学習トップ理由で解く 柔道整復師運動学 ▸ §4 頭・頸部、四肢と体幹の運動(筋の作用および神経支配を含む) / QJ30A107

理由で解く 柔道整復師

QJ30A107 運動学

出典:第30回柔道整復師国家試験(2022)午前 問107
問題
肩甲骨の上方回旋に関わるのはどれか。
選択肢
1 小胸筋
2 前鋸筋
3 肩甲挙筋
4 菱形筋
解答
正解2(前鋸筋)
解説

肩甲骨の上方回旋は、僧帽筋上部・僧帽筋下部・前鋸筋下部が引き合うフォースカップルで起こります。選択肢の中で上方回旋に働くのは前鋸筋です。

上方回旋とは、関節窩が上を向くように肩甲骨が回る動きで、肩を90度以上挙げるときに欠かせません。上腕骨の動きだけでは挙上は完結せず、肩甲上腕リズム(およそ2:1)に従って肩甲骨が上方回旋して初めて180度まで届きます。前鋸筋は肋骨の外側面から起こって肩甲骨内側縁の前面(とくに下角)に停止するため、下角を前外方へ引き出す形で上方回旋を作ります。同時に僧帽筋上部が鎖骨外側部・肩峰を上内方へ、僧帽筋下部が肩甲棘内側端を下内方へ引き、3つの力の組合せで純粋な回転が成立します。ここで僧帽筋の停止は部位ごとに異なり、上部(下行部)は鎖骨外側1/3、中部(横行部)は肩峰と肩甲棘、下部(上行部)は肩甲棘内側端につくという区別が重要です。前鋸筋は長胸神経支配で、麻痺すると肩甲骨内側縁が浮き上がる翼状肩甲を呈し、上肢の挙上が制限されます。施術では肩挙上制限をみたとき、肩関節だけでなく肩甲骨の上方回旋が出ているかを必ず確認し、前鋸筋・僧帽筋下部の働きを促す運動を組み込むのが有効です。

✗ 1. 誤り
小胸筋
第3〜5肋骨から烏口突起につき、肩甲骨を前下方へ引きます。作用は下方回旋・前傾・下制で、上方回旋とはむしろ逆向きです。
✓ 2. 正しい
前鋸筋
肩甲骨下角を前外方へ引いて上方回旋を作る主力です。僧帽筋上部・下部とフォースカップルを組み、肩甲骨を胸郭に押しつけながら回旋させます。
✗ 3. 誤り
肩甲挙筋
上位頸椎の横突起から肩甲骨上角に停止し、挙上と下方回旋に働きます。関節窩を下へ向ける方向なので上方回旋の反対です。
✗ 4. 誤り
菱形筋
頸椎・胸椎の棘突起から肩甲骨内側縁につき、内転(後退)・挙上・下方回旋に働きます。肩甲挙筋とともに下方回旋側の筋です。
ポイント
  • 上方回旋の主働=前鋸筋(下部線維)+僧帽筋上部+僧帽筋下部のフォースカップル
  • 僧帽筋の停止は部位で異なる:上部=鎖骨外側1/3/中部=肩峰・肩甲棘/下部=肩甲棘内側端
  • 下方回旋=菱形筋・肩甲挙筋・小胸筋。上方回旋筋と対になる
  • 肩関節の挙上は肩甲上腕リズム約2:1(上腕骨2に対し肩甲骨1)で成立する
  • 前鋸筋は長胸神経支配。麻痺すると翼状肩甲となり挙上が制限される
  • 挙上=僧帽筋上部・肩甲挙筋/下制=僧帽筋下部・小胸筋、と上下の作用も整理しておく
比較表
停止肩甲骨への主な作用支配神経
前鋸筋肩甲骨内側縁の前面(とくに下角)外転(前方突出)・上方回旋・胸郭への固定長胸神経
僧帽筋上部(下行部)鎖骨外側1/3挙上・上方回旋副神経・頸神経叢
僧帽筋中部(横行部)肩峰・肩甲棘内転(後退)副神経・頸神経叢
僧帽筋下部(上行部)肩甲棘内側端下制・上方回旋副神経・頸神経叢
肩甲挙筋肩甲骨上角挙上・下方回旋肩甲背神経
菱形筋肩甲骨内側縁内転・挙上・下方回旋肩甲背神経
小胸筋烏口突起下制・前傾・下方回旋内側・外側胸筋神経
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