学習トップ理由で解く 柔道整復師病理学概論 ▸ §5 循環障害 / QJ27A103

理由で解く 柔道整復師

QJ27A103 病理学概論

出典:第27回柔道整復師国家試験(2019)午前 問103
問題
フィラリア症でみられる浮腫の成因はどれか。
選択肢
1 血管透過性の亢進
2 毛細血管圧の上昇
3 膠質浸透圧の低下
4 リンパ管の閉塞
解答
正解4(リンパ管の閉塞)
解説

フィラリア症では成虫がリンパ管とリンパ節に寄生して内腔を閉塞するため、間質液がリンパ管へ回収されずにたまるリンパ浮腫が生じます。したがって成因はリンパ管の閉塞です。

浮腫は間質に水分がたまった状態で、その成因はスターリングの法則に沿って4つに整理できます。すなわち毛細血管静水圧の上昇、血漿膠質浸透圧の低下、血管透過性の亢進、そしてリンパ管の閉塞です。通常、毛細血管から漏れ出た水分の一部はリンパ管が回収して静脈系へ戻していますが、この排水路が塞がれると水分と蛋白が間質に残り続けます。フィラリア症では蚊が媒介するバンクロフト糸状虫などの成虫がリンパ管・リンパ節に寄生し、慢性の炎症と線維化で内腔が閉塞して、下肢や陰嚢が高度に腫大する象皮病に至ります。同じリンパ性浮腫の機序は、乳癌手術で腋窩リンパ節を郭清したあとの上肢浮腫でもみられ、日常臨床で出会いやすい病態です。

✓ 4. 正しい
リンパ管の閉塞
フィラリア症の浮腫の本態です。成虫がリンパ管やリンパ節に寄生し、慢性炎症と線維化によって内腔が閉塞するため、間質液の排水路が断たれます。蛋白に富む液が長期にたまって皮膚と皮下組織が厚く硬くなり、下肢や陰嚢が著しく腫大した状態を象皮病と呼びます。
✗ 1. 誤り
血管透過性の亢進
これは炎症性浮腫やアレルギー性浮腫の成因です。ヒスタミンやブラジキニンなどの化学伝達物質により血管内皮の細胞間隙が広がり、蛋白を含む血漿成分が間質へ漏出します。蕁麻疹、血管性浮腫、熱傷、急性炎症の腫脹がこれにあたり、フィラリア症の慢性リンパ浮腫とは機序が異なります。
✗ 2. 誤り
毛細血管圧の上昇
静脈側の圧が上がって水分が押し出される機序で、うっ血性浮腫の成因です。右心不全による全身性浮腫、深部静脈血栓症や静脈瘤による下肢の浮腫、妊娠子宮による下大静脈圧迫などが該当します。押すとへこむ圧痕性浮腫が典型で、リンパ管そのものの通過障害ではありません。
✗ 3. 誤り
膠質浸透圧の低下
血漿アルブミンが減って血管内に水を引き留める力が落ちる機序です。ネフローゼ症候群(尿への喪失)、肝硬変(合成低下)、蛋白漏出性胃腸症、低栄養(クワシオルコル)でみられ、全身性の浮腫となります。フィラリア症は局所のリンパ流障害であり、この機序では説明できません。
ポイント
  • 浮腫の成因は4つ:毛細血管静水圧の上昇、血漿膠質浸透圧の低下、血管透過性の亢進、リンパ管の閉塞。
  • フィラリア症は蚊が媒介する寄生虫症。成虫のリンパ管・リンパ節寄生 → 閉塞 → リンパ浮腫 → 象皮病。
  • リンパ性浮腫は蛋白に富み、慢性化すると皮膚が硬く厚くなって圧痕を残しにくくなる。
  • 身近なリンパ性浮腫として、乳癌手術で腋窩リンパ節を郭清したあとの患側上肢浮腫がある。
  • 局所性か全身性かで振り分けると成因を絞りやすい。全身性なら心不全・低アルブミン血症、局所性なら静脈閉塞・炎症・リンパ流障害。
比較表
成因起こる仕組み代表的な病態
リンパ管の閉塞間質液の排水路が断たれるフィラリア症(象皮病)、リンパ節郭清後、腫瘍浸潤
血管透過性の亢進内皮の細胞間隙が開き血漿が漏出炎症、蕁麻疹、血管性浮腫、熱傷
毛細血管圧の上昇静脈側のうっ滞で水分が押し出される心不全、深部静脈血栓症、静脈瘤
膠質浸透圧の低下アルブミン減少で水を保持できないネフローゼ症候群、肝硬変、低栄養
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