
この図の解説
図は匂いが脳に届くまでを3段階で追う。左上、鼻腔上部の嗅粘膜には嗅神経(第I脳神経)が分布し、匂い分子を受容する。右上、その神経線維は束となって篩骨の篩板を貫き、頭蓋腔で嗅球に終わる。下段の脳底面では、嗅球から後方へ嗅索が伸び、情報を各領域へ配っている。注目すべきは、この経路が他の感覚と違い視床を経ずに大脳皮質(嗅覚野)へ直接届く点である。届く先も新皮質ではなく古皮質で、梨状皮質は匂いの認識、扁桃体は情動、嗅内皮質・海馬は記憶と結びつく。図右下では視床下部や脳幹(網様体)へも枝が向かい、匂いによる情動が身体反応として現れる経路を示す。嗅覚系が大脳辺縁系とつながるため、匂いは感情や記憶を強く呼び起こす。系統発生学的に古く、動物では嗅覚野が嗅脳として独立する。
学習の要点
- 嗅覚は例外的に視床を経ず、大脳皮質の嗅覚野へ直接伝えられる。これが嗅覚伝導路最大の特徴である。
- 覚え方のコツ: 「匂いは受付(視床)を通さず直行便」。他の感覚(視覚・聴覚・体性感覚)が必ず視床で乗り換えるのと対比して覚える。
- 関連知識: 嗅覚野は側頭葉の内側面にあり古皮質に属す。古皮質は嗅脳・帯状回・海馬などからなり、扁桃体とともに大脳辺縁系を形成して本能行動・情動行動を支配する。
- よくある間違い: 嗅神経が「嗅球で終わる」ことと「嗅球が脳の一部(前脳の突出)」であることを混同しない。嗅上皮→篩板→嗅球が第I脳神経の走行である。
- 臨床応用: 頭部外傷で篩板が損傷すると、篩板を貫く嗅神経線維が断裂して嗅覚脱失を起こしうる。
比較表
確認問題(その場で確認・記録には残りません)
嗅神経(第I脳神経)は鼻腔上部の嗅上皮から出た線維が篩骨の篩板を貫いて頭蓋腔に入り、( )に終わる。( )に入る語を答えよ。
答えを見る
答え: 嗅球
※ 確認問題はその場の理解確認用で、復習スケジュール(FSRS)には記録されません。