学習トップ理由で解く 柔道整復師病理学概論 ▸ §4 退行性病変・代謝障害 / QJ29A118

理由で解く 柔道整復師

QJ29A118 病理学概論

出典:第29回柔道整復師国家試験(2021)午前 問118
問題
神経性萎縮の原因となるのはどれか。
選択肢
1 脊髄前角炎
2 筋ジストロフィー
3 長期間のギプス固定
4 寝たきりの生活
解答
正解1(脊髄前角炎)
解説

神経性(除神経性)萎縮は、筋を支配する運動神経が断たれて起こる萎縮。選択肢のなかで運動ニューロンそのものが壊れるのは脊髄前角炎だけである。

骨格筋は運動ニューロンから収縮の指令を受けるだけでなく、神経を介した栄養的な影響(栄養性支配)も受け続けている。この結びつきが断たれると筋線維は急速に細くなり、これが神経性萎縮である。脊髄前角炎(急性灰白髄炎=ポリオ)は脊髄前角の下位運動ニューロンがウイルスに侵される疾患で、支配下の筋は弛緩性麻痺に陥り左右非対称に著明に痩せる。同じ「筋が細くなる」でも、原因が筋自体にあるのか(筋原性)、神経にあるのか(神経原性)、単に使っていないだけなのか(廃用性)で分類が変わる。萎縮の問題はまず原因別の分類表を思い浮かべ、そこに選択肢を当てはめていくと迷わない。

✓ 1. 正しい
脊髄前角炎
前角細胞(下位運動ニューロン)が破壊され、その支配筋が神経支配を失う典型的な除神経性=神経性萎縮。麻痺は弛緩性で腱反射も低下し、筋は左右非対称に痩せる。
✗ 2. 誤り
筋ジストロフィー
ジストロフィンなど筋細胞の構造タンパクの遺伝子異常により、筋線維自体が変性・壊死と再生を繰り返して脱落していく筋原性の疾患。神経は保たれているので神経性萎縮には当たらない。
✗ 3. 誤り
長期間のギプス固定
関節を動かさず筋への負荷がなくなって生じる廃用性(不活動性)萎縮。神経支配は残るため可逆的で、固定中から等尺性収縮や隣接関節の自動運動を取り入れると進行を抑えられる。
✗ 4. 誤り
寝たきりの生活
これも廃用性萎縮。筋だけでなく廃用性骨粗鬆症や関節拘縮も同時に進むので、離床、こまめな体位変換、可能な範囲の自動運動を組み合わせて予防する。
ポイント
  • 萎縮の分類:生理的(加齢・胸腺退縮)、廃用性、圧迫性、栄養障害性(飢餓)、神経性(除神経性)、内分泌性。
  • 神経性萎縮=下位運動ニューロンから末梢神経までの障害。ポリオ、筋萎縮性側索硬化症、末梢神経損傷が代表。
  • 筋ジストロフィーは筋原性萎縮。「原因が筋か神経か」で分類が分かれる。
  • 廃用性萎縮は神経支配が残るため可逆的。早期からの等尺性収縮と離床が回復の鍵になる。
  • 骨格筋の萎縮は筋線維1本1本の容積減少が主体で、進行すると線維数も減っていく。
比較表
萎縮の種類機序代表例
神経性(除神経性)運動神経支配の途絶脊髄前角炎(ポリオ)、末梢神経損傷、ALS
廃用性(不活動性)使わないことによる負荷の消失ギプス固定、寝たきり、長期臥床
圧迫性持続的圧迫による血流・栄養障害水腎症の腎実質、動脈瘤による骨侵食
栄養障害性栄養供給・血流の不足飢餓、悪液質、慢性虚血
内分泌性刺激ホルモンの低下下垂体機能低下による副腎・甲状腺の萎縮
生理的加齢や発達に伴う自然な退縮胸腺、老人性の脳・筋の萎縮
(参考)筋原性萎縮筋線維自体の変性・脱落筋ジストロフィー、多発性筋炎
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