学習トップ理由で解く 柔道整復師生理学 ▸ §14 感覚の生理 / QJ29A103

理由で解く 柔道整復師

QJ29A103 生理学

出典:第29回柔道整復師国家試験(2021)午前 問103
問題
感覚神経線維を脳内へ直接伸ばす感覚細胞はどれか。
選択肢
1 味蕾の味細胞
2 網膜の視細胞
3 嗅上皮の嗅細胞
4 半規管の有毛細胞
解答
正解3(嗅上皮の嗅細胞)
解説

感覚細胞のうち、自分自身が神経細胞であって軸索をそのまま中枢へ伸ばす「一次感覚細胞」は嗅上皮の嗅細胞である。したがって正答は3である。

感覚受容器は、受容細胞自身が軸索を中枢へ伸ばして情報を直接届けるものを一次感覚細胞、受容した情報をシナプスを介して別の神経細胞へ渡すものを二次感覚細胞と分類する。本問が採る軸は「受容細胞が自ら中枢へ線維を伸ばすかどうか」という機能面である(教科書によっては「受容細胞が神経細胞か上皮細胞か」を基準にする流儀もあり、後述のとおり視細胞の扱いはこの基準の違いで割れる)。嗅細胞は嗅上皮の中にある双極型の神経細胞で、鼻腔側に伸ばした樹状突起の先端の嗅小毛(嗅繊毛)でにおい分子を受容し、反対端から出た無髄の軸索が束(嗅糸)となって篩骨篩板の小孔を通り抜け、嗅球に達してシナプスを作る。つまり受容から中枢への入力までを1個の細胞が担う。臨床的には、この構造ゆえに前頭部外傷で篩板が骨折すると嗅糸が断裂して嗅覚脱失を生じる。これに対し味蕾の味細胞と内耳の有毛細胞は、非神経性の上皮に由来し軸索をもたない典型的な二次感覚細胞で、シナプスを介して感覚神経線維へ情報を渡す。視細胞はやや事情が異なり、発生学的には間脳から膨出した眼杯(神経外胚葉)に由来する神経細胞で、網膜そのものが中枢神経系の一部にあたる。視細胞も球状小体・錐体小足と呼ばれる短い軸索終末をもち外網状層で双極細胞とシナプスを作るが、その軸索は網膜内にとどまり中枢へは伸びない。この扱いは文献によって割れており、視細胞が神経細胞であること自体を重視して一次感覚細胞に含めるものと、軸索が中枢に達しないことを重視して二次感覚細胞とするものがある。本問が問うているのは「自らの神経線維を脳内へ直接伸ばすか」という一点なので、分類名の暗記ではなくこの機能で判断すれば、どちらの立場でも視細胞は正答にならないと確実に言える。各感覚について「受容細胞が自分で中枢へ線維を伸ばすか」「由来は非神経性上皮か神経外胚葉か」「担当する脳神経は何番か」を並べて確認しておくとよい。

✓ 3. 正しい
嗅上皮の嗅細胞
嗅細胞は感覚細胞であると同時に神経細胞(双極神経細胞)そのものであり、自らの軸索を嗅糸として篩骨篩板を貫かせ、嗅球の僧帽細胞とシナプスを作る。受容器でありながら中枢へ線維を伸ばす一次感覚細胞の代表例で、「感覚神経線維を脳内へ直接伸ばす感覚細胞」という条件に合致する。途中に別のニューロンを介さない点が他の三つと決定的に異なる。なお嗅細胞は基底細胞から新生・置換される、再生能をもつ数少ない神経細胞でもある。
✗ 1. 誤り
味蕾の味細胞
味細胞は味蕾を構成する非神経性の上皮由来の二次感覚細胞で、軸索をもたない。味物質を受容すると細胞基底部で味覚神経線維とシナプスを作って情報を渡し、舌前2/3は顔面神経(鼓索神経)、後1/3は舌咽神経、咽頭・喉頭は迷走神経が延髄の孤束核へ運ぶ。受容と伝導が別の細胞に分かれている点が嗅細胞との決定的な違いである。
✗ 2. 誤り
網膜の視細胞
視細胞(杆体・錐体)は眼杯(神経外胚葉)に由来する神経細胞ではあるが、自らの軸索を脳へ伸ばすわけではない。軸索終末(球状小体・錐体小足)は網膜の外網状層にとどまって双極細胞とシナプスを作り、情報は視細胞→双極細胞→神経節細胞と網膜内で中継される。この神経節細胞の軸索が集まって視神経となり外側膝状体へ向かう。脳へ線維を送っているのは神経節細胞であって視細胞自身ではないため、本問の条件には合わない。
✗ 4. 誤り
半規管の有毛細胞
半規管膨大部稜の有毛細胞は、非神経性の上皮に由来し軸索をもたない二次感覚細胞である。頭部の回転で内リンパが動き感覚毛が偏位すると受容器電位を生じ、シナプスを介して前庭神経節にある双極細胞の末梢突起へ伝える。脳幹の前庭神経核へ向かう軸索はこの神経節細胞のものであり、有毛細胞自身のものではない。内耳の蝸牛(コルチ器)にある聴覚の有毛細胞も同じ仕組みである。
ポイント
  • 線引きには①受容細胞自身の軸索が中枢へ達するか、②受容細胞が神経細胞か上皮細胞か、の二つの基準があり、文献で採用が分かれる。本問が問うのは①で、自らの軸索を脳へ伸ばすのが一次感覚細胞、別の神経細胞にシナプスで渡すのが二次感覚細胞。
  • 特殊感覚で一次感覚細胞なのは嗅細胞だけ。その軸索は嗅糸(嗅神経・第I脳神経)となり、篩骨篩板を貫いて嗅球へ直接入る。篩板骨折で嗅覚脱失が起こりうる。
  • 二次感覚細胞の典型は味細胞と内耳の有毛細胞。いずれも非神経性の上皮由来で軸索をもたず、シナプスで感覚神経線維へ渡す。
  • 視細胞は別枠で押さえる。神経外胚葉(眼杯)由来の神経細胞で短い軸索終末(球状小体・錐体小足)をもつが、その軸索は網膜内で双極細胞に終わり中枢へ達しないため、脳へ線維を伸ばす細胞としては数えない。一次感覚細胞に含める文献と二次感覚細胞とする文献があり、分類名は一定しない。
  • 判別の軸は由来や分類名ではなく「自らの軸索が脳まで届くか」。この基準で見れば文献差に左右されずに解ける。
  • 視覚では視細胞→双極細胞→神経節細胞と中継され、神経節細胞の軸索が視神経をつくる。網膜自体が中枢神経系の一部。
  • 嗅覚は視床を経由せず大脳皮質の嗅覚野に達する唯一の特殊感覚。嗅細胞は再生能をもつ珍しいニューロンでもある。
比較表
感覚細胞分類と由来次に情報を渡す相手中枢へ運ぶ神経
嗅上皮の嗅細胞一次感覚細胞(神経外胚葉由来の双極神経細胞)(自らの軸索が嗅球へ直接到達)嗅神経・嗅糸(I)
味蕾の味細胞二次感覚細胞(非神経性の上皮由来・軸索なし)味覚神経線維へシナプス伝達顔面(VII)・舌咽(IX)・迷走(X)
網膜の視細胞眼杯(神経外胚葉)由来の神経細胞。球状小体・錐体小足という短い軸索終末をもつが、軸索は網膜内で終わり中枢へは伸ばさない(一次/二次の分類は文献差あり)外網状層で双極細胞へ→神経節細胞視神経(II)=神経節細胞の軸索
半規管の有毛細胞二次感覚細胞(非神経性の上皮由来・軸索なし)前庭神経節の双極細胞へシナプス伝達前庭神経・内耳神経(VIII)
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