学習トップ理由で解く 柔道整復師運動学 ▸ §4 頭・頸部、四肢と体幹の運動(筋の作用および神経支配を含む) / QJ26A093

理由で解く 柔道整復師

QJ26A093 運動学

出典:第26回柔道整復師国家試験(2018)午前 問93
問題
股関節の運動で正しいのはどれか。
選択肢
1 下肢機能軸は垂直軸に平行である。
2 大腿骨頭靱帯は骨頭固定のためには機能していない。
3 骨盤を固定し片側の股関節を外転すると対側も外転する。
4 股関節の外転に働くのは恥骨筋である。
解答
正解2(大腿骨頭靱帯は骨頭固定のためには機能していない。)
解説

大腿骨頭靱帯(円靱帯)は、関節を力学的に締めつけて骨頭を固定する靱帯ではなく、力学的な固定ではなく骨頭へ向かう血管を通す構造として理解するものなので、選択肢2が正しい。

股関節は深い寛骨臼と関節唇に骨頭が深くはまり込む臼状関節(球関節の一種)で、安定性は骨性の適合と、外側を包む関節包および3本の関節包靱帯(腸骨大腿靱帯・恥骨大腿靱帯・坐骨大腿靱帯)が担っている。大腿骨頭靱帯は寛骨臼切痕から大腿骨頭窩へ関節腔内を走る滑膜に包まれた索状構造で、屈曲・内転・外旋位でわずかに緊張する程度にとどまり、骨頭の固定への寄与はほとんどないとされる。その代わり、閉鎖動脈の寛骨臼枝から分かれる大腿骨頭靱帯動脈(骨頭枝)を関節腔内へ導いている。ただし、この血管が骨頭に供給する範囲は成人でも骨頭の一部にとどまり、幼小児期(おおむね4歳以下)にはほとんど寄与しない。小児では骨端板(骨端線)が血行の障壁となるため、骨頭は内側大腿回旋動脈から分かれる上支帯動脈(外側骨端動脈)にほぼ全面的に依存しており、まさにそれゆえにPerthes病や小児大腿骨頸部骨折後に大腿骨頭壊死を起こしやすい。「靱帯=必ず関節の固定」と決めつけず、走行と実際の役割から判断したい設問である。

✓ 2. 正しい
大腿骨頭靱帯は骨頭固定のためには機能していない。
大腿骨頭靱帯は関節包の内側を走り、張力も弱いため、骨頭を臼にとどめる力学的役割はほとんど果たしていない。その仕事は深い寛骨臼と関節唇、そして人体で最も強靱とされる腸骨大腿靱帯(Y靱帯)を含む関節包靱帯が受け持っている。大腿骨頭靱帯は「大腿骨頭靱帯動脈(閉鎖動脈寛骨臼枝の骨頭枝)を通す構造」として押さえたうえで、その骨頭への血行寄与は限定的である点までをセットで覚え、股関節の安定機構を問われたら関節包靱帯の名を挙げられるようにしておくとよい。
✗ 1. 誤り
下肢機能軸は垂直軸に平行である。
下肢機能軸(Mikulicz線)は大腿骨頭中心・膝関節中心・足関節中心を結ぶ線であり、左右の股関節が骨盤の幅だけ外側に離れているぶん、下方へ向かうにつれて内側へ傾く。したがって垂直軸と平行にはならず、数度の傾きをもつ。この軸が内側・外側のどちらへずれるかが内反膝・外反膝の評価につながるので、「もともと斜めに走っている線」として覚えておきたい。
✗ 3. 誤り
骨盤を固定し片側の股関節を外転すると対側も外転する。
骨盤を固定していれば片側の運動は対側へ伝わらないので、対側が外転することはない。骨盤を固定せずに片側を外転させると、骨盤がその側へ傾いて対側の股関節は相対的に内転位になる。関節可動域測定で骨盤の固定が必須とされるのは、この代償を除いて純粋な股関節の動きを測るためであり、実技でも骨盤を押さえる手を先に決めてから測定に入るとよい。
✗ 4. 誤り
股関節の外転に働くのは恥骨筋である。
恥骨筋は恥骨櫛から大腿骨の恥骨筋線に付く内転筋群の一つで、股関節の内転と屈曲に働く。神経支配は内転筋群のなかでは例外的に大腿神経であり(副閉鎖神経や閉鎖神経の枝を受ける変異もあるが、問われれば大腿神経と答える)、この点も外転筋との対比で押さえておきたい。外転を担う主役は中殿筋・小殿筋・大腿筋膜張筋で、この3筋はいずれも上殿神経支配である。大殿筋の上部線維も外転を補助するが、大殿筋の支配は下殿神経であって上殿神経ではないので、補助筋まで上殿神経で束ねないよう注意する。中殿筋が弱化した側の脚で片脚立位をとると、骨盤を水平に保てず、挙げている側=遊脚側(健側)の骨盤が下降する。これがTrendelenburg徴候であり、「下がるのは支持していない側(健側)、原因があるのは支持している側(患側)」という左右関係まで結びつけると、筋名と機能が実際の所見として定着する。
ポイント
  • 股関節の安定は「深い寛骨臼+関節唇+関節包靱帯(腸骨大腿・恥骨大腿・坐骨大腿)」が担う。大腿骨頭靱帯は固定にはほぼ関与せず、大腿骨頭靱帯動脈(閉鎖動脈寛骨臼枝の骨頭枝)を通す構造である。
  • ただし大腿骨頭靱帯動脈の骨頭への血行寄与は成人でも一部にとどまり、幼小児期にはほとんどない。小児の骨頭は骨端板が血行の障壁となるため内側大腿回旋動脈由来の上支帯動脈(外側骨端動脈)にほぼ依存し、Perthes病や大腿骨頸部骨折後に骨頭壊死を起こしやすい。
  • 腸骨大腿靱帯(Y靱帯、Bigelow靱帯)は人体で最も強靱な靱帯とされ、股関節の過伸展を制動する。立位を筋力に頼らず保てるのはこの靱帯のおかげ。
  • 下肢機能軸(Mikulicz線)=大腿骨頭中心→膝関節中心→足関節中心。垂直軸と平行ではなく、下方へ内側に傾く。
  • 外転筋は中殿筋・小殿筋・大腿筋膜張筋(3筋とも上殿神経)、内転筋は大内転筋・長内転筋・短内転筋・恥骨筋・薄筋(閉鎖神経。ただし恥骨筋は大腿神経、大内転筋のハムストリング部は脛骨神経)。恥骨筋は内転筋群であり外転筋ではない。中殿筋麻痺では患側で片脚立位をとると健側(遊脚側)の骨盤が下がる(Trendelenburg徴候)。
  • 上殿神経=中殿筋・小殿筋・大腿筋膜張筋(外転)、下殿神経=大殿筋(伸展、上部線維が外転を補助)。外転の補助筋である大殿筋上部線維も支配は下殿神経であり、「外転=すべて上殿神経」とまとめないこと。
  • 骨盤を固定しない外転では骨盤が傾き対側は内転位になる。ROM測定では骨盤を確実に固定してから角度を読む。
比較表
作用主な筋神経支配関連する所見・覚え方
外転中殿筋、小殿筋、大腿筋膜張筋上殿神経(3筋とも)中殿筋麻痺 → 患側で片脚立位をとると健側(遊脚側)の骨盤が下がる(Trendelenburg徴候)。腸骨の外側面から大転子へ向かう筋が外転筋。大殿筋上部線維も外転を補助するが、大殿筋の支配は下殿神経であり上殿神経ではない
内転大内転筋、長内転筋、短内転筋、恥骨筋、薄筋閉鎖神経(ただし恥骨筋は大腿神経支配。大内転筋のハムストリング部=坐骨結節起始部は脛骨神経)恥骨・坐骨から大腿骨内側へ向かう筋が内転筋。恥骨筋は最上位にあり屈曲にも働く。「内転筋群のなかで恥骨筋だけ大腿神経」と例外として覚える
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