学習トップ理由で解く 理学療法士第10章 ▸ 実地 / QP57P014

理由で解く 理学療法士

QP57P014 基礎理学療法学

出典:第57回理学療法士国家試験(2022)午後 問14
問題
60歳の男性。7年前から歩行時にふらつきを自覚し、6年前から話し方が単調で途切れ途切れとなり膀胱直腸障害と起立性低血圧を認めた。四肢の固縮や振戦が徐々に進行し、2年前から車椅子で移動するようになった。最近、声が小さくなり呼吸困難感を訴えるようになった。頭部MRIのFLAIR画像で水平断(図A)及び矢状断(図B)を図に示す。この疾患で合併する可能性が高いのはどれか。
図
選択肢
1 失語
2 拮抗失行
3 声帯麻痺
4 下方注視麻痺
5 他人の手徴候
解答
正解3(声帯麻痺)
解説

橋の十字状高信号(hot cross bun sign)と橋・小脳の萎縮は多系統萎縮症(MSA)に特徴的。MSAは声帯外転障害による呼吸困難・突然死を合併する。

本例は、進行性の歩行失調、単調で途切れ途切れの断綴性構音障害、膀胱直腸障害と起立性低血圧という自律神経障害、四肢の固縮・振戦というパーキンソニズムがそろっており、多系統萎縮症(MSA)が疑われる。頭部MRIのFLAIR画像では、水平断(図A)で橋に十字状の高信号=hot cross bun signと小脳の萎縮を、矢状断(図B)で橋(脳幹)と小脳の萎縮を認め、いずれもMSAに典型的な所見である。MSAでは経過中に喉頭の声帯外転障害、すなわち声帯麻痺を合併し、吸気性喘鳴・呼吸困難をきたすほか、睡眠時の上気道閉塞から突然死の原因にもなる。本例が「声が小さくなり呼吸困難感を訴える」ようになった経過は、この声帯麻痺を強く示唆する。失語は優位半球の側頭・前頭葉皮質の病変で生じるもので、橋・小脳優位の萎縮を示す本例では説明できない。下方注視麻痺は垂直性眼球運動障害であり、進行性核上性麻痺(PSP)に特徴的である。拮抗失行は脳梁病変、他人の手徴候は皮質基底核変性症(CBD)の症候で、いずれもMSAの画像所見・病態と合致しない。したがって合併する可能性が高いのは声帯麻痺である。

✗ 1. 誤り
失語
失語は優位半球の皮質病変による症状。橋・小脳優位の萎縮を示す本例では合併しにくい
✗ 2. 誤り
拮抗失行
両手が互いに逆向きに動く症候で、脳梁病変や皮質基底核変性症でみられる。本例とは合わない
✓ 3. 正しい
声帯麻痺
多系統萎縮症は声帯外転障害を合併し、吸気性喘鳴・呼吸困難や睡眠時突然死の原因となる
✗ 4. 誤り
下方注視麻痺
垂直方向(特に下方)の眼球運動障害は進行性核上性麻痺に特徴的で、本例の画像所見と合わない
✗ 5. 誤り
他人の手徴候
手が意思と無関係に動く症候で皮質基底核変性症に特徴的。多系統萎縮症では典型的でない
ポイント
  • 小脳失調+パーキンソニズム+自律神経障害=MSA
  • 橋のhot cross bun sign(十字サイン)
  • 声帯外転麻痺→喘鳴・呼吸困難・突然死のリスク
比較表
パーキンソン関連疾患と特徴的所見
疾患特徴的症状
MSA自律神経障害・小脳失調・声帯麻痺・hot cross bun sign
PSP下方(垂直性)注視麻痺・易転倒
大脳皮質基底核変性症他人の手徴候・拮抗失行・非対称性失行
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