学習トップ理由で解く 柔道整復師病理学概論 ▸ §5 循環障害 / QJ28A123

理由で解く 柔道整復師

QJ28A123 病理学概論

出典:第28回柔道整復師国家試験(2020)午前 問123
問題
出血性梗塞を起こしやすい臓器はどれか。
選択肢
1 心臓
2 肺臓
3 脾臓
4 腎臓
解答
正解2(肺臓)
解説

出血性梗塞(赤色梗塞)は、二重の血液供給や豊富な側副路をもち、組織が疎(そ)な臓器で起こる。選択肢のうちこれに当てはまるのは肺臓で、正解は2。

梗塞とは、血流が絶たれた領域が壊死に陥る変化をいう。同じ梗塞でも「閉塞した先へ、別のルートから血液が入り込めるか」で見た目が二つに分かれる。肺は肺動脈(ガス交換のための機能血管)と気管支動脈(肺自身を養う栄養血管)の二系統から血液を受け、しかも肺胞壁は薄くスポンジ状で組織が疎である。そのため肺動脈枝が血栓塞栓で閉じても、気管支動脈側から壊死組織へ血液がしみ出し、病巣が血液で満たされて暗赤色を呈する。これに対し脾臓・腎臓の動脈は互いに吻合をもたない終動脈(解剖学的終動脈)であり、心臓の冠状動脈も吻合枝はあるが細く、急性閉塞を代償できない機能的終動脈である。いずれも実質が充実性(密)であるため、閉塞枝の支配域には血液が入り込めず、蒼白な貧血性(白色)梗塞となる。肺以外で出血性梗塞の代表となるのは腸管(腸捻転・絞扼性イレウス・腸間膜静脈血栓)で、静脈側が先に閉塞して動脈血が流入し続ける状況でも同じことが起こる。

✓ 2. 正しい
肺臓
肺は肺動脈と気管支動脈による二重支配を受け、肺胞壁が疎で伸展性に富む。下肢深部静脈などから飛んだ血栓が肺動脈枝を閉塞しても、気管支動脈から壊死部へ血液が流れ込むため、暗赤色の出血性梗塞(肺梗塞)となる。肺動脈は肺門から胸膜へ向かって放射状に分枝するので、その支配域はそのまま円錐形となり、肉眼的には胸膜に接する底辺をもつ楔(くさび)状の病巣として現れる。この二重支配のおかげで、健常な肺では塞栓が起きても梗塞に至らないことも多く、心不全などでうっ血がある場合に梗塞が完成しやすい点も押さえておきたい。
✗ 1. 誤り
心臓
冠状動脈は吻合枝をまったく欠くわけではないが、その吻合は細く急性閉塞を代償できないため「機能的終動脈」と呼ばれる。心筋も緻密な組織である。枝が閉塞すればその支配域へ血液が入り込めず、境界の明瞭な蒼白~黄白色の貧血性(白色)梗塞となる。ただし冠状動脈は心表面を走ってから心筋内へ潜り込むため、壊死巣は脾・腎のような楔状ではなく、閉塞した枝の支配域に一致した領域性(貫壁性または心内膜下)の広がりを示す。形ではなく「側副路が働かない+密=白」で心臓を覚える。
✗ 3. 誤り
脾臓
脾動脈の分枝は互いに吻合をもたない解剖学的終動脈で側副路がなく、実質は被膜に包まれて密である。血管が脾門から被膜へ放射状に走るため、心内血栓などによる塞栓では被膜に底辺を向けた楔状の白色梗塞ができる。肺と同じ「塞栓でできる楔状病変」だが、色は正反対になる点が対比のポイント。
✗ 4. 誤り
腎臓
腎動脈から分かれる葉間動脈・弓状動脈・小葉間動脈はいずれも互いにつながらない解剖学的終動脈である。しかも腎門から皮質へ向かって放射状に走るため、閉塞すると被膜側に底辺をもつ楔状の白色梗塞となり、治癒後は瘢痕による陥凹を残す。腎も「白」のグループである。
ポイント
  • 出血性梗塞(赤色梗塞)の条件:①二重の血液供給や豊富な側副路をもつ、②組織が疎で血液が流れ込める、③静脈側の閉塞(捻転・絞扼)で動脈血だけが入り続ける ── のいずれか。
  • 代表は肺と腸管。肺は肺動脈+気管支動脈の二重支配、腸管は腸間膜の豊富な吻合と捻転・絞扼。ほかに精巣・卵巣の捻転も出血性となる。
  • 貧血性梗塞(白色梗塞)=心臓・脾臓・腎臓。脾・腎の動脈分枝は吻合をもたない解剖学的終動脈で、被膜に底辺を向けた楔状の蒼白な病巣となる。
  • 心臓は「機能的終動脈」:冠状動脈にも吻合枝はあるが細く、急性閉塞を代償できない。梗塞巣は楔状ではなく、冠状動脈の支配域に一致した領域性(貫壁性または心内膜下)の蒼白~黄白色病巣として広がる。
  • 「楔状」は形の話、「赤か白か」は血流の話。楔状(円錐状)になるのは血管が門部から被膜・漿膜へ放射状に走る肺・脾・腎で、色とは無関係(肺は赤い楔、脾・腎は白い楔)。心臓は上記のとおり領域性、腸管は閉塞血管の支配区域に一致してびまん性に暗赤色腫脹するので、どちらも楔状とは記載しない。
  • 脳は例外的な扱い:基本は貧血性だが、塞栓が溶けて再灌流すると出血性梗塞になりうる。壊死の型も脳だけ融解壊死で、他臓器の梗塞は凝固壊死。
  • 語呂で整理:「肺・腸は二重supply → 赤」「心・腎・脾は側副路が働かない → 白」。ただし中身は区別し、解剖学的終動脈=脾動脈分枝・腎動脈分枝・網膜中心動脈、機能的終動脈=冠状動脈と覚える。まず血管の走り方を思い出してから色を決めるとぶれない。
比較表
項目出血性梗塞(赤色梗塞)貧血性梗塞(白色梗塞)
代表臓器肺、腸管(精巣・卵巣の捻転)心臓、脾臓、腎臓
血管の特徴二重支配・側副路が豊富終動脈(脾・腎=吻合を欠く解剖学的終動脈)または機能的終動脈(心=吻合が細い)で側副路が働かない
組織の性状疎(肺胞・腸管壁)で血液が入り込める密で血液が入り込めない
主な誘因動脈塞栓+うっ血、静脈閉塞、捻転・絞扼動脈の血栓・塞栓
肉眼所見(色)暗赤色。割面から血液がにじむ蒼白~黄白色で境界明瞭
肉眼所見(形)肺は胸膜に底辺をもつ楔状。腸管は閉塞血管の支配区域に一致してびまん性に暗赤色腫脹(楔状ではない)脾・腎は被膜に底辺を向けた楔状。心は冠状動脈の支配域に一致した領域性・貫壁性(楔状ではない)
経過ヘモジデリン沈着を経て褐色調の瘢痕へ周囲に充血帯を伴い、白色の瘢痕へ
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