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理由で解く 臨床医学各論

Q11H088 その他の領域

出典:鍼灸 第11回(2003) 問題88
問題
思考制止がみられる精神疾患はどれか。
選択肢
1 不安神経症
2 うつ病
3 心身症
4 統合失調症(精神分裂病)
解答
正解2(うつ病)
解説

思考制止(考えが前に進まず、頭の回転が遅く重く感じる状態)は、抑うつ状態に伴う代表的な精神症状である。したがって思考制止がみられる代表的な精神疾患はうつ病である。

抑うつ状態は、気分の落ち込み(抑うつ気分)と興味・喜びの喪失を中核とし、意欲低下・思考制止・易疲労感・食欲低下・睡眠障害などを伴う状態をいう。つまり思考制止は「気分の障害に引きずられて思考の流れが遅くなる」症状であり、考えの内容が病的にゆがむ(妄想)のでも、話の筋道がばらばらになる(連合弛緩)のでもない点が鑑別の要になる。うつ病では、思考制止に加えて意欲・行動の制止(精神運動制止)も同時に現れ、「決められない」「仕事が進まない」といった訴えとして表面化する。身体症状(肩こり・倦怠感・食欲不振・不眠)を主訴に施術所を訪れることも多く、希死念慮・幻覚妄想・著しい体重減少・日常生活が営めないなどがあれば精神科医療につなぐことを優先する。

✗ 1. 誤り
不安神経症
中核となるのは不安・恐怖と、動悸や息苦しさなどの自律神経症状であり、思考の流れが遅くなる思考制止は特徴ではない。むしろ、さまざまな事柄への過剰な心配が続く(全般不安症)、突然の強い不安発作が起こる(パニック症)といった形をとる。なお神経症は精神病の一種ではなく、形態の変化を伴わない機能的疾患として扱われる。また「不安神経症」は出題当時の呼称で、現在はパニック症・全般不安症などの不安症(不安障害)に整理されている。
✓ 2. 正しい
うつ病
抑うつ気分・興味や喜びの喪失を中核に、意欲低下・思考制止・易疲労感・食欲低下・睡眠障害を伴うのがうつ病の症候像である。思考制止はその抑うつ状態に伴う精神症状のひとつであり、本問の答えとなる。
✗ 3. 誤り
心身症
身体疾患のうち、発症や経過に心理社会的な因子が深く関わり、器質的または機能的な障害が認められる病態を指す(例:気管支喘息、消化性潰瘍、過敏性腸症候群、緊張型頭痛、本態性高血圧)。独立した病名ではなく病態を表す呼び方で、神経症やうつ病に伴う身体症状は含めない。前面に出るのは身体の病気そのものであって、思考制止のような思考の障害ではない。
✗ 4. 誤り
統合失調症(精神分裂病)
みられるのは幻覚・妄想や、話の筋道がつながらない連合弛緩、考えが急に途切れる思考途絶といった思考の障害である。思考途絶は「急に止まる」もので、抑うつでみられる「全体に遅く重くなる」思考制止とは区別する。なお選択肢の「精神分裂病」は出題当時の呼称で、現在は統合失調症という。
ポイント
  • 思考制止=思考の流れが遅く重くなる症状で、抑うつ状態に伴う代表的な精神症状のひとつ。
  • 抑うつ状態の中核は抑うつ気分と興味・喜びの喪失で、意欲低下・思考制止・易疲労感・食欲低下・睡眠障害を伴う。
  • 統合失調症の思考の障害は思考途絶・連合弛緩・妄想であり、思考制止とは別物として整理する。
  • 神経症は器質的変化を伴わない心因性の病態で、不安などの精神症状が前面に出る。心身症は心理社会的因子が関わる身体疾患で、器質的・機能的な障害を伴い、身体症状が前面に出る。
  • 希死念慮・幻覚妄想・著しい体重減少・生活が営めないなどがあれば、精神科医療を優先する。
  • 重要用語: 思考制止, 抑うつ状態, 思考途絶 を正確に理解しておくこと。
比較表
疾患・状態思考面の特徴前面に出る症状
うつ病(抑うつ状態)思考制止(遅く重くなる)抑うつ気分、興味・喜びの喪失、意欲低下、食欲低下、睡眠障害
不安神経症過剰な心配が続く(思考の速度は保たれる)不安・恐怖、動悸・息苦しさなどの自律神経症状
心身症思考の障害は主体でない心理社会的因子が関わる身体疾患(気管支喘息・消化性潰瘍・過敏性腸症候群など)。器質的・機能的障害を伴う
統合失調症思考途絶・連合弛緩幻覚・妄想、まとまりのなさ
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