学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §17 各論(骨折) 下肢 / QJ30P069

理由で解く 柔道整復師

QJ30P069 柔道整復理論

出典:第30回柔道整復師国家試験(2022)午後 問69
問題
高所から転落した患者の単純エックス線像(別冊 No. 1)を別に示す。合併症で考えられないのはどれか。
図
選択肢
1 椎体圧迫骨折
2 複合性局所疼痛症候群タイプI
3 阻血性壊死
4 腓骨筋腱炎
解答
正解3(阻血性壊死)
解説

別冊No.1は足部の側面エックス線像で、距骨の下に大きく写っているのが踵骨である。高所から転落して踵から着地した際の軸圧で生じた踵骨骨折であり、踵骨は海綿骨に富んで血行に恵まれた骨なので、阻血性壊死は合併症として挙がらない。

踵骨骨折は高所から飛び降りて踵で着地したときの軸圧で生じる。側面像では踵部の扁平化と、ベーラー角(踵骨結節上縁・後距骨関節面・前方突起を結んでつくる角、正常はおよそ30〜35度)の減少を確認する。同じ軸圧は脊柱にも抜けるため、胸腰椎移行部の椎体圧迫骨折を同時に起こしていないか、背部の叩打痛や座位保持の可否を必ず確かめる。局所では踵骨外側壁が膨隆して腓骨筋腱を突き上げ、腓骨筋腱炎や腱の亜脱臼を招く。さらに強い腫脹と疼痛が長引くと、複合性局所疼痛症候群タイプI(旧称ズデック骨萎縮)へ移行することがある。一方、阻血性壊死が問題になるのは、関節軟骨に大きく覆われて栄養血管の入口が乏しい骨、すなわち距骨・手の舟状骨・月状骨・大腿骨頭などであり、踵骨はこれに当たらない。

✓ 3. これが答え(合併症として考えにくい)
阻血性壊死
踵骨は表面の広い範囲が骨膜に覆われ、内部の海綿骨にも血管が豊富に入るため、骨折線が入っても骨片が栄養血管から切り離されにくい。阻血性壊死を心配するのは距骨頸部骨折・手の舟状骨骨折・大腿骨頸部内側骨折などで、踵骨骨折で問題になるのは阻血ではなく関節面の不整と外側壁の膨隆である。
✗ 1. 答えではない(起こりうる)
椎体圧迫骨折
踵から落ちた衝撃は下肢を通って脊柱に伝わり、胸腰椎移行部(第11胸椎〜第2腰椎)の椎体圧迫骨折を合併することがある。足だけに目を奪われず背部も診るのが定石で、合併が疑われれば医師へ紹介する。
✗ 2. 答えではない(起こりうる)
複合性局所疼痛症候群タイプI
強い腫脹・疼痛と長期の不動が続いた後に、灼けるような持続痛、皮膚色や発汗の変化、骨萎縮が生じるもの。踵骨骨折は腫脹が強く固定期間も長いため、代表的な合併症として挙がる。予防には、腫脹の管理と、固定範囲外の関節の早期自動運動が有効である。
✗ 4. 答えではない(起こりうる)
腓骨筋腱炎
踵骨骨折では外側壁が外方へ膨隆し、その直上を走る長・短腓骨筋腱を突き上げる。腱と骨の間で摩擦が続けば腓骨筋腱炎となり、外果後下方の疼痛や腱の亜脱臼感として現れる。踵骨骨折後に外側部痛が残る例で必ず考える病態である。
ポイント
  • 高所転落による軸圧=踵骨骨折。側面像でベーラー角の減少を確認する。
  • 同じ軸圧が脊柱へ抜けるため、胸腰椎移行部の椎体圧迫骨折の合併を必ず探す。
  • 外側壁の膨隆→腓骨筋腱炎・腱亜脱臼。腫脹遷延→複合性局所疼痛症候群タイプI。
  • 阻血性壊死を起こすのは距骨・手の舟状骨・月状骨・大腿骨頭など血行に乏しい骨で、踵骨は血行が良く該当しない。
  • 踵骨骨折を疑ったら患肢を安静・挙上し、関節面に及ぶ骨折の評価のため医師へ紹介する。
比較表
阻血性壊死の起こりやすさ理由
距骨(頸部骨折)高い表面の大半が関節軟骨で、栄養血管の入口が限られる
手の舟状骨(近位骨片)高い血流が遠位から近位へ流れ、骨折で近位が孤立する
月状骨高い血管の入り口が少なく、キーンベック病の原因となる
大腿骨頭(頸部内側骨折)高い関節包内骨折で支帯動脈が断たれる
踵骨低い海綿骨が豊富で骨膜・骨内の血行に恵まれる
この問題の解説の修正を依頼する

解説に誤り・改善点があればお知らせください。件名と本文は自動入力済みです(編集できます)。お名前・メールアドレスは任意です。送信内容は玄康株式会社(黒澤一弘)に届きます。