論文紹介:A pilot study on using acupuncture and transcutaneous electrical nerve stimulation to treat chronic non-specific low back pain「鍼治療および経皮的末梢神経電気刺激を併用した慢性非特異的腰痛治療のパイロット研究」
引用論文
A pilot study on using acupuncture and transcutaneous electrical nerve stimulation to treat chronic non-specific low back pain「鍼治療および経皮的末梢神経電気刺激を併用した慢性非特異的腰痛治療のパイロット研究」
背景および目的
慢性非特異的腰痛は高齢者を中心にQOLを著しく低下させる疾患であり、薬物療法や理学療法だけでは十分な鎮痛が得られないケースが多い。そのため、鍼治療や経皮的末梢神経電気刺激(TENS)が代替または補助療法として用いられてきたが、両者を組み合わせた場合の有効性については未だ十分な検討がなされていない。本研究は、鍼単独(ACP群)、TENS単独(TENS群)、両者併用(A&T群)の3群と対照群(CT群)をランダム化比較し、併用治療が疼痛緩和および機能改善に優れるかを検証することを目的とした。
方法
本パイロットRCTには、60歳以上で発症後6か月以上の慢性腰痛患者32名(男性12名、女性20名)が登録され、ACP群、TENS群、A&T群、CT群に各8名ずつランダムに割り付けられた。ACP群では週1回×5回、径0.20×長さ40mmのディスポーザブルステンレス針を用い、BL23(腎兪)、BL25(大腸兪)、BL32(次髎)、BL40(委中)、BL60(昆侖)、GB30(環跳)、GB34(陽陵泉)に深さ約10mmで刺鍼後、雀啄および得気を誘発し10分以上置鍼した。一方、TENS群は主要圧痛部位およびその周辺に小・大電極を配置し、122Hzの周波数で患者の感覚閾値の2~3倍の強度を15分間通電。A&T群は上述の鍼治療15分とTENS 15分を同一日に実施し、CT群は特別治療を行わないが、必要時にメチルサリチル酸含有湿布の使用を許可した。
評価項目
主要アウトカムはVAS(Visual Analogue Scale)による疼痛強度とRDQ(Roland–Morris Disability Questionnaire)による腰部機能・QOLであり、治療前後の変化を対応のあるt検定および群間比較で解析した。有意水準はP<0.05と設定した。
結果
ACP群、TENS群、A&T群のいずれも治療後にVASおよびRDQスコアが低下したが、VASおよびRDQの有意な減少(P<0.008)はA&T群でのみ認められた。特にA&T群の4週目・5週目のVASは治療前に比し有意に低下し、5週間平均VASもCT群に対して有意に改善した。RDQスコアも5週後に有意に低下していた。
考察
本研究は鍼とTENS併用の相乗効果を示した点で意義が大きい。鍼治療は主に小径求心線維を興奮させ、TENSは大径求心線維を刺激することで脊髄後角におけるゲートコントロール機序が強化されると考えられる。さらに、鍼による局所的な炎症性サイトカイン放出や神経伝達物質の調整と、TENSの持続的求心性入力が中枢性下行性抑制系を活性化し、疼痛制御ネットワークを相乗的に改善した可能性がある。また、併用群でのみQOL指標の有意改善が得られたことは、疼痛緩和が日常生活動作能力の回復に直結することを示唆している。ただし、本試験はサンプルサイズが小規模でITT解析が未実施、追跡期間も5週間と短い点は限界であり、今後は多施設大規模RCTや長期フォローアップを含む研究が必要である。
結論
鍼治療とTENSを併用することで、単独療法よりも慢性非特異的腰痛患者の疼痛緩和および機能改善効果が高まることが示された。臨床現場では多モダリティ治療の有用性が支持される結果であり、本研究を基盤に標準化プロトコルの策定やコスト効果分析を含む検討が期待される。
使用経穴
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BL23(腎兪)
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BL25(大腸兪)
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BL32(次髎)
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BL40(委中)
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BL60(昆侖)
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GB30(環跳)
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GB34(陽陵泉)