学習トップ理由で解く 臨床医学各論第7章 ▸ E. その他の代謝異常症 / Q0598

理由で解く 臨床医学各論

Q0598 代謝・栄養疾患

出典:鍼灸 第15回(2007) 問題80
問題
「25歳の男性。1年前から飲酒量が増加し、食事回数は減少した。1か月前から下腿浮腫、息切れ、膝蓋腱反射の消失がみられ、今朝から意識消失もみられるようになった。」原因と考えられるのはどれか。
選択肢
1 ビタミンB1 欠乏
2 ニコチン酸欠乏
3 ウイルス感染
4 脳腫瘍
解答
正解1(ビタミンB1欠乏)
解説
✓ 1. 正しい
ビタミンB1 欠乏
前問(問題611)の症例はウェルニッケ脳症と脚気の合併であり、原因はビタミンB1(チアミン)欠乏である。アルコール多飲者はアルコール代謝にビタミンB1が大量に消費されることに加え、食事摂取量の減少によりB1摂取も不足するため、二重の機序でビタミンB1欠乏に陥りやすい。本症例の下腿浮腫・息切れは脚気心(高拍出性心不全)、膝蓋腱反射消失は末梢神経障害、意識障害はウェルニッケ脳症の所見であり、すべてビタミンB1欠乏で統一的に説明できる。
✗ 2. 誤り
ニコチン酸欠乏
ニコチン酸(ナイアシン)欠乏ではペラグラ(皮膚炎・下痢・認知症の3D症状)をきたす。本症例では皮膚炎や下痢の記載がなく、下腿浮腫・息切れ・膝蓋腱反射消失・意識障害という脚気+ウェルニッケ脳症の症状が主体であるため、ナイアシン欠乏は原因として考えにくい。
✗ 3. 誤り
ウイルス感染
ウイルス感染は本症例のように1年以上にわたるアルコール多飲と低栄養を背景とした慢性経過の病態には合致しない。ウイルス性脳炎であれば発熱や髄膜刺激症状を伴うことが多く、脚気心のような心不全症状は通常みられない。
✗ 4. 誤り
脳腫瘍
脳腫瘍であれば頭蓋内圧亢進症状(頭痛・嘔吐・うっ血乳頭)や局所神経症状(片麻痺・失語など)がみられるのが通常である。本症例のように末梢神経障害と心不全が先行する病態は脳腫瘍では説明困難である。
ポイント
  • アルコール多飲者の「末梢神経障害+心不全+意識障害」はビタミンB1欠乏を真っ先に考える
  • ビタミンB1欠乏では脚気(末梢神経障害+心不全)とウェルニッケ脳症(中枢神経障害)が同時に起こりうる
  • アルコール多飲者のB1欠乏は「消費亢進+摂取不足」の二重機序で生じる
  • ペラグラ(ナイアシン欠乏)との鑑別:ペラグラは3D(皮膚炎・下痢・認知症)、B1欠乏は脚気+ウェルニッケ脳症
  • 重要用語: ビタミンB1欠乏、脚気、ウェルニッケ脳症、アルコール多飲、ペラグラ を正確に理解しておくこと。
比較表
欠乏ビタミン 疾患名 主な症状 好発背景
ビタミンB1 脚気 末梢神経障害(膝蓋腱反射消失)、心不全 アルコール多飲、偏食
ビタミンB1 ウェルニッケ脳症 意識障害、眼球運動障害、運動失調 アルコール多飲、低栄養
ナイアシン ペラグラ 皮膚炎、下痢、認知症(3D) トウモロコシ主食、アルコール多飲
ビタミンB12 亜急性連合脊髄変性症 後索・側索障害、巨赤芽球性貧血 胃全摘後、悪性貧血
解説画像
鍼灸 第15回(2007) 問題80|「25歳の男性。1年前から飲酒量が増加し、食事回数は減少した。1か月前から下腿浮腫、息切れ、膝蓋腱反射の消失がみられ、今朝から意識消失もみられるようになった。」原因と考えられるのはどれか。 解説図
鍼灸 第15回(2007) 問題80|「25歳の男性。1年前から飲酒量が増加し、食事回数は減少した。1か月前から下腿浮腫、息切れ、膝蓋腱反射の消失がみられ、今朝から意識消失もみられるようになった。」原因と考えられるのはどれか。
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