学習トップ理由で解く 臨床医学各論第8章 ▸ H. 外傷 / Q0805

理由で解く 臨床医学各論

Q0805 整形外科疾患

出典:鍼灸 第33回(2025) 問題84
問題
次の症例について、「17歳の男子。バイク走行中に転倒し救急搬送。ヘルメットの右外側に傷があり、右肩に外傷がある。右上肢は自動運動不能で知覚異常を認めた。意識は清明、独歩可能、脳神経に異常はない。」身体所見では肘の屈曲・手関節の背屈が不能で、手指の屈曲もできない。上肢の骨折や関節の脱臼はない。損傷部位はどれか。
選択肢
1 側頸部
2 腋窩部
3 上腕部
4 肘部
解答
正解1(側頸部)
解説
✓ 1. 正しい
側頸部
損傷部位は側頸部である。本症例では肘屈曲不能(筋皮神経C5-C6支配の上腕二頭筋)、手関節背屈不能(橈骨神経C6-C8支配の手関節伸筋群)、手指屈曲不能(正中神経C7-T1、尺骨神経C8-T1支配の手指屈筋群)と、複数の神経支配領域が広範に障害されている。これは個々の末梢神経障害では説明できず、腕神経叢の幹(trunk)レベル、すなわち側頸部での損傷を示唆する。バイク転倒時に頭部と肩が強制的に引き離される牽引力が働き、頸椎横突起から出た神経根が引き抜かれる損傷(神経根引き抜き損傷)が生じたと考えられる。
✗ 2. 誤り
腋窩部
腋窩部の損傷では腕神経叢の束(cord)レベル以下が障害される。外側束、内側束、後束のいずれかの損傷であれば、障害される末梢神経の組み合わせが限定され、本症例のような全上肢機能喪失のパターンは説明しにくい。腋窩部損傷は腋窩動脈損傷を伴う鎖骨骨折や肩関節脱臼で見られることがある。
✗ 3. 誤り
上腕部
上腕部での損傷では個別の末梢神経(橈骨神経、正中神経、尺骨神経)の単独障害が主体となる。本症例のように肘屈曲、手関節背屈、手指屈曲すべてが同時に障害されるパターンは、上腕部の単一部位損傷では説明困難である。
✗ 4. 誤り
肘部
肘部での損傷では尺骨神経(肘部管症候群)や正中神経(前骨間神経障害)の障害が起こりうるが、肘屈曲不能(上腕二頭筋は筋皮神経支配で肘より上位)や手関節背屈不能(橈骨神経支配)を含む広範な障害パターンは説明できない。
ポイント
  • 腕神経叢は神経根(C5-T1)から幹(上・中・下)、束(外側・内側・後)を経て末梢神経へと分岐する
  • 損傷レベルが近位(側頸部の神経根・幹)ほど広範な機能障害を呈し、複数の末梢神経領域にまたがる障害パターンとなる
  • 神経根引き抜き損傷は最重症型であり、脊髄から神経根が引き抜かれるため自然回復は極めて困難である
  • 重要用語: 腕神経叢の構造と損傷レベルによる障害パターン を正確に理解しておくこと。
比較表
損傷レベル 解剖学的部位 障害パターン 予後
神経根レベル(側頸部) C5-T1神経根・幹 広範な上肢機能喪失 引き抜き損傷は回復困難
束レベル(腋窩部) 外側・内側・後束 特定の束に対応した障害 損傷程度による
末梢神経レベル(上腕〜肘) 個別の末梢神経 単一神経領域の障害 比較的良好
解説画像
鍼灸 第33回(2025) 問題84|次の症例について、「17歳の男子。バイク走行中に転倒し救急搬送。ヘルメットの右外側に傷があり、右肩に外傷がある。右上肢は自動運動不能で知覚異常を認めた。意識は清明、独歩可能、脳神経に異常はない。」身体所見では肘の屈曲・手関節の背屈が不能で、手指の屈曲もできない。上肢の骨折や関節の脱臼はない。損傷部位はどれか。 解説図
鍼灸 第33回(2025) 問題84|次の症例について、「17歳の男子。バイク走行中に転倒し救急搬送。ヘルメットの右外側に傷があり、右肩に外傷がある。右上肢は自動運動不能で知覚異常を認めた。意識は清明、独歩可能、脳神経に異常はない。」身体所見では肘の屈曲・手関節の背屈が不能で、手指の屈曲もできない。上肢の骨折や関節の脱臼はない。損傷部位はどれか。
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