
この図の解説
この図は手関節部を横に切った断面で、手のひら側(掌側)を上、手の甲側(背側)を下に描いている。まず注目すべきは掌側の中央を弓なりに横断する帯状の構造、屈筋支帯である。手根骨は掌側にくぼんだアーチ(手根溝)をつくり、橈側の舟状骨・大菱形骨と尺側の豆状骨・有鉤骨がそれぞれ隆起をつくる。この二つの隆起を橋渡しするように屈筋支帯が張り、溝にふたをして筒状のトンネルをつくる。これが手根管である。管の中に黄色く示された正中神経と、その周囲の白い断面(長母指屈筋腱・浅指屈筋腱・深指屈筋腱)が通っている点を確認したい。一方、屈筋支帯の浅層(尺側寄り)にはオレンジで示された尺骨動脈と尺骨神経が別のトンネル(ギヨン管)を通る。手根管の内容と支帯浅層を走るものの区別が、この図の学習の核心である。なお図下の解説枠には、橈側手根屈筋の腱が途中から屈筋支帯を貫いて独自の部位を走るため、手根管を通るものに含める説と含めない説がある点も示されている。
学習の要点
- 手根管は「屈筋支帯」と「手根骨(手根溝)」の間にできたトンネル状の空間。屈筋支帯が屋根、手根骨のアーチが床にあたる。
- 手根管を通るのは正中神経・浅指屈筋腱・深指屈筋腱・長母指屈筋腱の4つ。神経は正中神経ただ1本である。
- 覚え方のコツ:「正中と、浅・深・長母の屈筋腱」。長掌筋腱と尺骨神経・尺骨動脈は手根管を通らず、屈筋支帯の浅層を走ると覚える。
- 関連知識: 屈筋支帯の浅層を尺骨神経・尺骨動脈が通る通路を尺骨神経管(ギヨン管)という。橈側手根隆起は舟状骨・大菱形骨、尺側手根隆起は豆状骨・有鉤骨がつくる。
- よくある間違い: 尺骨神経を手根管の内容に含めてしまう誤り。尺骨神経はギヨン管(支帯の浅層)で、手根管の中ではない。
- 発展(図の注目点): 橈側手根屈筋の腱は途中から屈筋支帯を貫き、他の屈筋腱から少し離れた独自の部位を走る。このため手根管を通るものに「含める場合」と「含めない場合」があり、鍼灸の国家試験で手根管を通るものとして橈側手根屈筋が選択肢に挙げられたことがある。
- 臨床応用: 手や指の使いすぎで手根管内の腱鞘が腫脹すると正中神経が圧迫され、母指球筋の麻痺や母指側の感覚異常が生じる(手根管症候群)。進むと母指・示指が伸びたままの猿手を呈する。
比較表
確認問題(その場で確認・記録には残りません)
手根管は、手根骨のアーチ(手根溝)と、その掌側を橋渡しする( )との間にできたトンネル状の空間である。空欄に入る語を答えよ。
答えを見る
答え: 屈筋支帯
※ 確認問題はその場の理解確認用で、復習スケジュール(FSRS)には記録されません。