学習トップ理由で解く 柔道整復師病理学概論 ▸ §4 退行性病変・代謝障害 / QJ27A099

理由で解く 柔道整復師

QJ27A099 病理学概論

出典:第27回柔道整復師国家試験(2019)午前 問99
問題
アルコール性肝障害でみられる病変はどれか。
選択肢
1 アミロイド変性
2 フィブリノイド変性
3 脂肪変性
4 糖原変性
解答
正解3(脂肪変性)
解説

アルコール性肝障害の出発点はアルコール性脂肪肝、すなわち肝細胞内に中性脂肪がたまる脂肪変性です。他の3つの変性は、それぞれ別の疾患群を代表する所見です。

エタノールは肝細胞内でアルコール脱水素酵素によりアセトアルデヒドへ、さらにアルデヒド脱水素酵素により酢酸へ代謝されます。この2段階でNADHが大量に産生されてNADH/NAD⁺比が上昇し、脂肪酸のβ酸化が抑制される一方で中性脂肪の合成が促進されるため、肝細胞質に大きな脂肪滴がたまり核が辺縁へ押しやられます(大滴性脂肪変性)。飲酒が続くとアルコール性肝炎(マロリー小体の出現と好中球浸潤)、線維化を経て肝硬変へ進みますが、脂肪肝の段階であれば禁酒により可逆的に改善します。だからこそ早期の断酒支援と栄養状態の評価につなげることが重要です。

✓ 3. 正しい
脂肪変性
アルコール性脂肪肝でみられる基本病変です。エタノール代謝で生じるNADH過剰により脂肪酸のβ酸化が抑えられ中性脂肪合成が進むため、肝細胞質に大滴性の脂肪滴が蓄積します。肉眼的には肝は腫大し黄色調で軟らかくなります。この段階なら禁酒で可逆的である点が臨床的に重要です。
✗ 1. 誤り
アミロイド変性
アミロイドという線維状の異常蛋白が細胞外に沈着する変性で、アミロイドーシスの所見です。多発性骨髄腫、関節リウマチなどの慢性炎症、長期透析、家族性素因などを背景に、心・腎・肝・消化管などに沈着します。コンゴレッド染色で橙赤色に染まり、偏光顕微鏡下に緑色の複屈折を示すのが特徴で、アルコールとは直接結びつきません。
✗ 2. 誤り
フィブリノイド変性
結合組織や血管壁が、フィブリン様の均質・好酸性の物質に置き換わる変性です。全身性エリテマトーデスや結節性多発動脈炎などの膠原病、リウマチ熱、悪性高血圧の細動脈などでみられ、免疫複合体沈着や血漿成分の滲出が背景にあります。アルコール性肝障害の主病変ではありません。
✗ 4. 誤り
糖原変性
グリコーゲンが細胞内に過剰蓄積する変性で、酵素欠損による糖原病(フォン・ギールケ病など)や、血糖コントロール不良の糖尿病でみられます。アルコール性肝障害で肝細胞にたまるのはグリコーゲンではなく中性脂肪であり、蓄積する物質が異なります。
ポイント
  • アルコール性肝障害の進展:脂肪肝 → アルコール性肝炎(マロリー小体・好中球浸潤) → 線維化 → 肝硬変。
  • 機序はNADH/NAD⁺比の上昇。β酸化が抑制され中性脂肪合成が亢進して大滴性脂肪変性となる。
  • 脂肪肝の段階は可逆的。禁酒と栄養評価につなげる支援が第一歩。
  • 脂肪変性の他の原因:肥満、糖尿病、低栄養、四塩化炭素などの中毒。
  • 変性の対応づけ:アミロイド=アミロイドーシス、フィブリノイド=膠原病・悪性高血圧、糖原=糖原病・糖尿病。
比較表
変性蓄積・変化する物質代表的な病態
脂肪変性中性脂肪アルコール性脂肪肝、肥満、糖尿病、低栄養
アミロイド変性アミロイド(異常線維蛋白)多発性骨髄腫、慢性炎症、長期透析
フィブリノイド変性フィブリン様物質膠原病(SLE・結節性多発動脈炎)、悪性高血圧
糖原変性グリコーゲン糖原病、コントロール不良の糖尿病
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