学習トップ理由で解く 柔道整復師生理学 ▸ §13 筋肉の機能 / QJ29A102

理由で解く 柔道整復師

QJ29A102 生理学

出典:第29回柔道整復師国家試験(2021)午前 問102
問題
平滑筋細胞に存在しないのはどれか。
選択肢
1 アクチン
2 カルモジュリン
3 トロポニン
4 ミオシン
解答
正解3(トロポニン)
解説

平滑筋はトロポニンをもたず、Ca2+はカルモジュリンを介してミオシン側で収縮を調節します。存在しないのは3のトロポニンです。

骨格筋と心筋では、細いフィラメント(アクチン)の上にトロポニン・トロポミオシン複合体が乗っています。Ca2+がトロポニンCに結合するとトロポミオシンがずれ、隠れていたアクチンのミオシン結合部位が露出して収縮が始まります(アクチン側=細いフィラメントによる調節)。一方、平滑筋にはトロポニンがないため、まったく別の仕組みでスイッチを入れます。細胞内Ca2+濃度が上がるとCa2+はカルモジュリンに結合し、Ca2+-カルモジュリン複合体がミオシン軽鎖キナーゼ(MLCK)を活性化してミオシン軽鎖をリン酸化します。ミオシン軽鎖がリン酸化されて初めてミオシンがアクチンと結合してクロスブリッジのサイクルを回せるようになり、収縮が起こります(ミオシン側=太いフィラメントによる調節)。収縮タンパクの本体であるアクチンとミオシン、そしてCa2+の受け手であるカルモジュリンは、いずれも平滑筋に存在します。

✓ 3. 存在しない(これが答え)
トロポニン
トロポニンは骨格筋・心筋の細いフィラメントに固有のタンパクで、平滑筋にはありません。だからこそ平滑筋ではCa2+の受け手をカルモジュリンが務め、調節の場がアクチン側からミオシン側へ移ります。「トロポニン=横紋筋の目印(平滑筋にはない)」と覚えてください。なお心筋トロポニンが心筋傷害の血液マーカーになるのは、トロポニンが横紋筋一般にあるからではありません。トロポニンT・Iにはアミノ酸配列の異なる心筋型(心筋トロポニンT・I)があり、これを特異的に測定するので心筋の傷害を選び出せるのです。
✗ 1. 存在する(答えではない)
アクチン
平滑筋も細いフィラメントとしてアクチンをもち、ミオシンとの滑り込みで収縮します。ただし規則正しい筋節(サルコメア)を作らず、フィラメントが斜めに走って高密度体(dense body)につながるため、顕微鏡で横紋が見えません。横紋がないことと収縮タンパクがないことは別問題です。
✗ 2. 存在する(答えではない)
カルモジュリン
平滑筋におけるCa2+の受容タンパクそのもので、トロポニンの役割を肩代わりします。Ca2+-カルモジュリン複合体がMLCKを活性化する流れが平滑筋収縮の中心なので、むしろ平滑筋を語るうえで欠かせない分子です。なおカルモジュリンは平滑筋に限らずほぼすべての細胞に広く存在します。
✗ 4. 存在する(答えではない)
ミオシン
太いフィラメントを構成し、ATPを分解して首振り運動を行う本体です。平滑筋ではこのミオシンの軽鎖がリン酸化されるかどうかが収縮のスイッチになります。収縮が続く間に、すでにアクチンと結合しているクロスブリッジの軽鎖がミオシンホスファターゼによって脱リン酸化されると、そのブリッジは外れにくくなり、少ないエネルギーで張力を保てます(ラッチ状態)。血管や消化管が長時間の緊張を維持できるのはこの仕組みによります。
ポイント
  • 平滑筋にトロポニンはない。Ca2+の受け手はカルモジュリン。
  • 平滑筋:Ca2+ → カルモジュリン → MLCK → ミオシン軽鎖のリン酸化 → 収縮(ミオシン側=太いフィラメント調節)。
  • 骨格筋・心筋:Ca2+ → トロポニンC → トロポミオシンが移動 → アクチンの結合部位が露出(アクチン側=細いフィラメント調節)。
  • 平滑筋にもアクチン・ミオシン・トロポミオシンはある。横紋が見えないのは配列が不規則なため。
  • 「トロポニン=横紋筋の目印(平滑筋にはない)」。ただしトロポニンは骨格筋にもあるので、心筋トロポニンが心筋傷害の血液マーカーになるのは「横紋筋固有だから」ではなく、心筋型アイソフォーム(心筋トロポニンT・I)を特異的に測定するため。
  • 平滑筋は収縮が遅く長く続き、エネルギー消費が少ない。すでに結合したクロスブリッジの脱リン酸化によるラッチ状態が、血管・消化管・気道・膀胱など持続的な緊張を支える。
比較表
平滑筋骨格筋・心筋(横紋筋)
トロポニンなしあり
Ca2+が結合する相手カルモジュリントロポニンC
調節の場ミオシン側(太いフィラメント)アクチン側(細いフィラメント)
収縮のスイッチMLCKによるミオシン軽鎖のリン酸化トロポミオシンの移動で結合部位が露出
Ca2+の供給源細胞外からの流入+筋小胞体筋小胞体が主(心筋は細胞外Ca2+が引き金)
横紋・筋節なしあり
収縮の速さ・持続遅い・長く持続(低エネルギー:ラッチ状態)速い・短い
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