学習トップ理由で解く 柔道整復師運動学 ▸ §4 頭・頸部、四肢と体幹の運動(筋の作用および神経支配を含む) / QJ28A110

理由で解く 柔道整復師

QJ28A110 運動学

出典:第28回柔道整復師国家試験(2020)午前 問110
問題
長胸神経麻痺による翼状肩甲の原因となる筋はどれか。
選択肢
1 菱形筋
2 前鋸筋
3 小胸筋
4 鎖骨下筋
解答
正解2(前鋸筋)
解説

長胸神経が支配するのは前鋸筋。この筋が麻痺すると肩甲骨内側縁が背側へ浮き上がる翼状肩甲になります。正解は2。

前鋸筋は第1〜9肋骨の外側面から起こり、肩甲骨内側縁の前面(肋骨面)に停止します。働きは、肩甲骨を胸郭に押しつけて固定しつつ、外転(前方突出)と上方回旋を行うことです。支配神経は腕神経叢の鎖骨上部から分かれる長胸神経(C5〜C7)で、胸郭の外側面を長く下行するという走行のため、腋窩リンパ節郭清の手術、リュックの肩ベルトによる圧迫、肩に重量物を担ぐ動作などで障害されやすいという特徴があります。麻痺すると肩甲骨を胸郭へ押さえつける力が失われ、内側縁と下角が背側へ浮き上がる翼状肩甲(winging scapula)を呈します。同時に上方回旋も不十分になるため、上肢を頭上まで挙げる動作が行いにくくなります。診察では両手で壁を押させると浮き上がりが強調されるので、この肢位で確認するのが確実です。「長胸神経=前鋸筋=翼状肩甲」は一対一で結びつく組み合わせなので、まとめて記憶してしまうのが得策です。

✓ 2. 正しい
前鋸筋
長胸神経(C5〜C7)に支配される筋です。肩甲骨を胸郭に押しつけて固定する役割を失うため、内側縁と下角が浮き上がる翼状肩甲が生じます。
✗ 1. 誤り
菱形筋
支配神経は肩甲背神経で、肩甲骨の内転・挙上・下方回旋を行います。長胸神経の支配ではないため、「長胸神経麻痺による」という設問の条件に合いません。
✗ 3. 誤り
小胸筋
内側・外側胸筋神経に支配され、烏口突起に停止して肩甲骨を前傾・下制・下方回旋させます。長胸神経の支配筋ではありません。
✗ 4. 誤り
鎖骨下筋
鎖骨下筋神経に支配され、鎖骨を下制・固定する筋です。そもそも肩甲骨に付着しないため、翼状肩甲とは結びつきません。
ポイント
  • 長胸神経(C5〜C7)=前鋸筋。1本の神経が1つの筋を支配する、覚えやすい組み合わせ。
  • 前鋸筋の作用は、肩甲骨の胸郭への固定・外転(前方突出)・上方回旋。
  • 麻痺すると肩甲骨内側縁と下角が背側に浮き上がる翼状肩甲となり、上肢の前方挙上・頭上挙上が行いにくくなる。
  • 診察では両手で壁を押させると翼状肩甲が明瞭になる。この肢位で確認する。
  • 長胸神経は胸郭外側を長く走るため、腋窩リンパ節郭清・肩ベルトの圧迫・肩への荷重で障害されやすい。
比較表
支配神経主な作用麻痺と翼状肩甲
前鋸筋長胸神経(C5〜C7)肩甲骨の固定・外転・上方回旋典型的な翼状肩甲を生じる
菱形筋肩甲背神経肩甲骨の内転・挙上・下方回旋長胸神経支配ではない
小胸筋内側・外側胸筋神経肩甲骨の前傾・下制・下方回旋長胸神経支配ではない
鎖骨下筋鎖骨下筋神経鎖骨の下制・固定肩甲骨に付着しない
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