学習トップ理由で解く 柔道整復師生理学 ▸ §3 循環 / QJ25A064

理由で解く 柔道整復師

QJ25A064 生理学

出典:第25回柔道整復師国家試験(2017)午前 問64
問題
心筋の特徴で正しいのはどれか。
選択肢
1 伸展すると発生張力が減少する。
2 心筋細胞同士は電気的に絶縁されている。
3 心筋細胞の興奮の持続時間は神経細胞のそれよりも短い。
4 細胞内に流入するCa2+が増加すると発生張力が増大する。
解答
正解4(細胞内に流入するCa2+が増加すると発生張力が増大する。)
解説

心筋の収縮力は、細胞内に入るCa2+の量でほぼ決まります。したがって「Ca2+流入が増えると発生張力が増す」とする4が正しい記述です。

心筋の活動電位では、脱分極に続いてL型Ca2+チャネルが開き、細胞外からCa2+が流れ込みます。このCa2+が筋小胞体のリアノジン受容体を開かせ、貯蔵Ca2+をさらに放出させます(Ca2+誘発性Ca2+放出)。細胞質のCa2+がトロポニンCに結合するとトロポミオシンがずれ、アクチンとミオシンが結合できるようになるため、Ca2+が多いほど張力は大きくなります。心筋は不応期が長く強縮を起こせないので、骨格筋のように「刺激頻度を上げて力を増す」ことができません。そのぶん収縮力の調節はCa2+動態と伸展(Frank-Starling機構)が担います。ジギタリスが収縮力を高めるのも、Na+/K+-ATPaseを抑えて細胞内Na+を上げ、Na+/Ca2+交換によるCa2+のくみ出しを鈍らせて細胞内Ca2+を増やすためです。

✓ 4. 正しい
細胞内に流入するCa2+が増加すると発生張力が増大する。
流入したCa2+が引き金となって筋小胞体からもCa2+が放出され、トロポニンCに結合する量が増えるほど働ける架橋(クロスブリッジ)が増えます。交感神経刺激やアドレナリンがcAMPを介してL型Ca2+チャネルを開きやすくし、陽性変力作用を示すのもこの経路です。
✗ 1. 誤り
伸展すると発生張力が減少する。
生理的な範囲では逆に増大します。伸展でサルコメア長が最適長に近づくうえ、トロポニンCのCa2+感受性も高まるためです(Frank-Starlingの心臓法則)。静脈還流が増えて心室が大きく充満するほど1回拍出量が増えるのは、この性質が心臓に備わっているからです。
✗ 2. 誤り
心筋細胞同士は電気的に絶縁されている。
心筋細胞は介在板(境界板)にあるギャップ結合でつながり、興奮が細胞から細胞へ直接伝わります。このため心房は心房で、心室は心室で、それぞれが「機能的合胞体」としてまとまって収縮します。逆に絶縁されているのは心房筋と心室筋の境目(線維輪)で、この線維輪を貫いて両者を電気的に結ぶ唯一の通路が、房室結節から続く房室束(ヒス束)です。
✗ 3. 誤り
心筋細胞の興奮の持続時間は神経細胞のそれよりも短い。
逆に長く続きます。神経細胞の活動電位は約1ミリ秒で終わりますが、心室筋はCa2+流入によるプラトー相があるため約200〜300ミリ秒続きます。この長い活動電位に伴って不応期も長くなり、収縮が終わる前に次の興奮が加わらないため強縮が起こりません。拡張期の充満が確保されるという点で、ポンプとして理にかなった性質です。
ポイント
  • 心筋の収縮力=細胞内Ca2+量。L型Ca2+チャネルからの流入→筋小胞体からのCa2+誘発性Ca2+放出→トロポニンCへ結合。
  • 心筋細胞は介在板のギャップ結合でつながり、心房は心房で、心室は心室でそれぞれ機能的合胞体として振る舞う(各々で「全か無かの法則」が成り立つ)。心房筋と心室筋は線維輪で電気的に絶縁され、房室結節から続く房室束(ヒス束)だけが両者を電気的に結ぶ。したがって「心臓全体でひとつの合胞体」ではない。
  • その房室接合部で伝導が遅れるおかげで、心房収縮→心室収縮という順序と充満時間が確保される。
  • 心室筋の活動電位はプラトー相をもち約200〜300ミリ秒。不応期が長いので強縮しない。
  • Frank-Starlingの法則:伸展(前負荷増大)で発生張力・1回拍出量が増える。
  • 心筋は自動能をもち、神経を切っても拍動する。自律神経やホルモンは速さと強さを調節する立場。
比較表
項目心筋骨格筋
活動電位の持続約200〜300ミリ秒(プラトー相あり)約1〜数ミリ秒
細胞間の連絡介在板のギャップ結合でつながる(心房・心室ごとの機能的合胞体。両者の間は線維輪で絶縁され、房室束のみが貫く)1本ずつ独立、神経支配ごとに働く
強縮起こらない(不応期が長い)起こる(刺激頻度で張力を調節)
収縮に使うCa2+細胞外からの流入+筋小胞体からの放出主に筋小胞体から(細胞外流入への依存は小さい)
収縮力の調節細胞内Ca2+量、伸展(Frank-Starling)動員する運動単位数、刺激頻度
自動能あり(洞房結節が歩調取り)なし(運動神経の命令が必要)
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