学習トップ理由で解く 柔道整復師生理学 ▸ §12 神経 / QJ33A105

理由で解く 柔道整復師

QJ33A105 生理学

出典:第33回柔道整復師国家試験(2025)午前 問105
問題
高齢者の歩行変化で正しいのはどれか。
選択肢
1 歩幅の拡大
2 歩隔の拡大
3 歩行率の増加
4 遊脚期の延長
解答
正解2(歩隔の拡大)
解説

高齢者の歩行は「速さを譲って安定を取る」方向に変わります。左右の足の間隔である歩隔を広げ、支持基底面を大きくして立ち直りやすくするのが代表的な変化です。

加齢に伴って下肢の筋力、とくに足関節底屈による蹴り出しの力が落ち、視覚・前庭覚・体性感覚をまとめてバランスを取る働きも遅くなります。その条件下で転ばずに進むために、1歩を小さく、床に足がついている時間を長く、左右の揺れに耐えられる幅広の足取りへと歩き方が組み替えられます。歩行速度は〔歩幅 × 歩行率〕で決まるため、歩幅が縮めばそのぶん速度が落ちます。ほかにも、つま先が床から離れる高さ(クリアランス)の低下によるすり足、上肢の振りや体幹回旋の減少、方向転換に要する歩数の増加がみられます。これらは弱さの表れであると同時に転倒を避けるための適応でもあるので、下肢筋力とバランスの運動、段差や敷物などの環境調整、足に合った靴の選択を組み合わせて支えることが実際の対応になります。

✓ 2. 正しい
歩隔の拡大
歩隔は左右の足の接地点どうしの間隔で、これを広げると支持基底面が横に大きくなり、左右方向の重心の揺れに耐えやすくなります。バランス能力の低下を補う適応として現れる、高齢者歩行の典型的な変化です。
✗ 1. 誤り
歩幅の拡大
向きが逆で、歩幅はむしろ短くなります。蹴り出しの力が落ち、片脚で支える時間を長く取りたくないため、1歩を小さく刻む歩き方になります。歩幅の短縮が歩行速度低下の主因である点まで結びつけて覚えます。
✗ 3. 誤り
歩行率の増加
歩行率(1分あたりの歩数、ケイデンス)は著明には変化せず、ほぼ不変にとどまります(歩幅の短縮を部分的に代償してわずかに増えると記す資料もあります)。いずれにせよ、高齢者歩行の特徴として「歩行率の増加」が挙げられることはありません。加齢変化の主体はあくまで歩幅の短縮で、歩行速度=歩幅×歩行率のうち歩幅が縮み、それを歩行率で補いきれないために速度が落ちます。「歩幅が減るなら歩数が増えるはず」と考えたくなる肢ですが、代表的な変化として問われているのは歩隔の拡大と歩幅の短縮のほうだと押さえてください。
✗ 4. 誤り
遊脚期の延長
延びるのは両脚支持期で、1歩行周期に占める立脚期の割合が増えます。遊脚期とは一方の脚が床から離れて体重を支えていない期間のことで(この間、体は対側の脚による単脚支持で支えられています)、立脚期の割合が増えるぶん遊脚期は相対的に短くなります。これも安定を優先した結果です。「両脚が床についている時間を長く確保する」という一点から、立脚期↑・遊脚期↓を導けます。
ポイント
  • 高齢者の歩行は安定性を優先する方向に変化する。歩隔(左右の足の間隔)を広げて支持基底面を確保する。
  • 歩幅は短縮し、歩行速度が低下する(歩行速度=歩幅×歩行率)。速度低下の主因は歩幅短縮であり、歩行率はほぼ不変で「増加」が特徴として挙がることはない。
  • 両脚支持期が延長して立脚期の割合が増え、遊脚期(脚が床から離れている期間)は相対的に短縮する。
  • つま先のクリアランス低下(すり足)、上肢の振りと体幹回旋の減少、方向転換に要する歩数の増加もみられる。
  • 対応は下肢筋力・バランス訓練、段差や敷物などの環境調整、足に合った靴の選択を組み合わせること。
比較表
歩行パラメータ加齢による変化理由
歩隔(左右の足の間隔)拡大支持基底面を広げて左右の動揺に備えるため
歩幅・ストライド長短縮足関節底屈の蹴り出しが弱くなり、片脚支持を短くしたいため
歩行率(ケイデンス)ほぼ不変加齢変化の主体は歩幅短縮。歩行率では補いきれず歩行速度が低下する
歩行速度低下歩幅×歩行率のうち歩幅が縮むため
両脚支持期延長両脚が床についている時間を長くして安定を確保するため
遊脚期(脚が床から離れている期間)の割合相対的に短縮立脚期の割合が増えることの裏返し
つま先のクリアランス低下(すり足)股・膝・足関節の運動範囲と筋力の低下。つまずきの一因
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