学習トップ理由で解く 柔道整復師病理学概論 ▸ §4 退行性病変・代謝障害 / QJ30A120

理由で解く 柔道整復師

QJ30A120 病理学概論

出典:第30回柔道整復師国家試験(2022)午前 問120
問題
間接ビリルビンが増加する疾患はどれか。
選択肢
1 胆管炎
2 新生児黄疸
3 ファーター(Vater)乳頭部癌
4 デュビン・ジョンソン(Dubin-Johnson) 症候群
解答
正解2(新生児黄疸)
解説

間接(非抱合型)ビリルビンは、肝細胞でグルクロン酸抱合を受けるのビリルビンである。したがって「産生が多すぎる(溶血)」か「抱合が追いつかない」ときに増える。新生児黄疸はその両方が同時に起こるため、正解は2。

ビリルビンの流れは、①寿命を終えた赤血球のヘムが脾臓のマクロファージで分解されて間接ビリルビンになる → ②水に溶けないためアルブミンに結合して肝へ運ばれる → ③肝細胞のUDP-グルクロン酸転移酵素(UGT1A1)で抱合され、水溶性の直接ビリルビンになる → ④毛細胆管側の輸送体(MRP2)から胆汁中へ排泄される、という一本道である。この流れの③より手前で詰まれば間接優位、③より後ろ(排泄・胆道)で詰まれば直接優位になる、と分けて覚えるとよい。本問の残り3肢(胆管炎・ファーター乳頭部癌・デュビン・ジョンソン症候群)はいずれも④の排泄側の障害であり、直接ビリルビンが増えるグループにまとめられる。水に溶けるか否かも手がかりで、間接型は水に溶けないため尿には出ず(尿ビリルビン陰性)、直接型は水溶性なので尿に出て尿が濃くなる。

✓ 2. 正しい
新生児黄疸
新生児では、⑴ 胎児型ヘモグロビン(HbF)を含む新生児の赤血球は寿命が短く(約70〜90日、成人の約120日より短い)、加えてヘモグロビン濃度が成人より高いため、ヘムの分解量が多く間接ビリルビンの産生が亢進している、⑵ 肝のUDP-グルクロン酸転移酵素の活性がまだ低く抱合が追いつかない、⑶ 腸内細菌叢が未発達で抱合ビリルビンがウロビリノーゲンへ還元されにくく、腸管粘膜や母乳中のβ-グルクロニダーゼで脱抱合されて非抱合型のまま再吸収される(腸肝循環の亢進)、という3つが重なる。⑴⑵は抱合より手前の要因、⑶は抱合前のプールへ戻す負荷であり、いずれも間接ビリルビンが優位に上昇する。生後2〜3日ごろに出現し、4〜5日で最も強く、1〜2週で自然に消退するものが生理的黄疸である。間接ビリルビンは脂溶性で血液脳関門を通過しうるため、高値が続くと大脳基底核などに沈着して核黄疸(ビリルビン脳症)を起こしうる。数値と経過を追い、必要なら光線療法(青色光でビリルビンを水溶性の異性体に変えて排泄させる)や交換輸血を行う小児科管理につなげる。生後24時間以内に出現する黄疸、遷延する黄疸、直接ビリルビン優位の黄疸は生理的黄疸として片づけず、病的黄疸として原因検索を進める。
✗ 1. 誤り
胆管炎
胆管の炎症と狭窄・閉塞により胆汁がうっ滞する病態である。抱合まではすでに終わっているのに胆汁中へ出られず、直接ビリルビンが血中へ逆流するため直接優位となる。発熱・右上腹部痛・黄疸のシャルコー3徴が典型で、尿ビリルビンは陽性になる。
✗ 3. 誤り
ファーター(Vater)乳頭部癌
ファーター乳頭は総胆管と主膵管が十二指腸へ開口する出口であり、ここが腫瘍で塞がれると胆汁の流出路が断たれる。典型的な閉塞性(肝後性)黄疸で直接ビリルビンが増加し、便に胆汁色素が届かないため灰白色便、尿ビリルビン陽性による濃染尿、胆汁酸の皮膚沈着による掻痒感を伴う。無痛性黄疸と腫大胆嚢の触知(クールボアジェ徴候)も押さえておきたい。
✗ 4. 誤り
デュビン・ジョンソン(Dubin-Johnson) 症候群
先天性(体質性)黄疸の一つだが、障害されているのは抱合ではなくその後の排泄である。肝細胞の毛細胆管側にある輸送体MRP2の先天的欠損により、抱合済みの直接ビリルビンを胆汁へ汲み出せず血中に増える。肝が黒褐色を呈する(黒色肝)のが特徴で、経過は良性である。同じ体質性黄疸でも、抱合酵素側の異常であるジルベール症候群やクリグラー・ナジャー症候群は間接優位となる点と対で整理しておくと取り違えない。
ポイント
  • 間接(非抱合型)=抱合される前。増えるのは「産生過剰(溶血)」と「取り込み・抱合の障害」のとき。
  • 直接(抱合型)=抱合された後。増えるのは「毛細胆管からの排泄障害」と「胆道の閉塞」のとき。
  • 新生児黄疸が間接優位になる3要因=赤血球崩壊の亢進・UDP-グルクロン酸転移酵素の未熟・腸肝循環の亢進
  • 間接型は水に溶けずアルブミンに結合しているため尿には出ない(尿ビリルビン陰性)。直接型は水溶性で尿に出る。
  • 体質性黄疸の対比:ジルベール/クリグラー・ナジャー=間接優位デュビン・ジョンソン/ローター=直接優位
  • 間接ビリルビンは脂溶性で血液脳関門を通過しうるため、新生児では核黄疸に注意し、値と経過を追って光線療法などの小児科管理につなげる。
比較表
障害される段階増える型代表疾患尿ビリルビン便の色
産生過剰(溶血)間接(非抱合型)溶血性貧血、新生児黄疸(赤血球崩壊の亢進)陰性正常〜濃い
肝細胞への取り込み・抱合間接(非抱合型)ジルベール症候群、クリグラー・ナジャー症候群、新生児黄疸(抱合酵素の未熟)陰性正常
毛細胆管への排泄直接(抱合型)デュビン・ジョンソン症候群、ローター症候群陽性正常
胆道の閉塞・うっ滞直接(抱合型)胆管炎、ファーター乳頭部癌、総胆管結石、膵頭部癌陽性灰白色
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