学習トップ理由で解く 臨床医学各論第11章 ▸ A. 脳血管疾患 / Q1073

理由で解く 臨床医学各論

Q1073 神経疾患

出典:鍼灸 第11回(2003) 問題86
問題
下方あるいは鼻先を見つめるような眼球共同偏視をきたす出血部位はどれか。
選択肢
1 視床
2
3 小脳
4 被殻
解答
正解1(視 床)
解説
✓ 1. 正しい
視床
視床出血では下方あるいは鼻先を見つめるような眼球共同偏視(内下方偏視)が特徴的かつ診断的価値の高い所見である。視床は中脳上丘の上方注視中枢と密接な解剖学的関係にあり、視床出血により上方注視中枢が圧迫・障害されることで上方注視麻痺が生じ、眼球が内下方に偏位する。視床出血ではこの他に対側の感覚障害(全感覚の障害)、意識障害、視床痛(回復期に出現する強い自発痛)がみられる。
✗ 2. 誤り
橋出血では眼球が正中位に固定されるか、健側への共同偏視がみられる(病巣と反対側を向く)。これは橋の側方注視中枢(PPRF: 傍正中橋網様体)が障害されるためである。橋出血の特徴的所見として両側の著明な縮瞳(pinpoint pupil)があり、急速に進行する意識障害、四肢麻痺、高熱を呈し予後は極めて不良である。橋出血は保存療法のみで外科的治療の適応はない。
✗ 3. 誤り
小脳
小脳出血では眼球の共同偏視は通常みられず、病巣側への注視麻痺や注視眼振が出現することがある。主症状は突然の回転性めまい、激しい嘔吐、起立・歩行困難(体幹失調)であり、意識は比較的保たれることが多い。ただし小脳腫脹による脳幹圧迫が進行すると急速に意識障害が悪化するため、緊急の外科的減圧術が必要となる。
✗ 4. 誤り
被殻
被殻出血(脳出血の最多部位で約40%)では病巣側への共同偏視がみられる(「病巣を見つめる」)。これは大脳半球の前頭眼野が障害されるためであり、視床出血の内下方偏視とは方向が異なる。被殻出血では対側の片麻痺(運動障害が主体)、同名半盲が出現し、優位半球では失語を伴うことがある。
ポイント
  • 視床出血=内下方偏視(鼻先を見つめる)、被殻出血=病巣側偏視、橋出血=正中位固定または健側偏視という眼球偏視の方向の違いが出血部位の鑑別に極めて重要である
  • 橋出血の縮瞳(pinpoint pupil)、小脳出血のめまい・嘔吐、被殻出血の対側片麻痺など、各出血部位に特徴的な随伴症状も把握する
  • 脳出血の頻度は被殻(約40%)>視床>皮質下>小脳>橋の順であり、いずれもCT検査で高吸収域として描出される
  • 重要用語: 視床出血の内下方偏視、共同偏視の方向、出血部位の鑑別、pinpoint pupil を正確に理解しておくこと。
比較表
出血部位 眼球偏視 特徴的所見 頻度
被殻 病巣側偏視 対側片麻痺(運動障害主体) 最多(約40%)
視床 内下方偏視(鼻先注視) 対側感覚障害、視床痛 2番目
正中位固定/健側偏視 両側縮瞳(pinpoint pupil)、四肢麻痺
小脳 偏視なし(注視眼振) めまい、嘔吐、体幹失調
解説画像
鍼灸 第11回(2003) 問題86|下方あるいは鼻先を見つめるような眼球共同偏視をきたす出血部位はどれか。 解説図
鍼灸 第11回(2003) 問題86|下方あるいは鼻先を見つめるような眼球共同偏視をきたす出血部位はどれか。
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