学習トップ理由で解く 柔道整復師一般臨床医学 ▸ §6 診察各論 触診 / QJ25P029

理由で解く 柔道整復師

QJ25P029 一般臨床医学

出典:第25回柔道整復師国家試験(2017)午後 問29
問題
筋肉の診察・所見で正しいのはどれか。2つ選べ。
選択肢
1 左右の同部位を比較する。
2 脊髄神経根症による筋萎縮は全身性に均一である。
3 小脳疾患では四肢の筋トーヌスが低下することが多い。
4 痙縮では他動的運動に際して最初から最後まで抵抗がある。
解答
正解1(左右の同部位を比較する。)、3(小脳疾患では四肢の筋トーヌスが低下することが多い。)
解説

筋の診察は「左右の同じ場所を比べる」ことから始まる。筋トーヌス(筋緊張)は障害部位によって上がり方・下がり方が違い、小脳の障害では低下することが多い。

筋の評価は、視診・触診で萎縮や肥大を見て、力を抜いた状態で他動的に関節を動かし、そのときの抵抗で筋トーヌスを判定する。萎縮の「分布」は原因を絞る最大の手がかりで、神経根や末梢神経の障害では支配領域に一致した限局性の萎縮が出る。筋トーヌスは、錐体路障害で痙縮、錐体外路障害で固縮としてそれぞれ亢進し、小脳障害や下位運動ニューロン障害では低下する。痙縮と固縮の区別は「抵抗の出方」で行い、動かす速度を変えて確かめるとよい。

✓ 1. 正しい
左右の同部位を比較する。
筋の太さや硬さには体格差・利き手差など個人差があるため、絶対値だけでは異常を判断しにくい。片側性の病態では健側がその人自身の基準値になるので、膝蓋骨上縁から何cmといった同一の基準点をとり、左右同じ高さで周径を測って比較する。これにより、わずかな萎縮や左右差を客観的に拾い上げられる。
✓ 3. 正しい
小脳疾患では四肢の筋トーヌスが低下することが多い。
小脳は筋紡錘などからの情報を受け取り、γ運動ニューロンを介して筋緊張を保つ働きを担う。障害されるとこの調節が働かず、他動運動での抵抗が減って筋トーヌス低下となる。膝蓋腱反射で下腿が数回揺れる振り子様反射、企図振戦、測定障害、反復拮抗運動不能などの失調症状を伴うことが多い。
✗ 2. 誤り
脊髄神経根症による筋萎縮は全身性に均一である。
神経根が障害されると、その根が支配する筋群(筋節)に一致した分節性・限局性の萎縮が起こる。全身に広く萎縮が及ぶのは、長期臥床による全身性の廃用や悪液質(がん・慢性消耗性疾患)、加齢によるサルコペニアなどである。なお柔道整復で日常的に問題になる廃用性萎縮は、ギプス・シーネ固定後の大腿四頭筋のように、固定して動かさなかった部位に限局して起こるのが普通である(内分泌・代謝性ミオパチーも近位筋優位で、「均一」ではない)。逆にいえば、どの筋が痩せているかを丁寧に確認すれば障害された高位を推定できるので、萎縮の分布は必ず記録したい。
✗ 4. 誤り
痙縮では他動的運動に際して最初から最後まで抵抗がある。
痙縮は速度依存性で、素早く他動運動させると動かし始めに強い抵抗が出て、途中で急に抵抗が抜ける折りたたみナイフ現象を示す。速度に関係なく最初から最後まで一様に抵抗が続くのは鉛管様固縮、抵抗が断続的にガクガクと感じられるのは歯車様固縮で、いずれもパーキンソン病などの錐体外路障害に見られる所見である。両者を分けるには、ゆっくり動かした場合と速く動かした場合で抵抗が変わるかを比べるとよい。
ポイント
  • 筋の診察は左右比較が基本。同一の基準点から周径を測り、健側をその人自身の基準値として使う。
  • 脊髄神経根症の萎縮は筋節に一致した分節性・限局性。萎縮の分布から障害高位を推定する。
  • 廃用性萎縮は固定・不動化した部位に限局するのが基本(ギプス固定後の大腿四頭筋など)。全身に及ぶ萎縮は長期臥床による全身性の廃用・悪液質・サルコペニアで考える。
  • 小脳障害では筋トーヌス低下。振り子様腱反射・企図振戦・測定障害・反復拮抗運動不能を伴う。
  • 痙縮(錐体路障害)は速度依存性で折りたたみナイフ現象。固縮(錐体外路障害)は速度に関係なく抵抗が持続し、一様なら鉛管様、断続的にガクガクするなら歯車様。
  • 本問は「2つ選べ」。正答は 1 と 3。
比較表
所見痙縮固縮筋トーヌス低下
障害部位錐体路(上位運動ニューロン)錐体外路(基底核)小脳、下位運動ニューロン・末梢神経・筋
他動運動の抵抗速度依存性。動かし始めに強く、途中で急に抜ける(折りたたみナイフ現象)速度に関係なく最初から最後まで抵抗が続く。一様なら鉛管様、断続的にガクガクするなら歯車様抵抗が乏しく、関節が過剰に動く
腱反射亢進、クローヌスありおおむね正常小脳障害では振り子様、末梢性では減弱・消失
病的反射バビンスキー反射陽性陰性陰性
随伴所見・代表例片麻痺、脳血管障害、脊髄損傷無動・振戦、パーキンソン病失調・企図振戦(小脳)、分節性萎縮(神経根症)
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