学習トップ理由で解く 柔道整復師リハビリテーション医学 ▸ §4 リハビリテーション医学の評価と診断 / QJ27P017

理由で解く 柔道整復師

QJ27P017 リハビリテーション医学

出典:第27回柔道整復師国家試験(2019)午後 問17
問題
写真(別冊 No. 1)を別に示す。母指の運動はどれか。
図
選択肢
1 橈側外転
2 橈側内転
3 掌側外転
4 掌側内転
解答
正解3(掌側外転)
解説

母指の外転・内転は「手掌の面」を基準に決まります。基本軸は橈側外転・掌側外転とも示指(橈骨の延長上)で共通で、移動軸はいずれも母指です。両者を分けるのは基本軸ではなく運動を行う面で、手掌面と同じ平面の中で示指から開いていくのが橈側外転(参考可動域0〜60度)、手掌面に対して直角な面で手掌から立ち上がるのが掌側外転(参考可動域0〜90度)です。本問の正解は掌側外転です。

母指のCM関節(第1手根中手関節)は大菱形骨と第1中手骨がつくる鞍関節で、他の4指とは約90度ねじれた面に位置しているため、運動の名前も「どの面で動いたか」で区別します。関節可動域表示ならびに測定法では、母指の橈側外転・尺側内転・掌側外転・掌側内転はいずれも基本軸を示指(橈骨の延長上)、移動軸を母指として測定し、運動面が掌面であれば橈側外転(0〜60度)・尺側内転(0度)、運動面が掌面に直角な面であれば掌側外転(0〜90度)・掌側内転(0度)と表示します。つまり4つの運動で基本軸・移動軸は共通で、違うのは運動面だけ、と押さえるのが要点です。内転はいずれも外転位から基本肢位へ戻す方向を指し、母指を示指に添えた肢位が0度の基準になります。掌側外転の主動作筋は母指球にある短母指外転筋(正中神経支配)で、これに母指対立筋が加わって初めて母指と示指の指腹を向かい合わせるつまみ(pinch)が成立します。正中神経麻痺で母指球が萎縮すると掌側外転ができずに母指が手掌面へ落ち込み、いわゆる猿手を呈するため、この運動は評価上とくに重要です。

✓ 3. 正しい
掌側外転
本問の正答です。掌側外転は、母指が手掌面に直角な面を通って手掌から立ち上がるように離れていく運動で、参考可動域は0〜90度です。主動作筋は短母指外転筋(正中神経)で、対立運動とともに物をつまむ動作の土台になります。測定上のポイントは、基本軸は橈側外転・掌側外転とも示指(橈骨の延長上)で共通、移動軸はいずれも母指であり、両者を分けるのは基本軸ではなく運動を行う面だという点です。掌面の中で開けば橈側外転(0〜60度)、掌面に直角な面で立ち上がれば掌側外転(0〜90度)、と整理してください。
✗ 1. 誤り
橈側外転
橈側外転は手掌と同じ平面(掌面)の中で母指が示指から橈側へ遠ざかる運動で、参考可動域は0〜60度です。基本軸は掌側外転と同じ示指(橈骨の延長上)、移動軸も同じ母指ですが、運動を行う面が90度異なるため、掌面に直角な面で立ち上がる掌側外転とは別の運動として表示されます。主動作筋は長母指外転筋(橈骨神経・後骨間神経支配)で、前腕背側から走る腱が解剖学的嗅ぎタバコ入れの橈側縁をつくります。「掌面の中で開くのが橈側外転、掌面から起き上がるのが掌側外転」と対にして整理してください。
✗ 2. 誤り
橈側内転
まず用語として成立しません。関節可動域表示ならびに測定法で橈側外転と対になる内転の正式名称は「尺側内転」であり、「橈側内転」という運動名は測定法に存在しません(本選択肢だけのダミー用語です)。加えて内転はいずれも外転位から基本肢位(0度)へ戻す方向を指し、参考可動域は0度、すなわち母指を示指に添えた肢位そのものを表します。用語を問われたときは、外転と内転を必ずペア(橈側外転⇔尺側内転、掌側外転⇔掌側内転)で書き出して確認する習慣をつけると安全です。
✗ 4. 誤り
掌側内転
運動を行う面(掌面に直角な面)は掌側外転と同じですが、掌側内転は外転位から母指を手掌面へ戻す方向で、その参考可動域は0度、つまり母指を示指に添えた基本肢位そのものです。したがって、母指が手掌面から立ち上がった肢位で表される運動は掌側外転として表示され、掌側内転にはあたりません。内転には主に母指内転筋(尺骨神経支配)がはたらき、鍵つまみ(側腹つまみ)で力を発揮する運動として押さえておきましょう。
ポイント
  • 母指のCM関節は鞍関節で、他の4指と直交する面にあるため、運動名は「掌面の中か・掌面に直角な面か」で決まる。
  • 基本軸は橈側外転・尺側内転・掌側外転・掌側内転のすべてで示指(橈骨の延長上)、移動軸はいずれも母指。区別するのは基本軸ではなく運動面。
  • 掌面の中で示指から離れる=橈側外転(0〜60度、長母指外転筋・橈骨神経)。
  • 掌面に直角な面で立ち上がる=掌側外転(0〜90度、短母指外転筋・正中神経)。
  • 戻す方向が内転で参考可動域はいずれも0度(基本肢位)。橈側外転⇔尺側内転、掌側外転⇔掌側内転とペアで覚える(「橈側内転」という名称は存在しない)。
  • 掌側外転+対立でつまみが成立するため、正中神経麻痺(猿手)ではまず掌側外転の可否を確認する。
比較表
運動基本軸移動軸運動面と方向参考可動域主動作筋支配神経
橈側外転示指(橈骨の延長上)母指掌面の中で、示指から遠ざかる0〜60度長母指外転筋橈骨神経(後骨間神経)
尺側内転
(橈側外転と対になる正式な内転。選択肢2の「橈側内転」は測定法に存在しない造語)
示指(橈骨の延長上)母指掌面の中で、示指へ近づく0度(基本肢位)母指内転筋ほか尺骨神経
掌側外転(正解)示指(橈骨の延長上)母指掌面に直角な面で、手掌から離れる0〜90度短母指外転筋正中神経
掌側内転示指(橈骨の延長上)母指掌面に直角な面で、手掌へ戻る0度(基本肢位)母指内転筋尺骨神経
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