学習トップ理由で解く 柔道整復師整形外科学 ▸ §13 疾患別各論 四肢循環障害 / QJ32P062

理由で解く 柔道整復師

QJ32P062 整形外科学

出典:第32回柔道整復師国家試験(2024)午後 問62
問題
深部静脈血栓症で正しいのはどれか。
選択肢
1 動脈瘤が続発する。
2 症状に感覚過敏がある。
3 治療に硬化療法がある。
4 下肢手術が原因となる。
解答
正解4(下肢手術が原因となる。)
解説

深部静脈血栓症(DVT)は下肢の深部静脈に血栓が生じる病態で、人工関節置換術や大腿骨近位部骨折の手術など下肢手術が代表的な誘因となる。最大の脅威は血栓が肺へ飛んで起こる肺血栓塞栓症である。

成因はウィルヒョウの三徴、すなわち①血流の停滞、②血管内皮の傷害、③血液凝固能の亢進で説明できる。下肢の手術はこの3つをすべて満たす。すなわち術中・術後の不動で血流が滞り、手術操作や駆血で血管壁が傷つき、組織損傷に伴って凝固能が高まる。そのため周術期には早期離床、足関節の自動運動、弾性ストッキング、間欠的空気圧迫、抗凝固薬といった予防策が標準的に行われる。症状は片側性の下肢腫脹・疼痛・熱感・緊満感・表在静脈の怒張で、膝を伸展位に保ち、足関節を他動的に背屈させると腓腹部に疼痛が生じるホーマンズ徴候が知られる。診断は下肢静脈エコーとDダイマーが中心で、治療は抗凝固療法が基本となる。慢性期には静脈血栓後症候群として浮腫・色素沈着・潰瘍を残すことがある。柔道整復の現場でも、長期固定後や術後の患者に片側だけの下腿腫脹と疼痛を認めた場合は、施術やマッサージで対応せず、その場で速やかに医師へつなぐことが最優先の行動になる。

✓ 4. 正しい
下肢手術が原因となる。
人工股関節・人工膝関節置換術や大腿骨近位部骨折の手術は、不動による血流停滞、血管内皮の傷害、凝固能亢進というウィルヒョウの三徴をすべて満たすため、DVTの代表的な危険因子となる。だからこそ術後は早期離床と抗凝固療法などの予防が組まれる。
✗ 1. 誤り
動脈瘤が続発する。
DVTに続発するのは動脈瘤ではなく、急性期の肺血栓塞栓症と、慢性期の静脈血栓後症候群(浮腫・色素沈着・うっ滞性潰瘍)である。動脈系の疾患とは結びつかない。
✗ 2. 誤り
症状に感覚過敏がある。
主症状は片側下肢の腫脹・疼痛・熱感・緊満感・色調変化であり、感覚過敏は特徴的な所見ではない。左右差のある下腿の腫れと痛みという組合せで気づくことが多い。
✗ 3. 誤り
治療に硬化療法がある。
硬化療法は表在静脈の疾患である下肢静脈瘤に対して行う治療である。DVTの治療は抗凝固療法が基本で、状況により血栓溶解療法や下大静脈フィルターが選択される。
ポイント
  • 成因はウィルヒョウの三徴(血流停滞・血管内皮傷害・凝固能亢進)。下肢手術は3つすべてを満たす。
  • 症状は片側下肢の腫脹・疼痛・熱感・緊満感、ホーマンズ徴候。感覚過敏ではない。
  • 続発するのは肺血栓塞栓症(急性期)と静脈血栓後症候群(慢性期)。動脈瘤ではない。
  • 治療は抗凝固療法が基本。硬化療法は下肢静脈瘤の治療法。
  • 術後・長期固定後に片側性の下腿腫脹と疼痛を認めたら、施術せず速やかに医師へつなぐ。
比較表
深部静脈血栓症下肢静脈瘤
侵される血管深部静脈表在静脈(大伏在静脈など)
主な誘因下肢手術、長期臥床、長時間の座位、悪性腫瘍立ち仕事、妊娠、加齢、弁不全
所見片側の腫脹・疼痛・熱感、ホーマンズ徴候蛇行・怒張した表在静脈、だるさ、こむら返り
主な合併症肺血栓塞栓症、静脈血栓後症候群うっ滞性皮膚炎、潰瘍
治療抗凝固療法(+血栓溶解、フィルター)圧迫療法、硬化療法、血管内焼灼術、ストリッピング
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