学習トップ理由で解く 柔道整復師病理学概論 ▸ §3 病因 / QJ27A098

理由で解く 柔道整復師

QJ27A098 病理学概論

出典:第27回柔道整復師国家試験(2019)午前 問98
問題
真菌感染症はどれか。
選択肢
1 梅毒
2 アメーバ赤痢
3 ツツガムシ病
4 ニューモシスチス肺炎
解答
正解4(ニューモシスチス肺炎)
解説

病原体が「細菌・真菌・原虫」のどれに属するかを問う分類の問題です。真菌によるものはニューモシスチス肺炎(起因病原体 Pneumocystis jirovecii)で、正解は4です。

微生物は細胞の作りで大きく分かれます。核膜をもたない原核生物が細菌で、スピロヘータ・リケッチア・クラミジア・マイコプラズマもここに含まれます。核膜をもつ真核生物が真菌と原虫で、このうちβ-グルカンやキチンからなる細胞壁をもつのが真菌、栄養型(体内で増殖しているときの形)が細胞壁をもたない単細胞生物が原虫です。原虫にはアメーバのように運動するものが多いのですが、マラリア原虫やトキソプラズマなどの胞子虫類は明瞭な運動器官をもたないので、真菌と原虫の区別は「運動性」ではなく核膜と細胞壁の有無で行うとよいでしょう。ニューモシスチスは形態が原虫に似るため長くPneumocystis carinii(カリニ原虫)と呼ばれていましたが、リボソームRNAの塩基配列解析によって真菌に再分類され、ヒト由来株は P. jirovecii と改名されました。健常者では発症せず、HIV感染症やステロイド・免疫抑制薬・抗癌薬の使用で細胞性免疫が低下したときに発症する日和見感染の代表であり、AIDS指標疾患の一つでもあります。乾性咳嗽・労作時呼吸困難・低酸素血症を示し、胸部X線・CTでびまん性のすりガラス陰影を呈します。「古い呼び名に引きずられて原虫と覚えていないか」を確認しておくと、この問題は確実に取れます。

✓ 4. 正しい
ニューモシスチス肺炎
起因病原体は Pneumocystis jirovecii で、真核生物である真菌に分類されます。旧称カリニ原虫という名残から原虫と誤解されやすいのですが、遺伝子解析にもとづき真菌とされたことを押さえておきましょう。なお本菌は細胞膜にエルゴステロールをほとんどもたないため一般的な抗真菌薬が効きにくく、治療の第一選択はST合剤(スルファメトキサゾール・トリメトプリム)です。真菌でありながら例外的なふるまいをする点として、あわせて覚えておくとよいでしょう。
✗ 1. 誤り
梅毒
起因病原体は Treponema pallidum(梅毒トレポネーマ)で、らせん状の細菌であるスピロヘータに属します。性行為で感染し、第1期の硬性下疳と無痛性の鼠径リンパ節腫脹、第2期のバラ疹などの梅毒疹、第3期のゴム腫、第4期の神経梅毒や大動脈瘤へと進みます。真菌ではなく細菌感染症として整理しましょう。
✗ 2. 誤り
アメーバ赤痢
起因病原体は赤痢アメーバ Entamoeba histolytica で、真核生物ではありますが真菌ではなく原虫です。嚢子(シスト)に汚染された飲食物の経口摂取で感染します。嚢子は外界で生き延びるための厚い壁をもちますが、腸管内で増殖する栄養型に細胞壁はなく、原虫は「栄養型が細胞壁をもたない真核の単細胞生物」と押さえておけば真菌と取り違えません。大腸にフラスコ状潰瘍をつくって、いちごゼリー状の粘血便を伴う下痢を起こします。血行性に肝へ達すると肝膿瘍を生じます。同じ「赤痢」でも細菌性赤痢(赤痢菌)とは病原体が別である点を対比させて覚えるとよいでしょう。
✗ 3. 誤り
ツツガムシ病
起因病原体は Orientia tsutsugamushi(ツツガムシ病リケッチア)で、細胞内でのみ増殖する細菌であるリケッチアに属します。ツツガムシ(ダニの幼虫)に刺されて感染する節足動物媒介性感染症で、刺し口(黒色の痂皮)・発熱・発疹が三徴となります。真菌ではなく細菌感染症に分類します。
ポイント
  • 真菌は核膜をもつ真核生物で、細胞壁にβ-グルカンやキチン、細胞膜にエルゴステロールをもつ。酵母型と菌糸型がある。
  • 原虫も核膜をもつ真核生物だが、栄養型は細胞壁をもたない単細胞生物。アメーバのように運動するものが多い一方、マラリア原虫やトキソプラズマなどの胞子虫類は明瞭な運動器官をもたないため、真菌との区別は運動性ではなく細胞壁(β-グルカン・キチン)の有無で判断する。
  • ニューモシスチス肺炎の起因病原体 Pneumocystis jirovecii は、旧称カリニ原虫だが遺伝子解析により真菌に再分類された。ただし細胞膜にエルゴステロールをほとんどもたないため一般的な抗真菌薬が効きにくく、治療の第一選択はST合剤(真菌のなかの例外として押さえる)。
  • ニューモシスチス肺炎は細胞性免疫低下時(HIV感染症、ステロイド・免疫抑制薬使用など)に起こる日和見感染の代表で、AIDS指標疾患。乾性咳嗽・労作時呼吸困難・すりガラス陰影が特徴。
  • スピロヘータ(梅毒)・リケッチア(ツツガムシ病)はいずれも細菌のなかま。名前が特殊でも原核生物である。
  • アメーバ赤痢・マラリア・トキソプラズマ・トリコモナスは原虫。真菌の代表はカンジダ・アスペルギルス・クリプトコックス・白癬菌・ニューモシスチス。
比較表
選択肢病原体分類特徴
1. 梅毒Treponema pallidum細菌(スピロヘータ)性感染症。硬性下疳→梅毒疹→ゴム腫→神経梅毒
2. アメーバ赤痢Entamoeba histolytica原虫経口感染。大腸のフラスコ状潰瘍、粘血便、肝膿瘍
3. ツツガムシ病Orientia tsutsugamushi細菌(リケッチア)ダニ媒介。刺し口・発熱・発疹の三徴
4. ニューモシスチス肺炎Pneumocystis jirovecii真菌日和見感染。AIDS指標疾患。すりガラス陰影、治療はST合剤(エルゴステロールを欠くため)
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