学習トップ理由で解く 作業療法士第11章 ▸ 実地 / QO53A006

理由で解く 作業療法士

QO53A006 作業療法評価学

出典:第53回作業療法士国家試験(2018)午前 問6
問題
手の写真①~⑤を図に示す。上腕骨骨幹部骨折による神経麻痺によって生じやすいのはどれか。
図
選択肢
1
2
3
4
5
解答
正解4(4)
解説

上腕骨骨幹部骨折では橈骨神経(橈骨神経溝を走行)が最も損傷を受けやすく、手関節背屈・手指MP伸展が不能となる「下垂手(drop hand)」を生じる。正中神経麻痺=猿手、尺骨神経麻痺=鷲手と混同しないこと。下垂手の鑑別の要は「手関節の背屈不能(前腕挙上位で手が手関節から垂れる)」で、MP関節主体の手内筋麻痺肢位とは区別する。

上腕骨骨幹部(中央部)は橈骨神経が上腕骨後面の橈骨神経溝を走行するため、骨折時に橈骨神経が最も損傷を受けやすい。橈骨神経は手関節伸筋群(長・短橈側手根伸筋、尺側手根伸筋)と手指・母指の伸筋群を支配するため、麻痺すると手関節の背屈と手指MP関節の伸展ができなくなり、前腕を挙上して保持すると手が手関節部でだらりと垂れ下がる「下垂手(drop hand)」を呈する。これが④に相当し、正答となる。他の選択肢は別の神経・病態による手の変形で、①はMP関節伸展・手内筋萎縮(頸髄損傷や腕神経叢損傷による手内在筋麻痺の肢位)、②は尺骨神経麻痺による鷲手(環指・小指のMP過伸展+IP屈曲)、③は正中神経麻痺による猿手(母指球萎縮・母指内転位・対立不能)、⑤は脳卒中など上位運動ニューロン障害による手関節掌屈位(痙性肢位)である。①も手が垂れて見えるが、①の障害の主座はMP関節(手内筋)で手関節背屈は保たれるのに対し、下垂手の本質は手関節背屈不能であり、前腕を挙上した肢位で手関節から手全体が垂れる④が下垂手に合致する。

✗ 1. 誤り
① MP関節伸展・手内筋萎縮(intrinsic minus肢位):手内在筋麻痺による肢位で、C5以上の頸髄損傷やC6〜8の腕神経叢(広範)損傷でみられる。手関節の背屈は保たれ、障害の主座はMP関節(手内筋)にあり、上腕骨骨幹部骨折の橈骨神経麻痺とは病態が異なる
✗ 2. 誤り
② 鷲手(claw hand):尺骨神経麻痺による。骨間筋・虫様筋(特に環指・小指)の萎縮で、環指・小指のMP関節が過伸展しIP関節が屈曲する鉤爪様変形。橈骨神経麻痺ではない
✗ 3. 誤り
③ 猿手(ape hand):正中神経麻痺による。母指球(短母指外転筋など)の萎縮、母指内転位、母指と他指の対立運動不能が特徴。橈骨神経麻痺ではない
✓ 4. 正しい
④ 下垂手(drop hand):上腕骨骨幹部骨折で最も損傷を受けやすい橈骨神経の麻痺による。手関節の背屈と手指MP関節の伸展が不能となり、前腕を挙上して保持すると手が手関節で垂れ下がる。本問の正答
✗ 5. 誤り
脳卒中など上位運動ニューロン障害でみられる痙性肢位(Wernicke-Mann肢位)で、末梢神経麻痺による変形ではない
ポイント
  • 上腕骨骨幹部骨折→橈骨神経麻痺(橈骨神経溝を走行)
  • 橈骨神経麻痺=下垂手(手関節・手指の伸展不能)
  • 正中神経=猿手、尺骨神経=鷲手と区別
比較表
上肢末梢神経麻痺の特徴的肢位
神経特徴的肢位代表的原因
橈骨神経下垂手上腕骨骨幹部骨折
正中神経猿手手根管症候群など
尺骨神経鷲手肘部管症候群など
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