学習トップ / 理由で解く 臨床医学各論 / 第11章 ▸ F. 認知症性疾患 / Q27H078

理由で解く 臨床医学各論

Q27H078 神経疾患

出典:鍼灸 第27回(2019) 問題78
問題
「80歳の男性。1年前から夜間に人や子どもが見え、本当に人がいるように話しかけることもある。半年前から次第に動作が鈍くなってきた。最近は物忘れも出現している。」本症例でさらに確認すべき症状はどれか。
選択肢
1 物盗られ妄想
2 認知機能の日内変動
3 症状の階段状の悪化
4 欲動的な行動
解答
正解2(認知機能の日内変動)
解説

同じ症例の続きで、疑っている病態を裏づける所見を一つ選ぶ問題です。幻視とパーキンソニズムに認知機能の低下が重なるレビー小体型認知症では、認知機能が日によって・時間によって大きく揺れる「変動」も中核的特徴の一つであり、その有無を確認することで診断がさらに裏づけられます。

認知症では、記憶障害・見当識障害・実行機能障害といった中核症状に加え、妄想・幻覚・徘徊・夜間せん妄などの行動・心理症状(BPSD)が現れます(幻覚は一般にBPSDに数えますが、レビー小体型認知症の幻視はくり返し現れて診断の手がかりになる点が違います)。どの症状が前に出るか・どのように進むかは原因疾患ごとに違い、アルツハイマー型では物盗られ妄想がしばしばみられ、血管性では脳梗塞・脳出血が起こるたびに階段状に悪化し、前頭側頭型では抑えのきかない行動が目立ちます。これに対し本症例のように幻視と動作の鈍さが先行する型では、しっかり話せる時間帯とぼんやりして反応が鈍い時間帯が同じ日のうちに入れ替わる変動を確認します。なお、せん妄も日内変動と幻視を示しますが、数時間から数日で急性に始まり、意識のくもりを伴う一過性の状態である点が異なります。本症例は1年をかけて幻視・動作の鈍さ・物忘れが順に加わる慢性の経過であり、その中で認知機能が揺れるかどうかを、介護者に「日によって・時間によって受け答えの様子が変わりますか」と尋ねて確かめます。

✗ 1. 誤り
物盗られ妄想
物盗られ妄想は認知症の行動・心理症状(BPSD)の一つである妄想の代表で、とくにアルツハイマー型で問題になりやすい症状です。本症例で先行しているのは幻視と動作の鈍さであり、この訴えを確認しても幻視・パーキンソニズムが並ぶ像の裏づけにはなりません。
✓ 2. 正しい
認知機能の日内変動
認知機能の日内変動は、同じ日のうちでもはっきりしている時間帯とぼんやりする時間帯が入れ替わる状態で、幻視とパーキンソニズムを伴うレビー小体型認知症で確認すべき所見です。幻視・動作の鈍さ・物忘れという本症例の並びに、この変動が加わるかどうかが鑑別を進める鍵になります。
✗ 3. 誤り
症状の階段状の悪化
階段状の悪化は、脳梗塞や脳出血が起こるたびに段差をつけて機能が落ちる血管性認知症の進み方です。本症例は1年前の幻視から半年前の動作緩慢、最近の物忘れへと連続的に進んでおり、発作ごとに区切られる経過ではありません。
✗ 4. 誤り
欲動的な行動
欲動的な行動とは、その場の欲求のままにふるまい、抑えがきかなくなる状態(脱抑制)をいいます。これが前面に出るのは前頭側頭型認知症で、人格や社会的なふるまいの変化が早くから目立ちます。本症例で最初に現れたのは幻視と動作の鈍さであり、この方向の確認は優先度が低くなります。
ポイント
  • レビー小体型認知症の中核的特徴は、認知機能の変動・くり返す幻視・レム期睡眠行動異常症(睡眠中に夢に合わせて叫ぶ・暴れる)・パーキンソニズムの4つ(2017年改訂)。幻視とパーキンソニズムが先行する本症例では、認知機能の日内変動や睡眠中の異常行動の有無を介護者に確認する。
  • 認知症の主な原因疾患はアルツハイマー型(最多)・血管性・レビー小体型・前頭側頭型。進行の様式(緩徐に進むか階段状か)が鑑別の手がかりになる。
  • 物盗られ妄想は行動・心理症状(BPSD)の妄想の代表で、アルツハイマー型でしばしばみられる。
  • せん妄も日内変動と幻視を示すが、急性に始まり意識のくもりを伴う一過性の状態である。慢性の経過の中で揺れるかどうかで区別する(認知症でも夜間せん妄は合併しやすい)。
  • 欲動的な行動(脱抑制)=その場の欲求のままにふるまい抑えがきかない状態で、前頭側頭型認知症の人格変化として目立つ。
  • 重要用語: 認知機能の日内変動, レビー小体型認知症, せん妄, 物盗られ妄想, 脱抑制(欲動的な行動) を正確に理解しておくこと。
比較表
原因疾患目立つ症状進み方
レビー小体型認知症幻視、パーキンソニズム、認知機能の日内変動、レム期睡眠行動異常症緩やかに進行
アルツハイマー型認知症記憶障害が先行、物盗られ妄想緩やかに進行
血管性認知症脳梗塞・脳出血に伴う神経症状発作のたびに階段状に悪化
前頭側頭型認知症人格変化、抑えのきかない行動(脱抑制)緩やかに進行
せん妄(認知症とは別の状態)意識のくもり、幻視、日内変動数時間から数日で急性に始まり一過性
この問題の解説の修正を依頼する

解説に誤り・改善点があればお知らせください。件名と本文は自動入力済みです(編集できます)。お名前・メールアドレスは任意です。送信内容は玄康株式会社(黒澤一弘)に届きます。

この問題をアプリで理由で解く 臨床医学各論
App Store入手