学習トップ理由で解く 柔道整復師必修問題 ▸ §15 肩鎖関節上方脱臼の診察および整復 / QJ30A017

理由で解く 柔道整復師

QJ30A017 必修問題

出典:第30回柔道整復師国家試験(2022)午前 問17
問題
肩鎖関節上方脱臼の3度損傷で正しいのはどれか。
選択肢
1 肩峰が角状に突出してみえる。
2 反跳症状がみられる。
3 頭部を健側に傾ける。
4 上肢は短縮する。
解答
正解2(反跳症状がみられる。)
解説

肩鎖関節上方脱臼の3度損傷は、肩鎖靱帯と烏口鎖骨靱帯がともに断裂した完全脱臼です。突出した鎖骨遠位端を押し下げても指を離すと再び浮き上がる反跳症状(ピアノキー症状)がみられます。

肩鎖関節は、関節そのものを支える肩鎖靱帯と、鎖骨を烏口突起へ吊り下げる烏口鎖骨靱帯(円錐靱帯・菱形靱帯)の二重構造で安定しています。3度損傷ではこの両方が断裂するため、鎖骨を下方につなぎ止めるものがなくなります。その結果、鎖骨遠位端は僧帽筋に引かれて上方へ、肩甲骨と上肢は自重で下方へ移動し、外見上は鎖骨遠位端が段差状に突出する階段状変形を呈します。この突出部を上から圧迫すると一時的に整復されますが、圧を除くとただちに再突出する ―― これが反跳症状(ピアノキー症状)で、支持機構が完全に破綻していることを示す3度損傷の代表的所見です。疼痛のある患者は僧帽筋の緊張を緩めようとして頭部を患側に傾け、健側の手で患肢を支える姿勢をとります。3度が疑われる場合は、患肢の固定(デゾー包帯など)と冷却で疼痛を抑えつつ、医師の診察・画像評価につなげる対応をとります。

✓ 2. 正しい
反跳症状がみられる。
肩鎖靱帯・烏口鎖骨靱帯がともに断裂しているため、突出した鎖骨遠位端を押せば整復位に戻るものの、離すと支えがなくすぐ再突出します。ピアノの鍵盤の動きになぞらえてピアノキー症状とも呼ばれ、完全脱臼(3度)を示唆する所見です。
✗ 1. 誤り
肩峰が角状に突出してみえる。
突出して見えるのは肩峰ではなく鎖骨遠位端です。肩峰を含む肩甲帯はむしろ上肢の重みで下がるため、鎖骨遠位端との間に段差が生じて階段状変形として触知されます。「上がるのは鎖骨、下がるのは肩甲骨・上肢」と整理しておきましょう。
✗ 3. 誤り
頭部を健側に傾ける。
傾けるのは健側ではなく患側です。頭頸部を患側へ傾けると僧帽筋の緊張がゆるみ、鎖骨遠位端を引き上げる力と疼痛が軽減するためです。健側に傾けると患側の筋が伸張されて痛みが増すので、その姿勢はとりません。
✗ 4. 誤り
上肢は短縮する。
肩甲帯を吊り上げる支持が失われて肩甲骨と上肢が下垂するため、患側の上肢はむしろ延長したように見えます。健側と比べて肩の高さが下がり、患者は健手で肘を支える姿勢をとることが多くなります。
ポイント
  • 3度損傷=肩鎖靱帯+烏口鎖骨靱帯(円錐・菱形)がともに完全断裂した完全脱臼。
  • 代表所見は反跳症状(ピアノキー症状)と階段状変形。突出するのは鎖骨遠位端
  • 肩甲骨・上肢は下垂するため、患側上肢は延長してみえ、肩の高さが下がる。
  • 疼痛緩和の肢位は「頭部を患側に傾け、健手で患肢を支える」。僧帽筋の緊張を抜くための姿勢。
  • 対応は患肢の安静・固定と冷却を行い、画像評価と治療方針の決定のため医師の診察につなげる。
比較表
程度損傷される靱帯転位反跳症状
1度肩鎖靱帯の部分損傷なし陰性(圧痛のみ)
2度肩鎖靱帯断裂+烏口鎖骨靱帯は部分損傷亜脱臼(軽度の階段状変形)軽度〜不明瞭
3度(本問)肩鎖靱帯+烏口鎖骨靱帯がともに完全断裂完全脱臼(階段状変形が明瞭)明らかに陽性
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