学習トップ理由で解く 柔道整復師一般臨床医学 ▸ §6 診察各論 触診 / QJ24P028

理由で解く 柔道整復師

QJ24P028 一般臨床医学

出典:第24回柔道整復師国家試験(2016)午後 問28
問題
ウィルヒョウリンパ節転移がみられるのはどれか。
選択肢
1 腋窩リンパ節
2 左鎖骨上窩リンパ節
3 腸骨リンパ節
4 鼡径リンパ節
解答
正解2(左鎖骨上窩リンパ節)
解説

ウィルヒョウ転移とは、腹部内臓の癌が左鎖骨上窩リンパ節に転移したものを指す。正解は2である。

なぜ「左」に限られるのかは、リンパの流れをたどると理解できる。腹腔内の臓器から出たリンパは腸リンパ本幹を経て乳び槽に集まり、そこから胸管という体内最大のリンパ本幹となって胸腔内を上行し、最後に左静脈角(左内頸静脈と左鎖骨下静脈の合流部)で静脈系に注ぐ。胸管のリンパはここで静脈へ直接流れ込むのだが、その終末部のすぐ近くに左鎖骨上窩リンパ節がある。そのため、腹部内臓の癌細胞が胸管を上ってくると、逆行性のリンパ流や近傍の頸リンパ本幹との交通を介してこの部位のリンパ節へ流れ込み、そこに定着しやすい。こうして生じたものがウィルヒョウ転移である。代表は胃癌だが、膵癌・食道癌・大腸癌などでも起こる。触診では左鎖骨上窩に硬く、可動性に乏しい腫瘤として触れる。これは遠隔リンパ節転移であり進行癌を示す所見なので、施術中に頸部・鎖骨上窩に硬いしこりを触れた場合は、揉んだり刺激したりせず、速やかに医療機関の受診を勧める。

✓ 2. 正しい
左鎖骨上窩リンパ節
胸管が左静脈角に開口し、その終末部に左鎖骨上窩リンパ節が隣接するというリンパの解剖により、腹部内臓癌のリンパ行性転移がここに現れる。ウィルヒョウ転移と呼ばれ、胃癌の遠隔転移として古くから知られる。硬く可動性の乏しい無痛性のリンパ節腫大が典型である。
✗ 1. 誤り
腋窩リンパ節
腋窩リンパ節は乳房と上肢からのリンパを受ける。したがって腫大するのは乳癌や上肢の感染・悪性腫瘍のときで、ウィルヒョウ転移の部位ではない。乳癌ではこの腋窩リンパ節の状態が病期や治療方針を左右する重要な所見となる。
✗ 3. 誤り
腸骨リンパ節
腸骨リンパ節は骨盤内に位置し、直腸・膀胱・子宮・前立腺など骨盤内臓器からのリンパを受ける所属リンパ節である。深部にあり体表から触れることはできず、ウィルヒョウ転移とは無関係である。
✗ 4. 誤り
鼡径リンパ節
鼡径リンパ節は下肢・外陰部・臀部・肛門管下部からのリンパを受ける。下肢の外傷や感染、外陰部の悪性腫瘍で腫大するが、腹部内臓癌がたどり着く場所ではない。
ポイント
  • ウィルヒョウ転移=左鎖骨上窩リンパ節転移。代表は胃癌だが膵癌・食道癌などでも起こる。
  • 「左」である理由は、胸管が左静脈角に開口し、その終末部に左鎖骨上窩リンパ節が隣接するという解剖にある。
  • 硬く可動性に乏しい無痛性のリンパ節腫大で、遠隔転移=進行癌のサインである。
  • 胃癌の特徴的な転移として、ウィルヒョウ転移・シュニッツラー転移(ダグラス窩)・クルーケンベルグ腫瘍(卵巣)をセットで覚える。
  • 頸部や鎖骨上窩に硬いしこりを触れたら手技を加えず、医療機関への受診を勧める。
比較表
リンパ節主に受けるリンパの領域腫大が問題になる代表例
左鎖骨上窩リンパ節本来は頭頸部・上肢など。胸管終末部が隣接するため腹部内臓からの癌細胞が流入しうる胃癌などのウィルヒョウ転移
腋窩リンパ節乳房・上肢乳癌、上肢の感染症
腸骨リンパ節骨盤内臓器(直腸・膀胱・子宮・前立腺)骨盤内臓器の癌(深部で触知不能)
鼡径リンパ節下肢・外陰部・臀部・肛門管下部下肢の感染、外陰部の悪性腫瘍
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