学習トップ理由で解く 柔道整復師一般臨床医学 ▸ §13 主要な疾患 呼吸器疾患 / QJ30P034

理由で解く 柔道整復師

QJ30P034 一般臨床医学

出典:第30回柔道整復師国家試験(2022)午後 問34
問題
肺血栓塞栓症で誤っているのはどれか。
選択肢
1 肺静脈に血栓を認める。
2 悪性腫瘍に合併しやすい。
3 突然の呼吸困難で発症する。
4 下肢深部静脈の血栓が原因となる。
解答
正解1(肺静脈に血栓を認める。)
解説

この設問は「誤っているのはどれか」を選ぶ形式です。血栓が詰まるのは肺動脈であって肺静脈ではないため、選択肢1が誤りで、これが答えになります。

肺血栓塞栓症は、下肢や骨盤の深部静脈にできた血栓がはがれて血流に乗り、肺動脈をふさぐ病態です。血液の道すじを順に追えば答えは自然に出ます。下肢深部静脈→下大静脈→右心房→右心室→肺動脈。ここで血管が細く分かれるので塞栓子は止まります。肺静脈は肺で酸素化された血液を左心房へ返す血管なので、右心から流れてきた塞栓子はそこまで到達しません。肺動脈がふさがれると肺血管抵抗が上がって右心に負担がかかり、血流のない領域ができて換気血流比が乱れるため低酸素血症になります。危険因子はウィルヒョウの三徴(血流の停滞・血管内皮の障害・血液凝固能の亢進)で整理でき、長期臥床、術後、骨折やギプス固定、長時間の座位、悪性腫瘍、妊娠・産褥、経口避妊薬、脱水などが当てはまります。柔道整復の現場は下肢の固定や安静を扱うため、けっして遠い病気ではありません。

✓ 1. これが誤り(=正解)
肺静脈に血栓を認める。
塞栓子が詰まるのは肺動脈です。静脈血の流れは右心を経て肺動脈に入るため、肺静脈へは行き着きません。肺静脈は酸素化された血液を左心房へ返す血管で、ここに血栓が生じるのは左心系の疾患や肺静脈自体の病変など別の状況です。
✗ 2. 正しい記述(答えではない)
悪性腫瘍に合併しやすい。
腫瘍細胞が組織因子などの凝固を促す物質を出すため血液が固まりやすくなり(トルソー症候群として知られます)、さらに臥床、手術、化学療法、中心静脈カテーテル留置が重なって発症しやすくなります。設問の条件に当てはまらないので、答えにはなりません。
✗ 3. 正しい記述(答えではない)
突然の呼吸困難で発症する。
突然の呼吸困難、胸痛、頻呼吸、頻脈が典型で、重症では失神やショックに至ります。長く寝ていた人が起き上がった直後、歩き始め、排便やトイレ移動といった「動き出した瞬間」に起こりやすいのが特徴です。正しい記述なので答えにはなりません。
✗ 4. 正しい記述(答えではない)
下肢深部静脈の血栓が原因となる。
深部静脈血栓症と肺血栓塞栓症は、同じ病態の始まりと終わりで、あわせて静脈血栓塞栓症と呼ばれます。原因としてもっとも多いのが下肢・骨盤の深部静脈血栓です。正しい記述なので答えにはなりません。
ポイント
  • 血流の向きで覚える。下肢深部静脈→下大静脈→右心房→右心室→肺動脈。詰まるのは肺動脈で、肺静脈ではない。
  • 危険因子はウィルヒョウの三徴(血流停滞・血管内皮障害・凝固能亢進)に整理する。長期臥床、術後、骨折・ギプス固定、長時間の座位、悪性腫瘍、妊娠・産褥、脱水。
  • 症状は突然の呼吸困難・胸痛・頻呼吸・頻脈・失神。安静後に動き出した直後の発症が典型で、時間経過が急なのが手がかり。
  • 下肢の腫脹・熱感・発赤・把握痛、ホーマンズ徴候(膝伸展位で足関節を他動的に背屈させると腓腹部が痛む)は深部静脈血栓症を疑う所見。
  • 疑ったときは下肢のマッサージや徒手検査の反復を避け、患者を安静にしてただちに医療機関へ搬送・紹介する。予防としては、固定中も足関節の自動運動やふくらはぎの筋ポンプを働かせる運動をすすめ、早期離床と十分な水分摂取を助言する。
比較表
血管流れる血液と向き肺血栓塞栓症での役割
下肢深部静脈下肢から下大静脈へ戻る静脈血血栓の発生源。はがれた血栓が塞栓子になる
肺動脈右心室から肺へ送られる静脈血塞栓子が詰まる場所。閉塞で右心負荷と低酸素血症が起こる
肺静脈肺から左心房へ戻る動脈血塞栓子は手前の肺動脈で止まるため到達しない
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