学習トップ理由で解く 柔道整復師一般臨床医学 ▸ §19 主要な疾患 神経系疾患 / QJ29P043

理由で解く 柔道整復師

QJ29P043 一般臨床医学

出典:第29回柔道整復師国家試験(2021)午後 問43
問題
筋萎縮性側索硬化症で正しいのはどれか。
選択肢
1 運動失調を呈する。
2 呼吸筋麻痺を呈する。
3 再発・寛解を繰り返す。
4 複視・眼瞼下垂を呈する。
解答
正解2(呼吸筋麻痺を呈する。)
解説

筋萎縮性側索硬化症(ALS)は運動ニューロンが選択的に変性していく疾患で、進行すると呼吸筋も麻痺し、人工呼吸管理を要する。したがって2が正しい。

ALSでは大脳皮質の上位運動ニューロンと脊髄前角・脳幹の下位運動ニューロンがともに変性する。下位運動ニューロン障害により筋力低下・筋萎縮・線維束性収縮(fasciculation)が起こり、上位運動ニューロン障害により腱反射亢進や病的反射陽性、痙縮がみられる。この上下が同時に出るのがALSの診断上の特徴である。障害は上肢の遠位筋から始まることが多く、進行すると球麻痺(構音障害・嚥下障害)が加わり、最終的には横隔膜や肋間筋といった呼吸筋が麻痺して呼吸不全に至る。一方で、感覚障害・眼球運動障害・膀胱直腸障害・褥瘡は末期まで現れにくく、これらは陰性四徴(四大陰性徴候)と呼ばれる。運動ニューロン以外の系はよく保たれる、という原則を押さえておけば、他の選択肢がどの疾患を指しているかも見分けられる。日常では呼吸状態や嚥下の変化を丁寧に観察し、変化に気づいたら主治医・多職種と共有することが実際的な対応となる。

✓ 2. 正しい
呼吸筋麻痺を呈する。
横隔膜や肋間筋を支配する運動ニューロンも変性するため、進行例では呼吸筋麻痺による呼吸不全をきたし、非侵襲的陽圧換気や気管切開下人工呼吸の導入が検討される。呼吸不全はALSの予後を左右する最大の要因である。
✗ 1. 誤り
運動失調を呈する。
運動失調は小脳や脊髄後索、前庭系の障害で生じるもので、脊髄小脳変性症などが代表である。ALSで障害されるのは運動ニューロンであり、筋力低下と痙縮が前面に出るため、協調運動障害としての失調は典型的所見ではない。
✗ 3. 誤り
再発・寛解を繰り返す。
再発と寛解を繰り返す経過をとるのは多発性硬化症に代表される中枢神経の脱髄疾患である。ALSは進行性の変性疾患であり、症状はいったん出現すると寛解せず、段階的に進んでいく。
✗ 4. 誤り
複視・眼瞼下垂を呈する。
複視や眼瞼下垂、日内変動を伴う易疲労性は重症筋無力症に特徴的である。ALSでは眼球運動が末期まで比較的保たれ、これは陰性四徴の一つとして知られており、意思伝達の手段としても重要になる。
ポイント
  • ALSは上位・下位運動ニューロンがともに変性する進行性疾患。呼吸筋麻痺が予後を左右する。
  • 下位障害=筋力低下・筋萎縮・線維束性収縮、上位障害=腱反射亢進・病的反射陽性・痙縮。
  • 陰性四徴(末期まで保たれるもの):感覚障害・眼球運動障害・膀胱直腸障害・褥瘡。
  • 球麻痺(構音障害・嚥下障害)を伴うと誤嚥性肺炎のリスクが高まる。
  • 運動失調=小脳障害、再発寛解=多発性硬化症、複視・眼瞼下垂=重症筋無力症。区別して覚える。
比較表
疾患障害部位経過特徴的所見
筋萎縮性側索硬化症上位・下位運動ニューロン進行性(寛解しない)筋萎縮+腱反射亢進、線維束性収縮、球麻痺、呼吸筋麻痺
多発性硬化症中枢神経の髄鞘再発・寛解を繰り返す視神経炎、感覚障害、時間的・空間的多発性
重症筋無力症神経筋接合部日内変動あり眼瞼下垂、複視、易疲労性
脊髄小脳変性症小脳・脊髄進行性運動失調、構音障害、歩行時のふらつき
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