学習トップ理由で解く 柔道整復師生理学 ▸ §1 総論 / QJ24A062

理由で解く 柔道整復師

QJ24A062 生理学

出典:第24回柔道整復師国家試験(2016)午前 問62
問題
代謝性アルカローシスをきたすのはどれか。
選択肢
1 呼吸量減少による O2の減少
2 下痢によるHCO3-の喪失
3 嘔吐による胃酸の喪失
4 糖尿病によるケトン体の増加
解答
正解3(嘔吐による胃酸の喪失)
解説

酸塩基平衡の異常は、まず「呼吸(CO2)が原因か、代謝(H+・HCO3-)が原因か」で二分する。胃酸を吐いて失うことは体からH+を抜き取ることに等しく、代謝性アルカローシスになる。

体液のpHは炭酸-重炭酸緩衝系で保たれ、おおまかにはHCO3-(腎・代謝側)とCO2(肺・呼吸側)の比で決まる。分母のCO2が一次的に動けば呼吸性、分子のHCO3-あるいはH+が一次的に動けば代謝性である。アルカローシスは「HCO3-が増える」か「H+が減る」ときに生じる。胃液は壁細胞がH+とCl-を分泌して作られる強酸性の液で、嘔吐でこれを失えば血中のH+が減り、相対的にHCO3-が余ってpHはアルカリ側へ傾く。選択肢を読むときは、一つずつ「体のH+は増えるか減るか」「CO2が主役か否か」の2点だけを判定していくと迷いにくい。

✓ 3. 正しい
嘔吐による胃酸の喪失
胃液中のHCl(H+)が体外へ失われるため、血中はH+不足=HCO3-過剰の状態となり、代謝性アルカローシスをきたす。幽門狭窄や反復する嘔吐で典型的にみられ、Cl-とK+も一緒に失われるので低クロール性・低カリウム性の像を伴いやすい。嘔吐が続く人を見たら、脱水と低カリウム血症の徴候(脱力・不整脈)まで確認し、医療機関での輸液・電解質補正につなげる。
✗ 1. 誤り
呼吸量減少による O2の減少
換気が減ると酸素が取り込めないと同時に、CO2が肺から排出されず貯留する。CO2は水と反応して炭酸になる揮発性の酸なので、体内の酸が増えて呼吸性アシドーシスとなる。低酸素は換気低下の結果の一つだが、pHを直接動かしているのはCO2の側だと押さえる。
✗ 2. 誤り
下痢によるHCO3-の喪失
膵液や腸液はHCO3-に富むアルカリ性の消化液で、下痢で大量に失うと緩衝の要であるHCO3-が減り、代謝性アシドーシスに傾く。「上(嘔吐)から酸を失えばアルカローシス、下(下痢)からアルカリを失えばアシドーシス」と向きを対にして覚えるとよい。
✗ 4. 誤り
糖尿病によるケトン体の増加
インスリン作用が不足すると糖を使えず脂肪分解が進み、アセト酢酸やβ-ヒドロキシ酪酸といった酸性代謝物(ケトン体)が蓄積する。不揮発性の酸が増えるので糖尿病ケトアシドーシス、すなわち代謝性アシドーシスである。代償として深く速いクスマウル呼吸が現れ、CO2を吐き出してpHを戻そうとする。
ポイント
  • pHはHCO3-とCO2の比で決まる。CO2が主役なら呼吸性、HCO3-・H+が主役なら代謝性。
  • 嘔吐=胃酸(H+)を失う → 代謝性アルカローシス。低Cl・低Kを伴いやすい。
  • 下痢=HCO3-を失う → 代謝性アシドーシス。嘔吐とちょうど逆向き。
  • 換気低下→CO2貯留→呼吸性アシドーシス/過換気→CO2低下→呼吸性アルカローシス。
  • ケトアシドーシス・腎不全・乳酸蓄積はいずれも代謝性アシドーシス側に並ぶ。
比較表
病態一次的に動くものpHの向き分類
嘔吐(胃酸喪失)H+が減るアルカリ側代謝性アルカローシス
下痢(腸液喪失)HCO3-が減る酸性側代謝性アシドーシス
糖尿病ケトーシス不揮発性の酸が増える酸性側代謝性アシドーシス
換気量減少CO2が増える酸性側呼吸性アシドーシス
過換気CO2が減るアルカリ側呼吸性アルカローシス
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