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理由で解く 作業療法士

QO56A008 作業療法治療学

出典:第56回作業療法士国家試験(2021)午前 問8
問題
65歳の男性。右利き。左中大脳動脈領域の脳梗塞による右片麻痺。Brunnstrom法ステージは上肢、手指および下肢ともにIV。この時の椅子座位での右上肢訓練プログラムとして適切でないのはどれか。2つ選べ。
図
選択肢
1 組んだ両手でテーブル上のボールを前方に転がす。
2 組んだ両手を挙上してペグを把持する。
3 上肢を下垂して手部で床上のボールを転がす。
4 前方にあるペグを把持して抜く。
5 机上にある輪をつまみあげる。
解答
正解2(組んだ両手を挙上してペグを把持する。)、5(机上にある輪をつまみあげる。)
解説

BrunnstromステージIVは痙縮がやや弱まり、共同運動から外れた分離運動が一部できる時期。上肢は手を腰の後ろへ回す・肘伸展位での前方水平挙上・肘90°屈曲位での前腕回内外まで、手指は横つまみまでができる。頭上への挙上や指尖つまみはステージV以上を要する。

Brunnstrom回復ステージIVは、ピークを過ぎた痙縮がやや弱まり、共同運動パターンから外れた分離運動が部分的に出せるようになる段階である。上肢では手を腰の後ろへ回す、肘を伸ばしたまま上肢を前方へ水平に挙げる、肘90°屈曲位で前腕を回内外する、までが目安で、手指は横つまみ(側方つまみ)ができ、指を離すのはわずかにできる程度である。頭上まで挙上する、指尖つまみ(対向つまみ)で細かいものをつまむ、といった課題はステージV以上を要するため、この時期には成功体験につながらない。したがって椅子座位での上肢課題は、肩の挙上を求めず机上の高さで行えるリーチ、粗大な把持、健側の介助を利用した両手動作を組み合わせるのが妥当である。

✗ 1. 正しい
組んだ両手でテーブル上のボールを前方に転がす。
健側の介助を利用したテーブル上のリーチ課題。挙上や指尖つまみを要さずステージIVで実施でき適切(正しい訓練)
✓ 2. 誤り
組んだ両手を挙上してペグを把持する。
頭上への挙上位で把持まで求める課題はステージV以上の分離運動を要し、IVでは実施困難で適切でない(本問の正解)
✗ 3. 正しい
上肢を下垂して手部で床上のボールを転がす。
上肢下垂位は抗重力の負担が少なく、共同運動レベルからでも行える課題でステージIVに適切(正しい訓練)
✗ 4. 正しい
前方にあるペグを把持して抜く。
前方へのリーチと粗大な把持はステージIVで可能な範囲の課題であり適切(正しい訓練)
✓ 5. 誤り
机上にある輪をつまみあげる。
輪をつまみ上げるには指尖つまみが必要。手指ステージIVは横つまみまでで指尖つまみは困難であり適切でない(本問の正解)
本問は第56回作業療法士国家試験(2021)午前 問8の実際の出題ですが、厚生労働省により「設問の状況設定が不十分であり、正解が得られないため」として採点除外とされた問題です。原問はBrunnstrom法ステージIIIの症例に「正しい訓練プログラム」を1つ選ばせる形でしたが、選択肢1〜5はいずれもステージIV以上の能力を前提とする課題で、当てはまる正答が1つも存在しませんでした。そこで演習として成立させるため、当方で設問を「Brunnstrom法ステージは上肢・手指・下肢ともにIII。…正しいのはどれか。」→「Brunnstrom法ステージは上肢・手指・下肢ともにIV。…適切でないのはどれか。2つ選べ。」に改めました(あわせて、図中のキャプションと同一の文言を選択肢本文として補記しています。図そのものは原問のままです)。改変後は、頭上への挙上を要する2と指尖つまみを要する5がステージIVでは実施困難となり、正答が2・5に定まります。
ポイント
  • ステージIVは痙縮がやや弱まり分離運動が一部できる時期
  • 上肢は腰の後ろへ手を回す・肘伸展位で前方水平挙上・前腕回内外まで
  • 手指は横つまみまで。指尖つまみと頭上挙上はステージV以上
比較表
Brunnstromステージと上肢の特徴
ステージ上肢の状態
II連合反応・共同運動が出現し始める
III痙縮最強・共同運動が随意的に可能
IV共同運動から外れた分離運動が一部可能
V分離運動が進み痙縮が減少
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