学習トップ理由で解く 柔道整復師解剖学 ▸ §9 神経系 / QJ28A078

理由で解く 柔道整復師

QJ28A078 解剖学

出典:第28回柔道整復師国家試験(2020)午前 問78
問題
尺骨神経の障害はどれか。
選択肢
1 第1指と第2指で正円を作れない。
2 手関節の背屈ができない。
3 第4指 MP 関節が屈曲する。
4 骨間筋が萎縮する。
解答
正解4(骨間筋が萎縮する。)
解説

骨間筋はすべて尺骨神経が支配するため、尺骨神経麻痺では骨間筋の萎縮が特徴的に現れます。正答は4です。

尺骨神経は、前腕では尺側手根屈筋と深指屈筋の尺側半を、手では手内在筋の大部分(背側・掌側骨間筋、第3・4虫様筋、小指球筋、母指内転筋、短母指屈筋深頭)を支配します。麻痺するとこれらが痩せ、とくに第1背側骨間筋のある母指と示指の間の水かき部が落ちくぼみ、手背では中手骨の間の溝が目立つようになります。骨間筋・虫様筋はMP関節を屈曲させIP関節を伸展させる働きなので、麻痺すると第4・5指はMP関節が過伸展し、PIP・DIP関節が屈曲する鷲手(claw hand)になります。母指内転筋が働かないため、紙をつまませると長母指屈筋で代償して母指IP関節が曲がるフロマン徴候が陽性となります。絞扼部位としては肘部管(肘の内側、尺骨神経溝)とギヨン管(手関節掌側尺側)が代表的です。

✗ 1. 誤り
第1指と第2指で正円を作れない。
母指のIP関節と示指のDIP関節を曲げてきれいな輪をつくれず、涙のしずく型になる所見(tear drop徴候、perfect O ができない)です。長母指屈筋と示指の深指屈筋が働かないことを示し、正中神経の枝である前骨間神経の麻痺で現れます。
✗ 2. 誤り
手関節の背屈ができない。
長・短橈側手根伸筋や尺側手根伸筋、総指伸筋が麻痺して手関節が背屈できなくなる下垂手で、橈骨神経麻痺の代表的所見です。上腕骨骨幹部骨折や上腕の圧迫で起こります。
✗ 3. 誤り
第4指 MP 関節が屈曲する。
MP関節を屈曲させるのは虫様筋と骨間筋です。尺骨神経麻痺ではこれらが働かなくなるため、第4・5指のMP関節はむしろ総指伸筋に引かれて過伸展します(鷲手)。所見の向きが実際とは逆になっています。
✓ 4. 正しい
骨間筋が萎縮する。
背側・掌側の骨間筋はすべて尺骨神経の支配なので、麻痺すれば萎縮します。とくに第1背側骨間筋部(母指と示指の間)の陥凹は、健側と見比べると気づきやすい所見です。
ポイント
  • 尺骨神経=手内在筋の神経。骨間筋・小指球筋・母指内転筋の萎縮と鷲手が三大所見。
  • 鷲手ではMP関節が過伸展、PIP・DIP関節が屈曲。「MPが曲がる」と書かれていたら逆と判断できる。
  • フロマン徴候(母指IP関節の屈曲代償)は母指内転筋麻痺のサイン。紙を挟ませるだけで確認できる。
  • 三大麻痺の変形は、正中神経=猿手、尺骨神経=鷲手、橈骨神経=下垂手。感覚障害の範囲(正中は橈側3指半の掌側、尺骨は尺側1指半、橈骨は手背橈側)とセットで覚える。
  • 尺骨神経障害を疑ったら、第1背側骨間筋の萎縮・フロマン徴候・小指外転筋力・手背尺側の感覚を左右で比べ、肘部管とギヨン管のチネル徴候を確認したうえで、進行例は医療機関へ紹介する。肘の長時間屈曲位や手関節尺側の圧迫を避ける生活指導も併せて行う。
比較表
正中神経尺骨神経橈骨神経
典型的な変形猿手鷲手(第4・5指)下垂手
特徴的な徴候涙のしずく徴候(正円がつくれない)、母指球の萎縮フロマン徴候、骨間筋・小指球の萎縮手関節・手指の伸展不能
感覚障害の主な範囲橈側3指半の掌側尺側1指半手背橈側・第1〜2指間背側
代表的な絞扼・損傷部位手根管、円回内筋、上腕骨顆上骨折肘部管、ギヨン管上腕骨骨幹部骨折、上腕の圧迫(下垂手)
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