学習トップ理由で解く 柔道整復師生理学 ▸ §13 筋肉の機能 / QJ24A081

理由で解く 柔道整復師

QJ24A081 生理学

出典:第24回柔道整復師国家試験(2016)午前 問81
問題
誘発筋電図で正しいのはどれか。
選択肢
1 M波は後根が切断されても誘発できる。
2 H波は前根が切断されても誘発できる。
3 M波の発生は筋弛緩薬で抑えられない。
4 H波の発生に脊髄は関わらない。
解答
正解1(M波は後根が切断されても誘発できる。)
解説

M波は運動神経を直接刺激して得られる筋の直接応答なので、感覚性の入口である後根を切断しても誘発できる。一方H波は脊髄を経由する単シナプス反射である。

混合神経を経皮的に電気刺激すると、太いIa群求心性線維とα運動線維の両方が興奮する。運動線維を下行した興奮がそのまま神経筋接合部を越えて筋を収縮させたものがM波で、経路が短いぶん潜時も短い。これに対しIa線維を上行した興奮は後根から脊髄へ入り、α運動ニューロンへ単シナプス性に乗り換えて前根を下り、筋へ戻ってくる。これがH波(ホフマン反射)で、遠回りする分だけ潜時が長い。ここで押さえておきたいのは、刺激を加える点が末梢の混合神経であり、前根・後根のいずれよりも遠位にあるという位置関係である。M波は刺激点より遠位の運動軸索を直接下行する応答なので、経路に根のレベルは含まれない。したがってM波の可否を左右するのは後根でも前根でもなく、刺激点から筋までの運動軸索と神経筋接合部が保たれているかどうかである。設問で「どこを切ると消えるか」「何で抑えられるか」を問われたら、まずM波は〈刺激点→運動神経→神経筋接合部→筋〉、H波は〈刺激点→Ia線維→後根→脊髄→前根→運動神経→神経筋接合部→筋〉と道筋を紙に描き、切断部位がその経路上にあるかを目で確かめる。両者とも神経筋接合部を必ず通る点も忘れずに押さえたい。

✓ 1. 正しい
M波は後根が切断されても誘発できる。
M波の経路に後根は含まれない。刺激点から運動神経を直接下行して筋に達する応答なので、感覚路である後根を切っても影響を受けず誘発できる。逆にH波は求心路が後根を通るため、後根切断で消失する。この一対で覚えると判定が速い。
✗ 2. 誤り
H波は前根が切断されても誘発できる。
前根は運動線維が脊髄を出る出口であり、H波の「帰り道」そのものである。ここが切断されると脊髄で乗り換えた興奮が筋へ届かず、H波は誘発できない。一方M波の経路に前根は含まれないため、前根を切ってもM波自体は誘発できる。刺激点は前根より遠位の末梢混合神経にあり、そこから筋までの運動軸索は前根を通らないからである(切断後、日単位でWaller変性=軸索変性が進めばM波は次第に低下するが、それは「興奮が筋へ届かない」のではなく軸索そのものが失われるためである)。急性期に残るか/時間経過で落ちるかを分けて理解しておく。
✗ 3. 誤り
M波の発生は筋弛緩薬で抑えられない。
M波も神経筋接合部でのアセチルコリン伝達を経て初めて筋が収縮する。非脱分極性筋弛緩薬(クラーレ様薬)で終板のニコチン性アセチルコリン受容体が遮断されれば、M波は減弱・消失する。「直接応答」という語感につられて接合部を飛ばさないよう注意する。
✗ 4. 誤り
H波の発生に脊髄は関わらない。
H波はIa求心性線維からα運動ニューロンへ乗り換える単シナプス反射であり、その乗り換えの場が脊髄である。腱反射(伸張反射)と同じ回路を、腱を叩く代わりに電気刺激で起こしたものと理解するとよい。
ポイント
  • M波=運動神経の直接刺激による筋の応答。経路が短く潜時が短い。
  • H波=Ia線維→後根→脊髄で単シナプス性に乗り換え→前根→筋。潜時が長い、腱反射の電気版。
  • 後根切断:M波は残る/H波は消える。前根切断:H波は消える(M波は経路外なので残る。ただし切断後に軸索変性が進めば低下する)。
  • 両者とも神経筋接合部を通るので、非脱分極性筋弛緩薬でどちらも抑制される。
  • 刺激を強めるとM波は増大するが、H波は逆行性の興奮との衝突でむしろ減少する。
比較表
項目M波H波(ホフマン反射)
興奮する線維α運動線維(遠心性)Ia群求心性線維
経路運動神経→神経筋接合部→筋後根→脊髄(単シナプス)→前根→筋
潜時短い長い
後根切断誘発できる消失する
前根切断誘発できる(急性期。のちに軸索変性で低下)消失する
筋弛緩薬抑制される抑制される
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