学習トップ理由で解く 柔道整復師生理学 ▸ §12 神経 / QJ30A085

理由で解く 柔道整復師

QJ30A085 生理学

出典:第30回柔道整復師国家試験(2022)午前 問85
問題
除脳固縮でみられるのはどれか。
選択肢
1 屈曲反射の亢進
2 伸張反射の亢進
3 α運動ニューロンの抑制
4 γ運動ニューロンの抑制
解答
正解2(伸張反射の亢進)
解説

除脳固縮は抗重力筋(伸筋)が持続的に緊張した状態で、その本態は伸張反射の亢進です。したがって正しいのは 2 です。

中脳の上丘と下丘の間で脳幹を横断すると、大脳皮質や大脳基底核からの入力を受けて働く網様体の抑制系が絶たれ、橋網様体脊髄路と前庭脊髄路といった興奮系が優位になります。その結果、筋紡錘の感度を決めるγ運動ニューロンの活動が高まり、Ia 群求心線維の発射が増えてα運動ニューロンが持続的に興奮します。つまり反射弓そのものが過敏になっているため、後根を切って Ia 入力を断つと固縮が消えるのが特徴で、これを「γ固縮」と呼びます。なお、臨床でみられる除脳硬直(四肢が伸展・内旋する姿勢)は中脳〜橋レベルの病変を示唆する所見であり、シェリントンの除脳動物のように上丘と下丘の間で切断する実験的除脳とは別の話として区別しておきましょう。

✓ 2. 正しい
伸張反射の亢進
筋紡錘 → Ia 線維 → α運動ニューロンという伸張反射の回路が過剰に働き、伸筋の緊張が持続します。他動的に関節を動かすと抵抗が強く、腱反射も亢進します。
✗ 1. 誤り
屈曲反射の亢進
除脳固縮で優位になるのは抗重力筋、すなわち四肢では伸筋の緊張です。屈曲反射(侵害刺激に対する逃避反射)が主体の状態ではありません。
✗ 3. 誤り
α運動ニューロンの抑制
抑制ではなく脱抑制です。上位からの抑制がなくなることでα運動ニューロンへの興奮性入力が増え、伸筋が持続的に収縮します。
✗ 4. 誤り
γ運動ニューロンの抑制
除脳固縮では運動ニューロン系はいずれも「抑制」ではなく活動が高まる側にあります。とくにγ運動ニューロンの活動亢進によって筋紡錘の感度が上がることが固縮の中心的な機序とされるため、抑制とする記述は成り立ちません。
ポイント
  • 除脳固縮=中脳の上丘と下丘の間での切断で生じる抗重力筋(伸筋)の持続的緊張。
  • 機序は「網様体の抑制系が絶たれ、興奮系と前庭脊髄路が優位になる」。
  • γ運動ニューロン活動亢進 → 筋紡錘の感度上昇 → Ia 発射増加 → 伸張反射亢進。
  • 後根切断で消失するのが「γ固縮」の証拠。
  • 臨床の除脳硬直は四肢伸展位、除皮質硬直は上肢屈曲・下肢伸展位で、障害の高さが異なる。臨床でいう除脳硬直は中脳〜橋レベルの病変を示唆する所見で、実験的除脳の切断部位(上丘・下丘間)とは別の話。
比較表
実験的除脳固縮(シェリントンの除脳動物)臨床の除脳硬直臨床の除皮質硬直
切断・病変の高さ中脳の上丘と下丘の間で横断中脳〜橋レベルの病変中脳より上(大脳半球〜間脳)の病変
四肢の肢位四肢とも伸展(抗重力筋が優位)上肢は伸展・内旋、下肢は伸展・尖足上肢は屈曲・内転、下肢は伸展
筋緊張伸筋で著明に亢進亢進亢進
後根切断での消失消失する(γ固縮であることの証拠)ヒトでは行わない(実験的検証の対象外)ヒトでは行わない(実験的検証の対象外)
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