学習トップ理由で解く 柔道整復師病理学概論 ▸ §10 先天性異常 / QJ29A116

理由で解く 柔道整復師

QJ29A116 病理学概論

出典:第29回柔道整復師国家試験(2021)午前 問116
問題
先天性疾患はどれか。2つ選べ。
選択肢
1 関節リウマチ
2 特発性心筋症
3 ダウン(Down)症候群
4 アザラシ肢症
解答
正解3(ダウン(Down)症候群)、4(アザラシ肢症)
解説

先天性疾患とは「出生する前(受精から出生まで)に異常が成立している」もの。ダウン症候群は染色体異常(内因)、アザラシ肢症は胎内環境の影響(外因)で、成因は違うがどちらも生まれる前に完成している。

先天異常は大きく2系統で整理する。ひとつは受精の時点で決まる内因性——染色体の数や構造の異常、単一遺伝子の変異。もうひとつは胎児が子宮内で受ける外因性——催奇形性のある薬物、感染(風疹などのTORCH)、放射線、母体の代謝異常など。特に器官形成期、すなわち受精後(胎生)2〜8週——日本の産科で用いる妊娠週数(最終月経初日から数える)でいえば約4〜10週——は形態異常が起こりやすい臨界期で、この時期の曝露が四肢や心臓の奇形につながる。なおそれ以前の受精後0〜2週(妊娠約2〜4週)は「全か無かの法則(all-or-none)」が働く時期とされ、傷害が大きければ着床せず流産に至り、乗り越えた場合は形態異常を残さないと説明される。ここで混同しやすいのが「遺伝的素因のある後天性疾患」で、関節リウマチのようにHLAなどの体質が関与しても、病変そのものは生後にできるので先天性疾患には入らない。「素因がある」ことと「生まれる前に異常が完成している」ことを分けて考えるのがこの問題の勘所。

✓ 3. 正しい
ダウン(Down)症候群
21番染色体が3本になる21トリソミーで、受精卵の段階で染色体構成が決まっている代表的な常染色体異常症。特徴的顔貌、筋緊張低下、知的障害、先天性心疾患(心内膜床欠損など)を伴い、母体年齢の上昇とともに頻度が高くなる。
✓ 4. 正しい
アザラシ肢症
上肢・下肢の長管骨が欠損または著しく短縮し、手足が体幹に近い位置につくようにみえる四肢形成不全(フォコメリア)。妊娠初期にサリドマイドなどの催奇形因子が働いて器官形成が妨げられた結果生じる、胎内で完成する外因性の先天異常。
✗ 1. 誤り
関節リウマチ
滑膜の慢性増殖性炎症を主体とする自己免疫疾患で、30〜50歳代の女性に好発する後天性疾患。発症にHLAなどの遺伝的素因は関与するが、出生前に病変が成立しているわけではない。
✗ 2. 誤り
特発性心筋症
弁膜症・虚血・高血圧など明らかな原因がないのに心筋自体が障害される疾患群(拡張型・肥大型など)。一部に遺伝子変異が見つかるものの発症は生後であり、心室中隔欠損のような構造異常=先天性心疾患とは別に扱う。
ポイント
  • 先天性疾患=出生前に成立した異常。内因(染色体・遺伝子)と外因(胎内環境)に分けて整理する。
  • 内因の代表:ダウン症候群(21トリソミー)、ターナー症候群(45,X)、クラインフェルター症候群(47,XXY)。
  • 外因の代表:サリドマイドによるアザラシ肢症、風疹による先天性風疹症候群、アルコールによる胎児性アルコール症候群。
  • 器官形成期=受精後(胎生)2〜8週、妊娠週数でいえば約4〜10週。ここが催奇形性に最も弱い臨界期で、この時期の曝露が形態異常を生む。
  • 受精後0〜2週(妊娠約2〜4週)は「全か無かの法則」が働き、形態異常を残しにくい時期とされる。週数を語るときは受精後か妊娠週数かを必ず区別する。
  • 関節リウマチや糖尿病のように「遺伝素因のある後天性疾患」を先天性疾患と取り違えないこと。
比較表
分類成立のしかた代表疾患
内因性(染色体異常)受精の時点で染色体の数・構造が異常ダウン症候群、ターナー症候群、クラインフェルター症候群
内因性(単一遺伝子病)1個の遺伝子変異が親から伝わる/新生する血友病、マルファン症候群、フェニルケトン尿症
外因性(胎内環境)器官形成期(受精後2〜8週=妊娠約4〜10週)に薬物・感染・放射線が作用アザラシ肢症(サリドマイド)、先天性風疹症候群
後天性(参考)出生後に発症。遺伝素因+環境関節リウマチ、特発性心筋症、2型糖尿病
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