学習トップ理由で解く 柔道整復師運動学 ▸ §2 運動器の構造と機能 / QJ24A088

理由で解く 柔道整復師

QJ24A088 運動学

出典:第24回柔道整復師国家試験(2016)午前 問88
問題
神経線維で正しいのはどれか。
選択肢
1 加えられた刺激による興奮は神経線維の一方向に伝導される。
2 1本の神経線維が興奮すると隣接する神経線維に興奮が伝わる。
3 有髄線維はシュワン細胞の細胞膜で幾重にも取り巻かれている。
4 有髄線維の直径が一定でも伝導速度は変化する。
解答
正解3(有髄線維はシュワン細胞の細胞膜で幾重にも取り巻かれている。)
解説

神経線維の伝導は「絶縁性・両側性・不減衰」という三原則に従い、末梢神経の有髄線維の髄鞘はシュワン細胞が軸索に何重にも巻きついてできる。したがって正解は3である。

軸索を人為的に刺激すると、活動電位は刺激した点を中心に前後どちらの向きにも広がっていく(両側性伝導)。生体内で興奮が一方向にしか進まないように見えるのは、シナプスが「軸索終末から次のニューロンへ」の向きにしか伝達できないためであって、神経線維そのものの性質ではない。ここを分けて理解しておくことが、この問題を含め伝導・伝達をめぐる出題を解く土台になる。また個々の線維は神経内膜やシュワン細胞に隔てられており、隣の線維へ興奮が漏れ出ることはない(絶縁性伝導)。末梢神経ではシュワン細胞が軸索の周りを渦巻き状に何重にも巻きつき、その細胞膜が層状に積み重なったものが髄鞘(ミエリン鞘)である。髄鞘は電気的な絶縁層として働くため、電位依存性ナトリウムチャネルが密集する髄鞘の切れ目=ランビエ絞輪でのみ活動電位が発生し、髄鞘に覆われた節間部には局所電流によって受動的(電気緊張的)に電位変化が伝わる。この受動的に伝わった電位変化が次の絞輪を閾値まで脱分極させるので、興奮は絞輪から絞輪へ飛ぶように進む(跳躍伝導)。節間部で何も起きていないわけではなく、節間部では活動電位を作り直す手間を省いている点が速さの本質であり、その結果として伝導速度が大きく上がる。伝導速度は線維の直径にほぼ比例し、太い有髄線維ほど速い(最も太いAα線維で毎秒70〜120m前後、無髄のC線維では毎秒1m前後)。なお中枢神経の髄鞘は乏突起膠細胞(オリゴデンドロサイト)がつくるので、末梢=シュワン細胞と対にして覚えておくとよい。

✓ 3. 正しい
有髄線維はシュワン細胞の細胞膜で幾重にも取り巻かれている。
末梢神経の有髄線維では、シュワン細胞が軸索の周囲を何重にも巻きつき、その細胞膜が幾層にも重なって髄鞘を形成する。この多層構造が絶縁層となることで、活動電位の発生は電位依存性Na⁺チャネルが密集するランビエ絞輪に限られ、節間部は局所電流で受動的に電位が伝わる跳躍伝導が成立し、伝導速度が高まっている。記述のとおりであり、これが正答となる。
✗ 1. 誤り
加えられた刺激による興奮は神経線維の一方向に伝導される。
神経線維の途中を刺激すると、活動電位は刺激点から求心方向・遠心方向の両方へ広がる(両側性伝導)。一方向性なのはシナプス伝達のほうであり、線維の伝導と混同しないよう「線維は両方向、シナプスは一方向」と対で押さえておきたい。
✗ 2. 誤り
1本の神経線維が興奮すると隣接する神経線維に興奮が伝わる。
1本の神経線維の興奮は、束をなして走る隣の線維には伝わらない(絶縁性伝導)。各線維は神経内膜やシュワン細胞に包まれて電気的に隔てられているためで、この性質があるからこそ多数の線維が1本の神経内で混線せずにそれぞれの情報を運べる。
✗ 4. 誤り
有髄線維の直径が一定でも伝導速度は変化する。
有髄線維の伝導速度は直径にほぼ比例し(おおよそ「速度(m/秒)≒直径(μm)×6」の関係)、直径が一定であれば、同一条件下(同じ線維種で、髄鞘が正常、温度が一定)では伝導速度もほぼ一定である。髄鞘の厚さや絞輪間の距離も速度を決める因子だが、これらも直径に応じて決まる量なので、直径と速度の対応関係を崩す要因にはならない。なお体温が低下すると伝導速度は低下し(神経伝導検査で肢温を一定に保つか温度補正を行うのはこのため)、脱髄が起これば直径が変わらなくても著明に遅くなるが、これらは線維の直径とは別次元の要因であり、この設問が問うている直径と速度の関係を否定するものではない。
ポイント
  • 神経伝導の三原則…①絶縁性伝導(隣の線維に漏れない)②両側性伝導(刺激点から両方向へ)③不減衰伝導(距離が延びても振幅が減らない)。選択肢1と2はこの原則から直接切れる。
  • 一方向性はシナプスの性質…神経伝達物質はシナプス前終末からしか放出されないため、伝達は一方向。線維そのものの伝導とは別物として区別する。
  • 髄鞘をつくる細胞…末梢神経はシュワン細胞(1個が1本の軸索の1節分を担当)、中枢神経は乏突起膠細胞(オリゴデンドロサイト、1個が複数の軸索を担当)。
  • 跳躍伝導…電位依存性Na⁺チャネルが密集するランビエ絞輪でのみ活動電位が発生し、髄鞘に覆われた節間部は局所電流によって受動的に電位が伝わる。節間部でも電位変化は起きており、それが次の絞輪を閾値まで脱分極させる。節間部で活動電位を作り直さずに済むことが、有髄線維が無髄線維より格段に速い理由。
  • 伝導速度は直径にほぼ比例…太い有髄線維ほど速い。Aα(骨格筋運動線維、Ia・Ib求心性線維)が最速で毎秒70〜120m前後、無髄のC線維は毎秒1m前後。ただしこの比例関係は温度が一定で髄鞘が正常という同一条件下での話で、低体温や脱髄は直径とは別の要因として伝導速度を低下させる。
比較表
軸索(神経線維)の伝導とシナプス伝達
項目軸索の伝導シナプス伝達
方向両方向(刺激点から前後へ)一方向(前終末→後細胞のみ)
隣接部への波及なし(絶縁性伝導)
信号の減衰なし(不減衰伝導)加重・抑制で大きさが変わる
担い手Na⁺・K⁺チャネルによる活動電位神経伝達物質と受容体
速さ速いシナプス遅延(約0.5ミリ秒)がある
有髄線維と無髄線維
項目有髄線維無髄線維
髄鞘あり(末梢はシュワン細胞の細胞膜が多層に巻く)なし(シュワン細胞に包まれるが巻かない)
ランビエ絞輪ありなし
伝導様式跳躍伝導(Na⁺チャネルが密集する絞輪で活動電位が発生し、節間部は局所電流で受動的に電位が伝わる)連続的な伝導(膜全体で活動電位が順次発生する)
直径・速度太く速い(A・B線維)細く遅い(C線維、毎秒1m前後)
代表例骨格筋運動線維、触圧覚、速い痛み(Aδ)遅い痛み、交感神経節後線維
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