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理由で解く 臨床医学各論

Q27H077 神経疾患

出典:鍼灸 第27回(2019) 問題77
問題
「80歳の男性。1年前から夜間に人や子どもが見え、本当に人がいるように話しかけることもある。半年前から次第に動作が鈍くなってきた。最近は物忘れも出現している。」本症例で動作が鈍くなってきた原因として正しいのはどれか。
選択肢
1 下肢筋力の低下
2 歩行失行
3 パーキンソニズム
4 深部感覚障害
解答
正解3(パーキンソニズム)
解説

夜間にくり返す幻視(人や子どもが見える)、半年で進んだ動作の鈍さ、あとから現れた物忘れという並びは、レビー小体型認知症を強く思わせます。ここでいう動作の鈍さは、筋強剛と寡動を柱とするパーキンソニズムによるものです。

筋強剛(固縮)・振戦・寡動という運動症状のまとまりをパーキンソニズムと呼びます。最も多い原因はパーキンソン病で、黒質線条体系の変性によるドパミンの減少を背景に、この3主徴と姿勢保持障害を示します。同じ運動症状はパーキンソン病以外でも現れ、それらをまとめてパーキンソン症候群と呼びます。脳血管障害や薬剤などで起こる二次性(症候性)のものと、レビー小体型認知症・多系統萎縮症・進行性核上性麻痺といった神経変性疾患によるものがあります。なかでもレビー小体型認知症は、パーキンソン病と同じくレビー小体がたまる病気です。本症例は「力が出ない」のではなく「動き出しが遅く、動作全体が緩慢になる」形で進んでおり、これは筋力そのものの低下でも、感覚の障害でもありません。レビー小体型認知症では、幻視・パーキンソニズム・認知機能の低下がそろって現れ、物忘れよりも幻視や動作の鈍さが先に立つことが少なくない点が、物忘れから始まることが多いアルツハイマー型との違いになります。

✗ 1. 誤り
下肢筋力の低下
筋力低下は、上位運動ニューロン(錐体路)の障害でも、下位運動ニューロンや筋そのものの障害でも、また使わないことによる廃用でも起こりますが、いずれも立ち上がれない・段差が上がれないといった「力が出ない」訴えになります。本症例は力が出ないのではなく、動き出しが遅く動作が緩慢になる形で進んでおり、幻視を伴って進む経過とも結びつきません。
✗ 2. 誤り
歩行失行
失行は麻痺がないのに目的とする動作がうまくできない状態で、歩行失行は正常圧水頭症のように歩き出しの一歩が組み立てられなくなる型の歩行障害として問題になります。本症例は認知機能の低下と動作の障害という点では正常圧水頭症とも紛らわしいのですが、1年前から先行している幻視は正常圧水頭症では説明できません。加えて、障害されているのは歩行だけでなく動作全般に及んでおり、歩行失行では説明がつきません。
✓ 3. 正しい
パーキンソニズム
パーキンソニズムは筋強剛(固縮)・振戦・寡動を柱とする運動症状のまとまりで、寡動によって動作の開始が遅れ、一つひとつの動きが小さく鈍くなります。幻視と物忘れを伴って半年単位で進行した本症例の動作緩慢は、これによるものと考えるのが妥当です。
✗ 4. 誤り
深部感覚障害
深部感覚は筋・腱・関節からの情報で、後索を上行して伝えられます。その障害では自分の手足の位置がわからずふらつく(暗いところや閉眼で悪化する)失調が前面に出ます。動作の速度が一様に落ちる本症例の像とは異なります。
ポイント
  • パーキンソン病の3主徴は筋強剛(固縮)・振戦・寡動で、姿勢保持障害を伴う。背景は黒質線条体系の変性によるドパミンの減少。
  • 筋強剛・振戦・寡動のまとまりがパーキンソニズム。最も多い原因はパーキンソン病。パーキンソン病以外のもの(脳血管障害・薬剤による二次性のもの、レビー小体型認知症などの神経変性疾患)をパーキンソン症候群という。
  • 「動作が鈍い」を見たら、力が出ない(筋力低下)・動作が組み立てられない(失行)・位置がわからずふらつく(深部感覚障害)と区別して考える。
  • 幻視+パーキンソニズム+認知機能低下の組合せはレビー小体型認知症を示唆する。認知症の主な原因疾患はアルツハイマー型・血管性・レビー小体型・前頭側頭型。
  • 重要用語: パーキンソニズム, 寡動, 筋強剛(固縮), レビー小体型認知症, 幻視 を正確に理解しておくこと。
比較表
動きにくさの型おもな原因特徴
パーキンソニズム(寡動・筋強剛)パーキンソン病、レビー小体型認知症、薬剤性 など動作の開始が遅く動きが小さい。歯車現象・鉛管現象、小刻み歩行
筋力低下上位運動ニューロン(錐体路)障害、下位運動ニューロン障害、筋疾患、廃用力が出ない。下位運動ニューロン障害や筋疾患では筋萎縮を伴うことがある
失行(歩行失行など)正常圧水頭症、大脳(前頭葉・頭頂葉)の病変(脳血管障害など)麻痺がないのに動作が組み立てられない。失行は高次脳機能障害の一つ。正常圧水頭症では歩行障害に尿失禁を伴う
深部感覚障害後索の障害位置覚が失われ、閉眼や暗所でふらつきが強まる
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