
この図の解説
副腎皮質束状帯から分泌されるコルチゾル(コルチコステロン)には、炎症の進行を抑える抗炎症作用があり、治療にも用いられる。図はその作用点を炎症カスケードの中で示している。まず注目すべきは、上流の「外傷・感染→細胞膜のリン脂質が破損」という入口だ。ここで働く酵素がホスホリパーゼA2で、破損したリン脂質から遊離アラキドン酸を切り出す。ステロイド剤(コルチゾル)はこのホスホリパーゼA2を抑制する。カスケードの最上流を止めるため、下流でつくられる炎症物質がまとめて減る点が最大のポイントだ。遊離アラキドン酸から先は2経路に分かれる。左のシクロオキシゲナーゼ経路はPGG2→PGH2を経てPGE2(発熱・炎症促進・痛み増強)、PGI2、TXA2(血小板凝集・血管収縮)へ進む。右の5-リポキシゲナーゼ経路はロイコトリエン(気管支収縮・血管拡張・血管透過性亢進)を生む。図の赤字が示すもう一つの薬剤NSAIDs(アスピリンなど)はシクロオキシゲナーゼだけを抑制する。つまりステロイドとNSAIDsで抑える位置が違うことを図から読み取ってほしい。
学習の要点
- コルチゾル(副腎皮質ホルモン)は抗炎症作用をもち、炎症カスケードの最上流ホスホリパーゼA2を抑制して炎症物質全体を減らす。
- 覚え方のコツ: 「ステロイドは上、NSAIDsは下」。ホスホリパーゼA2(上流)を止めるのがステロイド、シクロオキシゲナーゼ(下流)を止めるのがNSAIDs。
- 関連知識: ホスホリパーゼA2が切り出すアラキドン酸は、シクロオキシゲナーゼ経路でプロスタグランジン類、5-リポキシゲナーゼ経路でロイコトリエンへ分岐する。
- よくある間違い: コルチゾルとNSAIDsの抑制点を混同しやすい。コルチゾルは両経路の共通上流を、NSAIDsはシクロオキシゲナーゼ経路のみを抑える。
- 臨床応用: ステロイドは上流を止めるためプロスタグランジンとロイコトリエンの両方を減らし、気管支収縮を伴う喘息などにも用いられる。
比較表
確認問題(その場で確認・記録には残りません)
細胞膜のリン脂質が破損すると、ホスホリパーゼA2の働きで( )が遊離し、これがシクロオキシゲナーゼ経路と5-リポキシゲナーゼ経路の共通の材料となる。空欄に入る語を答えよ。
答えを見る
答え: アラキドン酸
※ 確認問題はその場の理解確認用で、復習スケジュール(FSRS)には記録されません。