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理由で解く 柔道整復師

QJ25A104 病理学概論

出典:第25回柔道整復師国家試験(2017)午前 問104
問題
悪性腫瘍で正しいのはどれか。
選択肢
1 早期癌はTNM 分類でII期に相当する。
2 病理解剖で初めて明らかになった癌をラテント癌という。
3 シュニッツラーの転移はリンパ行性転移である。
4 胃癌の直腸子宮窩への転移をクルーケンベルグ転移という。
解答
正解2(病理解剖で初めて明らかになった癌をラテント癌という。)
解説

正解は2。生前はまったく症状を出さず、病理解剖(剖検)で初めて見つかった癌をラテント癌(latent cancer)という。前立腺癌・甲状腺癌が代表例。

本問は「癌の呼び名の定義」を問う選択肢1・2と、「人名のついた転移の転移先・経路」を問う選択肢3・4の2系統からなる。前者は、早期癌=深達度による定義(定義は臓器ごとに定められている)、ラテント癌=剖検で初めて判明する癌、という定義そのものを覚えているかどうかで決まる。後者は名称・転移先・経路の3点セットで照合する。転移の経路はリンパ行性・血行性・播種性の3つで、胃癌の有名な転移でいえば、左鎖骨上窩リンパ節へのウィルヒョウ転移は転移先がリンパ節・経路がリンパ行性、ダグラス窩(直腸子宮窩・直腸膀胱窩)へのシュニッツラー転移は転移先がダグラス窩・経路が腹膜播種、クルッケンベルグ腫瘍は転移先が卵巣で、経路は腹膜播種のほかリンパ行性・血行性も想定され一義には決まらない。この3つ目だけ経路が確定しない点も含めて、名前・転移先・経路の3列の表を自分で書き出して覚えるのが確実である。なお「早期癌」は深達度(どこまで深く入ったか)で決まる呼び名であり、T・N・Mを合わせて決めるTNM分類の病期(ステージ)とは別のものさしである点も押さえておきたい。

✓ 2. 正しい
病理解剖で初めて明らかになった癌をラテント癌という。
ラテント癌(latent cancer)は、生前に臨床症状も所見も示さないまま経過し、他の死因で亡くなった患者の病理解剖で偶然発見される癌をいう。「latent=潜んでいる」という語のとおり、臨床的に表に出てこないことが定義の核心である。高齢者の前立腺癌や甲状腺の微小乳頭癌が典型で、剖検例では高頻度に見つかる。似た用語のオカルト癌(occult cancer)は、転移巣が先に見つかって原発巣が微小・不明のものを指し、こちらは生前に発見される点が異なる。なお、この2語の和訳(潜在癌/潜伏癌)は文献によって対応が入れ替わることがあるため、和訳で覚えず英語名と定義そのもので区別するとよい。
✗ 1. 誤り
早期癌はTNM 分類でII期に相当する。
早期癌の定義は臓器ごとに定められている。胃・大腸では「癌の浸潤が粘膜下層までにとどまるもの」という深達度による定義で、リンパ節転移の有無を問わない(食道では現行の取扱い規約上、早期食道癌は粘膜内にとどまるものを指し、粘膜下層に及ぶものは表在癌として区別する)。いずれにせよ、病期分類のII期と一対一で対応するものではない。たとえば早期胃癌は深達度でいえばT1にあたり、リンパ節転移も遠隔転移もなければ(N0M0)病期はI期となる。一方、大腸で浸潤が粘膜内にとどまるものはTisであり、TisN0M0は0期である。このように臓器や深達度によって当てはまる病期は変わる。深さの話(早期/進行)とステージの話(T+N+Mの総合判定)は別の座標軸だと切り分けて理解しておくとよい。
✗ 3. 誤り
シュニッツラーの転移はリンパ行性転移である。
シュニッツラー転移は、胃癌などの癌細胞が漿膜を破って腹腔内にこぼれ落ち、腹腔内で最も低い位置にあるダグラス窩(直腸子宮窩・直腸膀胱窩)に着床して増殖する播種性転移(腹膜播種)である。腹水にのって重力方向へ落ちる、というイメージで経路を覚えるとよい。直腸診で直腸前壁に硬い板状の腫瘤として触れるのが特徴。リンパ行性転移の代表として押さえるべきは、左鎖骨上窩リンパ節に及ぶウィルヒョウ転移のほうである。
✗ 4. 誤り
胃癌の直腸子宮窩への転移をクルーケンベルグ転移という。
はじめに用語を1つ整理しておく。「クルーケンベルグ」と「クルッケンベルグ」は同一人名の表記ゆれであり(以下、現行教科書で一般的な「クルッケンベルグ」と記す)、別概念ではない。この選択肢が誤りである理由は名称の表記ではなく、転移先の組み合わせが入れ替わっていることにある。直腸子宮窩(ダグラス窩)への転移はシュニッツラー転移であり、クルッケンベルグ腫瘍は胃癌などの消化器癌が卵巣に転移したものを指す。クルッケンベルグ腫瘍は両側性に生じることが多く、粘液を貯めた印環細胞癌の像を示すのが典型である(転移経路は腹膜播種のほかリンパ行性・血行性も想定され、一義には決まらない)。「シュニッツラー=ダグラス窩」「クルッケンベルグ=卵巣」と転移先の臓器名を対にして声に出して覚えると、本問のような入れ替え選択肢に引っかからずに済む。
ポイント
  • ラテント癌(latent cancer)=生前は無症状で、病理解剖(剖検)で初めて判明する癌。前立腺・甲状腺に多い。
  • オカルト癌(occult cancer)=転移巣が先に見つかり原発巣が不明・微小なもの。生前に発見される点でラテント癌と異なる。両者の和訳(潜在癌/潜伏癌)は文献で対応が異なるので、英語名と定義で区別する。
  • 早期癌の定義は臓器ごと。胃・大腸では深達度が粘膜下層まで(リンパ節転移の有無は問わない)。TNM分類の病期(ステージ)とは別のものさし。
  • シュニッツラー転移=ダグラス窩(直腸子宮窩・直腸膀胱窩)への腹膜播種。直腸診で触知できる。
  • クルッケンベルグ腫瘍(=クルーケンベルグ。表記ゆれ)=卵巣への転移。両側性・印環細胞癌が特徴で、経路は一義に決まらない。ウィルヒョウ転移=左鎖骨上窩リンパ節へのリンパ行性転移。
比較表
名称主な転移先経路覚えどころ
ウィルヒョウ転移左鎖骨上窩リンパ節リンパ行性胸管を経て左鎖骨上へ。触診で硬いリンパ節
シュニッツラー転移ダグラス窩(直腸子宮窩・直腸膀胱窩)播種性(腹膜播種)腹腔内の最も低い場所に落ちる。直腸診で触れる
クルッケンベルグ腫瘍
(=クルーケンベルグ)
卵巣(両側性が多い)一義に決まらない(腹膜播種のほかリンパ行性・血行性も想定される)印環細胞癌の像。経路が1つに定まらない点が上2つとの違い
用語定義発見のされ方
ラテント癌(latent cancer)生前に症状・所見を示さない癌病理解剖で初めて判明
オカルト癌(occult cancer)原発巣が微小・不明で転移巣が目立つ癌生前に転移巣から発見される
早期癌臓器ごとに定義。胃・大腸では浸潤が粘膜下層までにとどまるもの(リンパ節転移の有無を問わない)内視鏡・生検などで診断

※ラテント癌・オカルト癌の和訳(潜在癌/潜伏癌)は文献により対応が入れ替わるため、英語名と定義で覚える。早期癌のT分類・病期は臓器と深達度で変わる(例:早期胃癌はT1、N0M0ならI期/大腸の粘膜内癌はTisで、N0M0なら0期)。

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