)」と結び付けて覚え、選択肢でこの2つが入れ替わっていないかを毎回確認する習慣をつけましょう。
✗ 4. 誤り
緊張性頸反射が該当する。
緊張性頸反射は、頸部を回旋・前後屈したときに四肢の筋緊張が左右非対称(または上下肢で対照的)に変化する姿勢反射です。受容器は頸部深部の固有受容器(頸筋の筋紡錘や上位頸椎の関節受容器)で、中枢は延髄(脳幹下部)にあります。伸張反射と決定的に違うのは反射の組み立て方です。伸張反射は「ある筋が伸ばされる→その同じ筋がシナプス1個で収縮する」という単シナプス性の閉じたループですが、緊張性頸反射は「頸部の受容器が刺激される→複数の介在ニューロンを介して離れた四肢の筋群の緊張が変化する」という多シナプス性の反射です。受容器に頸筋の筋紡錘が含まれていても、出力先が伸ばされた筋そのものではないので伸張反射には該当しません。なお、同じ緊張性姿勢反射でも、受容器が内耳の耳石器前庭神経核を経由するのは緊張性迷路反射のほうです。頸反射(受容器=頸部固有受容器)と迷路反射(受容器=耳石器)は、この入力の違いで切り分けます。伸張反射の具体例として答えるべきなのは膝蓋腱反射・アキレス腱反射などの腱反射です。
ポイント
  • 伸張反射は単シナプス反射。筋紡錘→Ia群線維→(シナプス1個)→同一筋のα運動ニューロン→錘外筋線維の収縮、という最短経路をたどる。「伸ばされた筋と収縮する筋が同じ」が識別の決め手。
  • 受容器は筋紡錘、求心路はIa群線維。一次終末(環螺旋終末)が筋の長さと伸張速度を感知する。Ia群線維は太い有髄線維で伝導が速い。
  • α運動ニューロン=錘外筋線維、γ運動ニューロン=錘内筋線維。γは筋紡錘の感度を保つ調節役(α-γ連関)で、直接に関節運動の力を出すわけではない。
  • Ia線維は側枝で抑制性介在ニューロンを介し拮抗筋を抑制する(Ia相反抑制)。一方、腱の張力を感知するゴルジ腱器官→Ib群線維の経路は抑制性介在ニューロンを挟むIb抑制(自原抑制)で、多シナプス性。
  • 臨床例は膝蓋腱反射・アキレス腱反射。緊張性頸反射・緊張性迷路反射はいずれも延髄(脳幹)レベルの姿勢反射で伸張反射とは別物。両者の区別は受容器で、頸反射=頸部固有受容器/迷路反射=内耳の耳石器(前庭神経核を経由)と整理する。
比較表
反射受容器求心性線維シナプス数中枢代表例・効果
伸張反射筋紡錘(一次終末)Ia群単シナプス脊髄膝蓋腱反射・アキレス腱反射/伸ばされた筋そのものが収縮
Ia相反抑制筋紡錘Ia群(側枝)2シナプス脊髄拮抗筋のα運動ニューロンを抑制
Ib抑制(自原抑制)ゴルジ腱器官Ib群2シナプス以上(多シナプス)脊髄過大張力時に同名筋を抑制し腱を守る
屈曲反射(逃避反射)皮膚侵害受容器などIII・IV群(Aδ・C)多シナプス脊髄刺激側の屈筋群が収縮して逃避
緊張性頸反射頸部の固有受容器(頸筋筋紡錘・上位頸椎関節)頸神経後根経由多シナプス延髄(脳幹)頸の向きに応じて四肢の筋緊張が変化する姿勢反射
緊張性迷路反射内耳の耳石器(前庭器)前庭神経多シナプス延髄(前庭神経核)頭部の傾きに応じて四肢の筋緊張が変化する姿勢反射
α運動ニューロンγ運動ニューロン
支配する筋線維錘外筋線維錘内筋線維(筋紡錘内)
軸索の太さ・伝導速度太い・速い(Aα)細い・やや遅い(Aγ)
役割関節を動かす張力を発生させる筋紡錘に張りを与え感度を保つ(α-γ連関)
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